コロナ禍に立ち向かうためのデジタル社会提言
「オンライン・ファースト社会」という新しい日常
~ オンラインとリアルが融合する社会へ ~

株式会社NTTデータ経営研究所

株式会社NTTデータ経営研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:柳 圭一郎:以下、当社) は、今般の新型コロナウイルス感染症の拡大という状況を踏まえ、この新しい社会課題に向けた議論を行うことを目的として「ウィズコロナ・プロジェクト」を立ち上げています。このたび、本プロジェクトの成果の一つとして、コロナ禍に立ち向かうための新しい社会像に関する提言をとりまとめましたので、お知らせいたします。

 新型コロナウイルス感染症の拡大という状況を踏まえ、当社では、この新しい社会課題に向けた議論を行っていくために2020年3月から「ウィズコロナ・プロジェクト」を立ち上げています。プロジェクトでは、「テレワーク」「デジタル技術活用」「BCP(事業継続計画)」「医療体制」「行動変容」「産業構造変革」といったテーマごとに、当該領域を専門とするコンサルタントを組織化し、これまで培ってきたナレッジを活用しつつ、調査や議論を行っています。

 今般、本プロジェクトの成果のひとつとして、コロナ禍に立ち向かうための新しいデジタル社会像に関する提言として、『「オンライン・ファースト社会」という新しい日常』を取りまとめました。今後は、当社内に設置している、外部有識者をメンバーとする「情報未来研究会」等の場において、今回の提言をより深め、実現に向けた具体的な方向性について議論を行っていく予定です。また、各テーマに関する検討結果もまとまり次第随時公開していきます。

 当社は、『IT-BRAINS for Info-Future(新しい社会の姿を構想し、ともに「情報未来」を築く)』というコンセプトを掲げるコンサルティングファームとして、これからも社会に対して有益な情報を発信していきます。

本件に関するお問い合わせ先

株式会社NTTデータ経営研究所
コーポレート統括本部 広報担当
Tel:03-5213-4016(代)
E-mail:

提言
「オンライン・ファースト社会」という新しい⽇常
~ オンラインとリアルが融合する社会へ ~

株式会社NTTデータ経営研究所

 「オンライン・ファースト社会」。それは、⼈間のあらゆる社会的活動において、オンラインがあたりまえの存在として溶け込んでいる社会である。もちろん、リアルな⼈間の活動は重要であり、その価値はこれからも変わらない。しかし、全ての活動をリアルに行うことは、いまだ終わりの⾒えないウィズコロナの時代においては現実的ではない。だからこそ、オンラインをリアルな⼈間の活動と全く同じ価値を持つ、「新しいリアル」へと進化させていかねばならない。

 「⽣⾝の⼈間の活動としてのリアル」と「オンラインという新しいリアル」、この二つの特性を⼗分に理解した上で、目的に応じて自在に使いこなすことのできる社会=「オンライン・ファースト社会」の早期実現を、NTTデータ経営研究所はここに提⾔する。

 これまでのグローバル化というビジネスモデルは、広範囲かつ⾼速、⾼頻度での⼈間の移動を⽣み出しつづけ、都市へのリソースの⼀極集中は、⾼密度で効率的な社会を実現させた。これらのことがそのまま新型コロナウイルス感染症の急激な拡⼤を後押ししてしまったことは事実だろう。そして、感染対策としての社会活動の⾃粛が、市場の縮⼩や景気の後退に直結してしまうことは言うまでもない。

 しかし、私たちに課せられた使命は、新型コロナウイルス感染症という厄災を耐え忍び、それと折り合いをつけるだけの社会をつくることではない。BBB(Build Back Better)の考え方のもと、現代のさまざまな社会課題の解決すら同時にかなえられる、よりよい社会を構築することである。

 歴史を振り返れば、14世紀のヨーロッパにおいて、ペスト⼤流⾏の後に、ルネサンスという大きな社会変⾰が生まれた。いまこそ、画期的な社会の創造へ踏み出すべき時なのである。

 すでに、⾮対⾯、⾮接触で社会活動を継続するために、多くの場面でデジタル技術が導⼊され始めている。この流れをさらに加速させ、「会議をする」といえばオンラインミーティングを、「治療を受ける」といえばオンライン診療を、「⾏政⼿続を行う」といえばオンライン申請を、まず最初にイメージできる社会の実現を進めたい。

 「オンライン・ファースト社会」において、企業におけるビジネスモデルは、デジタル技術の⼒で急速に変⾰されていくだろう。B2B、B2Cを問わずあらゆる業種における顧客接点がオンラインを考慮して再設計され、⼯場等においてもロボティクスやテレイグジスタンス注1技術が活⽤されるようになる。対⾯が前提であるエンターテイメント等の産業においても、xR技術の活⽤により新たなサービスが創られていくに違いない。

 さらには、育児や介護で在宅を余儀なくされている⼈、パートナーの転勤によって遠⽅で暮らすことになった⼈、そして⾝体的なハンディキャップのために外出が困難な⼈などが、仕事を継続し、教育を受け、診療を受けることも可能となるだろう。いつもの日常をどんな状況でも継続できる、あらゆる人々にとってQOL(Quality of Life)の向上につながる社会、それこそが「オンライン・ファースト社会」のありたき姿なのである。

 災害はその時々の社会のウイークポイントを浮き彫りにする。今般の経験を通して、現代社会はデジタル技術の⼒を⼗分に活かしきれない状況にあることも、改めてわかってきた。

 デジタル技術を活⽤するための環境が、そもそも社会の隅々まで行き渡っていないこと。社会制度や企業・行政機関の業務プロセスの多くが、紙や対⾯を前提としていること。SNSによるデマやフェイクニュースの拡散、⽣活必需品のネット上での⾼額転売等、社会としてのデジタル・リテラシーがまだまだ⼗分ではないこと。国全体の感染状況等をモニタリングすることや、国から生活者や企業へのダイレクトアクセスに、かなりの時間と労⼒がかかってしまうこと。共有することが社会的に有効な情報であっても、プライバシー確保との板挟みになってしまうことなど。

 単に技術の実装を進めるだけでなく、制度・ルール、社会慣習も含めた、デジタル技術の力を妨げる諸課題に対して、抜本的な変革を行うことが「オンライン・ファースト社会」の実現に向けて必要不可⽋だと考える。

 新しい社会構築に向けては、これらの課題が生まれた背景を理解した上で、今までとは異なるアプローチを取り入れていくべきだろう。ひとつは、個々の組織にとっての個別最適を追求するだけではなく、社会全体最適を意識すること。もうひとつは、供給側からの⾒⽅ではなく、ひとりひとりの生活者側の視点を大切にしていくことである。

 このアプローチを通じ、⾃らの想いとともに、今はまだ⾒えない社会をデザインしていく⼒と、それを確実に創り上げる⼒の双⽅を⾝につけた⼈材を「アーキテクト」と呼びたい。今、社会のあらゆるところでシステムの企画や開発、デジタル技術の活⽤に携わっている方々、ぜひ「アーキテクト」として、ともに力を合わせていこう。

 ペスト禍を乗り越えて、偉⼤な功績を残したレオナルド・ダ・ヴィンチのように、これからの新しい社会の実現を担うトップ・アーキテクトとして、「オンライン・ファースト社会」の礎を、私たちの力で築こうではないか。

注1:テレイグジスタンス(Telexistence: 遠隔臨場感、遠隔存在感)とは、バーチャルリアリティーの一分野であり、遠隔地にある物や人があたかも近くにあるかのように感じながら、操作などをリアルタイムに行う環境を構築する技術およびその体系のこと。

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