資産寿命の延伸に関する40~50代の意識・行動調査
高齢期に向けた資産形成を実施していない人は約4割に
~生活に影響を与えるテーマで「環境と生活」「政治・経済」などに関心を寄せる人ほど実施率が高い傾向~

株式会社NTTデータ経営研究所

株式会社NTT データ経営研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:柳 圭一郎)は、NTTコムオンライン・マーケティング・ソリューション株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:塚本 良江)が提供する「NTTコム リサーチ」登録モニターを対象に、「資産寿命の延伸に関する40~50代の意識・行動調査」を実施しました。

今後人生100年時代を迎える日本において、生命寿命・健康寿命とともに資産寿命を延伸することが不可欠であるとして「金融ジェロントロジー」が注目されています。

本調査は、40~50代の男女における資産寿命の延伸に関する意識・行動について調査しました。40~50代は、これから迎える自分自身の高齢期を支えることに加え、親世代や子ども世代のケアを担う役割もあることから、長期的視点で資産寿命について考える・対策することが重要な時期であると考えられます。

調査の結果、長期的な資産形成に限定せず日常の収支管理やマネープランの検討を含めても、資産寿命延伸に関する取り組みを行っていない人は全体の約4割にのぼることが明らかになりました。一方で感染症や経済状況・環境問題など、生活に影響を与え得るテーマに対して日常的な興味・関心が強い人の方が、お金の管理や資産形成を行っている傾向がみられ、不確実性に対する感度と資産寿命延伸の行動の間には関係があることが分かりました。

【調査の背景】

「金融ジェロントロジー」が注目されている背景として、人生100年時代の生活の質向上に向け、長い高齢期を支えるお金に関する課題を自らの努力で解決することが求められています。資産寿命を延伸する行動は、将来起こり得る生活の変化やリスクに対策する意識・行動と直結していると考えられます。例えば、社会保障制度の見直し、景気動向、人口動態変化、テクノロジー進展、新型コロナウイルス感染拡大など、様々な変化の中で将来の予測が困難な社会において、各個人は「長期的目線で将来に備える」ことが求められています。本調査はこのような背景を踏まえ、これから高齢期を迎える40~50代における資産寿命延伸のための備えについて実態を把握すべく、特に「生活に影響を与えるテーマへの関心」と「資産寿命の延伸に関する意識・行動」にフォーカスを当てて調査を行いました(図表1)。

図表1.調査の全体像
図表1.調査の全体像

「老後2000万円問題」が話題になるなど、老後に向けて資産額を増やすことに注目が集まっていますが、資産寿命の延伸においては、老後を含めた人生のライフプランを考えることや、認知症や他の病気の影響により自身で資産管理が出来なくなるケースに備えることも重要です。そこで、本調査では「資産寿命の延伸」に関する行動として「ライフプランの検討」「高齢期に向けた資産形成」「資産管理能力低下への対策」に着目しました。

※:金融ジェロントロジーとは、「金融」と、老齢期や老齢化に伴う課題を学際的に研究する「老年学(ジェロントロジー)」を組み合わせた言葉。国内で近年、老年学の観点を金融の実務に取り入れて超高齢社会の社会課題を解決しようとする取り組みが進んでいる。

【調査結果のハイライト】

生活に影響を与えるテーマへの関心

  • 「昨年時点で、日常的に関心・興味を持っていたテーマ」の回答数合計が2,750であったのに対し「現在、日常的に関心・興味を持っていたテーマ」の回答数合計は3,929であった。昨年と比べ、生活に影響を与え得る様々なテーマへの関心・興味が高まっていることが伺える。特に「病気・感染症」への関心の高まり(回答実数とポイント数の伸び)が大きいことから新型コロナウイルスの影響の大きさが伺える(図表2)。
  • 「現在、日常的に関心・興味を持っているテーマ」と「自身の生活に直接的な影響があると思うテーマ」の双方とも「病気・感染症」が最も多く、次に「経済状況や景気動向」「気候変動・地球温暖化・自然災害」と続いた。
図表2.関心・興味のあるテーマと、生活に直接的な影響があると思うテーマ(複数回答)
図表2.関心・興味のあるテーマと、生活に直接的な影響があると思うテーマ(複数回答)
  • テーマを5つのカテゴリ(政治、経済、社会、技術、環境と生活)に分類した場合には「環境と生活」への関心が最も高く、次に「経済」「政治」と続いた(図表3)。
図表3.テーマを分類した場合(複数回答、%)
図表3.テーマを分類した場合(複数回答、%)

ライフプランの検討

  • ライフプランを具体的に考えたことがあると回答した人は全体の約35%に留まった。ここで「ライフプランを具体的に考えたことがある」というのは「何歳までに何をする」プランを考えたことがある(例「XX歳までに仕事を退職する」「XX歳までに住宅をリフォームする」など)ことを示す(図表4)。
  • なお「生活に直接的な影響があると思うテーマ」としてより多くのテーマを選択した人の方が、ライフプランを具体的に考えたことのある割合が高かった。生活に変化を与え得るテーマの認識と、自身の将来に向けてライフプランを検討する行動には関係があると考えられる。
図表4.ライフプランを考えたことがあるか(単一回答、%)
図表4.ライフプランを考えたことがあるか(単一回答、%)

高齢期に向けた資産形成

  • 家計管理、資産運用、資産承継やその準備など、幅広い取り組みを対象に、資産寿命の延伸に関する取り組み状況を調査した。「現在実施していること」「今後実施したいこと」のいずれも、4割弱の回答者は「該当なし」を選択し、家計管理や資産運用に対する関心の低い傾向がみられた(図表5)。
  • 一方、家計管理や資産運用などを実施している人と今後実施したい人が選択した対象の1位はいずれも、家計管理に該当する「日常の収支管理」であった。資産運用を目的とした取り組み対象の中では、比較的リスク性の低い「定期預金、個人年金などの積立」が上位であった。
  • 新型コロナウイルスをきっかけに家計管理や資産運用などを開始したと回答した人は、15%弱と少なかった。
図表5.現在実施していることと、今後継続/実施したいこと (複数回答、%)
図表5.現在実施していることと、今後継続/実施したいこと (複数回答、%)
  • ライフプランを考える行動と、資産寿命を延伸する行動(家計管理や資産運用)は密接な関係にあると考えられる。ライフプランがあると、資産の貯蓄や運用の目的が明確化するからである。家計管理・資産運用のいずれの項目についても、ライフプランを具体的に考えたことのある人の方が、実施している割合が高かった。
  • 加えて、「生活に直接的な影響があると思うテーマ」の回答数が多い人ほど、家計管理や資産運用などの取り組みを実施している割合が高かった。将来の生活について予測を困難にさせる様なテーマを認識している人ほど、家計管理や資産運用を行っている傾向があると考えられる。

資産管理能力低下への対策

  • 資産寿命を延伸するためには、資産形成することに加えて、自身での資産管理が困難になる場合に備えることが不可欠である。この備えに関する意識・行動について実態を調査した。「認知症や他の病気にかかるなどして、自身でお金の管理や資産形成をすることが難しくなった場合に、誰にサポートを受けたいかを考えたことがあるか」について考えたことがある人は全体の2割強に留まった(図表6)。
図表6.資産管理能力が低下する場合に誰にサポートを受けたいかを考えたことがあるか (単一回答、%)
図表6.資産管理能力が低下する場合に誰にサポートを受けたいかを考えたことがあるか (単一回答、%)
  • サポートを受けたい相手についても質問した。具体的には、「あなたの日常のお金の管理をするためのサポート」と「あなたの望む資産形成・資産運用をするためのサポート」について、それぞれサポートを受けたい相手を複数回答とした。双方とも身近な家族、特に「配偶者」と「実の子ども」が圧倒的な上位であった。
  • 自身の資産管理能力が低下した場合のことについて考える行動は、将来起こり得るリスクについて考える行動であり、家計管理や資産運用に取り組む行動と密接な関係があると考えられる。資産管理能力が低下した場合に誰にサポートを受けたいか考えたことがあると回答した人は、考えたことがないと回答した人よりも、家計管理や資産運用を実施している割合が高かった。

【今後について】

社会保障に関する国の財政状況や、本調査で明らかになったように資産形成などを行っている人がまだ限定的である状況を踏まえると、金融サービス提供事業者に期待される役割は大きいものと考えられます。NTTデータ経営研究所グローバル金融ビジネスユニットでは、今後も金融サービス提供事業者などが抱える課題の解決に資するコンサルティングを提供します。

調査概要および調査結果はこちらから

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【本件に関するお問い合わせ先】

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コーポレート統括本部 業務基盤部
広報担当
Tel:03-5213-4016
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