健康無関心層の行動変容に対する効果的な介入手法の解明に向けた調査
~無関心層への介入手法は、「自然に、寄り添い、簡単に」が効果的~

株式会社NTTデータ経営研究所
株式会社センス・イット・スマート

株式会社NTTデータ経営研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:柳 圭一郎、以下:NTTデータ経営研究所)、および株式会社センス・イット・スマート(本社:東京都千代田区、代表取締役:谷本 広志 以下:センス・イット・スマート)は、この度、NTTデータ経営研究所が保有する人間情報データベースのモニター6,000人を対象に、「健康無関心層の行動変容に対する効果的な介入手法の解明」を目的に、大規模調査を実施しました。

本調査では、自身の健康に無関心な健康無関心層から継続的に健康行動を行っている継続層まで、5段階の健康行動ステージのそれぞれで、該当者の持つ認知バイアスや性格特性、また次のステージに移行するために効果的な介入手法について把握し、分析を行っています。

1.本実証の背景

かつてない超高齢社会が到来した我が国は、2025年には75歳以上の後期高齢者が2,100万人を超えると見込まれています。後期高齢者は高齢者と比較して、医療費が9倍、介護費用が5倍かかるため、社会保障費の増加が懸念されています。このような社会情勢を見据えて、国や自治体、健保組合等では予防による健康寿命の延伸を目指した取り組みを実施していますが、効果は限定的であり、明確な医療費の適正化につながっているケースは多くはありません。

効果が限定的となる要因は、国民の7割を占める健康無関心層の存在にあるとみられています。この健康無関心層の行動変容に向けた取り組みとして、保険者を中心に、インセンティブ事業(健康ポイント)、ゲーミフィケーションの導入等様々な取り組みが行われていますが、前記の通り成功事例はほぼ存在しません。

NTTデータ経営研究所および株式会社センス・イット・スマートは、このような状況を憂慮し、全国の保険者等の取り組みを、より効果的なものとし、我が国の医療費適正化に寄与するため、健康無関心層の行動変容に対する効果的な介入手法(健康的な生活習慣に変容させるための介入手法)の解明に向けた大規模調査を実施しました。

2.主な調査結果と考察

1.健康無関心層の特徴

健康無関心層に強く表れる特徴(認知バイアス)として、リスク回避及び損失忌避(損をしたくない、持っているものを失いたくないと思う傾向)の傾向が、他の層※1より、リスク回避が最大5%程度、損失忌避が最大10%程度高いこと、及び行動的適合性(周囲の意見や雰囲気などに流されやすい傾向)が他の層より最大14%程度低いこと、が挙げられる。他方、時間割引については、他の層と大きな違いは見られなかった。

このことから、健康行動に対する取り組みは一般的には良い行動であるが、無関心層にとっては時間を取られる等リスクを伴う活動であり、損失が発生すると考えている可能性がある。また、行動的適合性が低いことから、一般的な日本人に対して効果的とされる周りがやっているからあなたもやる(やろう)、という介入手法の効果は限定的になると考えられる。

※1:健康行動ステージは、健康無関心層→関心層(関心はあるが動いていない)→準備層(準備をしたが、まだ動いていない)→実行層(動き出したばかり)→継続層(6か月以上継続)となる。ここで他の層とは健康無関心層以外を指す。以下同じ。

2.健康無関心層が、行動ステージを上げていくための手法等

行動ステージごとに、次のステージに上がるためのきっかけとして、一般的に効果的と考えられる「情報」(運動の仕方が分かる、目標の達成状況が見える、等)については、ステージが上がるために効果があることが把握されたものの、無関心層に対する効果は一部認められるが、限定的であった。また、周りの人の協力、或いは一緒に運動する人の存在、は無関心層を含む全てのステージで等しく一定の効果がみられた。

健康行動ステージ別の次のステージに移るきっかけ
健康行動ステージ別の次のステージに移るきっかけ

(n=6,297)

次に、健康無関心層の行動変容に影響を与える介入として、上位には、運動する「きっかけ」や「時間」等からイベント等によるきっかけづくり、また一緒に運動する人の存在が効果を持つ、との結果となった。なお、上記健康無関心層の特徴で行動的適合性が低い結果との関係については、前者が世間一般に対する適合性が低い傾向を指すのに対して、ここでは家族、友人、同僚等の顔の見える関係性を持つものの存在を指しているため、両者に矛盾はないものと考えられる。

更に、行動ステージ別に、利用促進に効果のある機能については、実行層や継続層ではモチベーションの維持や自分の情報の見える化、ゲーミフィケーション等、取り組みの洗練が挙げられているのに対して、無関心層は記録の簡易化や利用に際しての障壁の除去等の効率化が効果的と考えられる。

行動ステージ別でアプリに求める効果
行動ステージ別でアプリに求める効果

(n=1,837)

3.考察

これまで健康行動を促す手法として効果的とされるゲーミフィケーションやインセンティブ、或いは取り組み状況の見える化については、既に健康的な行動をしている層に対しては効果があることが分かった一方で、無関心層に対する効果は限定的であることが判明した。

無関心層に対しては、健康の意義を訴求するアプローチやみんながやっている同調アプローチは効果が薄く、自然に参加できるきっかけ、寄り添ってくれる支援者、簡単にできるアプリケーション等の観点でソリューションを構築することが効果的な手法となる。また、上記の通り行動ステージにより対象者のペルソナが大きく異なることを踏まえた行動デザインが必須である。

本調査結果を、例えば健保組合の施策に導入する場合、インセンティブ制度導入に際して、頑張った分をポイントとするのではなく、先にポイントを付与して頑張らないと減額方式にすることや同僚とチームを組んで一緒に取り組むイベントなどが想定される。また自治体等国保では、家族や夫婦で取り組む(一緒にやるミッションを準備する等)施策などが効果的と推察される。

3.本調査成果の活用

なお、この調査結果を活用し、センス・イット・スマート社は、従業員同士が一緒に取り組むことで無関心層の行動変容を実現させる健康増進サービス(運動サプリ)を構築し、企業・保険者向けに提供を開始します。

本アプリの特徴は、行動変容を実現するために、まずインセンティブ原資を供出(自身、又は会社)し、そのインセンティブを、仲間同士で分け合う、或いは競い合うことで、相互に健康活動を促し合う仕組みとなっている点、目標達成の宣言(コミットメント)や損失回避、周囲の人からの後押しなど、ナッジ的な要素を導入している点、および健康無関心層でも気軽に始められるようなUI/UX設計などにあります。

運動サプリの導入により、従業員の自発的な取り組みの促進、健康増進効果を期待できるとともに、従業員のインセンティブ原資の循環により、企業側は新たなインセンティブ原資の負担が軽減でき、持続可能な健康ポイント施策を実現します。

※2:「運動サプリ」は、株式会社センス・イット・スマートの登録商標です。

調査概要および調査結果はこちらから

4.本件に関する問い合わせ先

【本件に関するお問い合わせ先】

■報道関係のお問い合わせ先

株式会社NTTデータ経営研究所
コーポレート統括本部 業務基盤部
広報担当
Tel:03-5213-4016
E-mail :

■調査結果等のお問い合わせ先

株式会社NTTデータ経営研究所
社会基盤事業本部
ライフ・バリュー・クリエイションユニット  行動デザインチーム担当
シニアマネージャー 北野 浩之
コンサルタント 佐々木 成聖
E-mail :

製品・サービスに関するお問い合わせ先

株式会社センス・イット・スマート
エビデンス事業部
マネージャー 井手 翔吾
E-mail :

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