【主な調査結果と考察】
(1)新型コロナウイルス対策とその影響 ~8割以上の企業で衛生対策を行っている一方で、完全在宅勤務を実施している企業は約1割、時差出勤の許可や奨励は3分の1程度にとどまっている~
新型コロナウイルス対策として、8割以上の企業が衛生対策、6割以上が体調不良時の対応方法の周知をしている。一方で、完全在宅勤務を実施している企業は約1割であり、時差出勤の許可や奨励を行っている企業は3分の1程度にとどまっており、政府の要請が浸透しているとは言えない結果となっている。
業務への影響をみると、約半数の企業で会議・業務上のイベントや国内外の出張の中止・延期、約4割の企業で歓送迎会等の中止・延期を行っている。2020年4月の時点で約3割の企業が「売上の減少」があると回答している一方で、特に業務への影響がないと回答している企業は約15%である。
(2)テレワーク/リモートワークの取り組み状況とその課題 ~2020年4月時点で、週3-4回以上のテレワーク/リモートワークを利用している人は全国平均で20.0%、東京都に居住している人では36.5%~
2020年4月の時点で全体の半数以上の企業が働き方改革に取り組んでいる。一方で、テレワーク/リモートワークに取り組んでいる企業は約4割である。2020年2月以降は、毎月6.5%以上取り組み企業が増加し、2020年1月までと比べて、2020年4月の時点で2倍以上の企業がテレワーク/リモートワークに取り組んでいる結果となった。政府が2020年4月7日に緊急事態宣言を発令した7都府県をみると、東京都に居住する人が勤務する企業は約6割がテレワーク/リモートワークに取り組み、神奈川県では約半数、埼玉県、千葉県や大阪府は4割超であり、全体平均を上回っている。
2020年1月までの利用頻度と2020年4月の利用頻度を比べると、約12倍の従業員が「ほぼ毎日」テレワーク/リモートワークを利用している結果となり、大きく利用頻度は増加しているが、2020年4月時点で、週3-4回以上のテレワーク/リモートワークを利用している人は全体(N=1,158)の20.0%、東京都に居住している人の36.5%にとどまっており、「人と人との接触を8割減らす」政府の要請にはほど遠い現状がある。
テレワーク/リモートワークに取り組んでいる企業の従業員がテレワーク/リモートワークを実施する場所としては、自宅が多いものの、2020年4月の時点でも専用型・共用型のサテライトオフィスやカフェを利用する人が一定数存在し、1割超が全く自宅でテレワーク/リモートワークを行っていない。全く自宅でテレワーク/リモートワークを行っていない理由として、約3割の人が自宅で仕事をする習慣がないこと、4分の1の人が自宅に仕事をするスペースがないことを挙げている。
テレワーク/リモートワークに取り組んでいる企業の4割超の人が「自分で管理することの難しさ」をその課題として挙げている。次いで、上司・部下・同僚とのコミュニケーションなどの「従来とは違う仕事のやり方への戸惑い」が課題となっている。
「特に課題や難しいことはない」と回答した人は、わずか6.6%である。
「通勤時間や移動時間を削減できること」などを理由に、コロナ終息後もテレワーク/リモートワークを利用している人の52.8%が継続したいと考えている。一方で、「できる仕事に限界があること」や「コミュニケーションのとりにくさ」などを理由に、34.2%の人が継続したくないと考えている。
今後、日常的にテレワーク/リモートワークを利用することが進み、課題の内容も変わってくることが想定されるので、定点観測をしながらの利用環境の整備をしていく必要がある。
テレワーク/リモートワークに取り組んでいない企業の従業員のうち、約3分の1の人が「利用してみたい」と回答している。一方で、テレワーク/リモートワークに取り組んでいない企業の従業員の約3分の2の人が、「テレワーク/リモートワークで実施できる業務がない」と考えており、経営トップ層の導入への理解がないと考える人は1割超である。
(3)ライフスタイルの変化と現在の不安・心配・悩み ~約4分の3の人が「いつまで続くかわかならい漫然とした不安」を感じている~
2020年2月以降のライフスタイルの変化をみると、4割以上の人が「職場での飲み会」、3割以上の人が「友人や恋人と一緒に過ごす時間」や「家族と一緒に過ごす時間」に変化があったと回答している。「職場での飲み会」が減っている人は、コロナ終息後も減ったままのライフスタイルが好ましいと2割超の人が思っている。「家族と一緒に過ごす時間」は、コロナ終息後も増えたままのライフスタイルが好ましいと思う人は約16%である。
現在の不安・心配・悩みについて、4分の3以上の人が「この状況がいつまで続くかわからない漫然とした不安」を感じており、半数以上の人が「感染への恐怖」を感じている。「特に不安・心配・悩みはない」と回答した人はわずか7.4%である。
(4)まとめ
本調査は、従業員規模10名以上、経営者・役員を含む雇用者(正社員)、20歳以上のホワイトカラー職種を対象としており、他の職種と比べてテレワーク/リモートワークに取り組みやすいと考えられるが、4月の時点で週3-4回以上実施している人は全国平均で20.0%、東京都に居住する人でも36.5%にとどまっている。それでも、2020年2月以降は、全国平均で毎月6.5%以上取り組み企業が増加し、東京都に居住する人が勤務する企業では4月からの開始は1割を超えている。現在取り組んでいない企業の3割以上の従業員も「利用してみたい」と回答しているため、今後一層の拡大が見込める。取り組んでいる企業も取り組んでいない企業も「テレワーク/リモートワークで実施できる業務に限界がある」ことを課題に挙げているが、早期コロナ終息に向けた「人と人との接触を8割削減」するためには、テレワーク/リモートワークで業務が遂行できるように工夫することが、企業と従業員一人ひとりにより一層求められている。また、既存のテレワーク/リモートワークの取り組み企業の利用頻度を高め、必ず自宅で仕事をするように企業側からの周知やサポートも必要かもしれない。出勤が必要な場合は、時差通勤の許可や奨励も「人と人との接触を8割削減」への企業側でできる有効な措置と言えるのではないか。
テレワーク/リモートワークで実施できない業務は、「中止・延期」などの経営者や職場リーダの英断と、サービスの提供を受ける発注者側の理解が最重要な観点と思われる。思い切った「中止・延期」は、今後の業務効率化につながる可能性もあり、決してマイナスの側面ばかりではないと筆者は考える。
2月以降のライフスタイルの変化をみても、コロナによる変化が悪いことばかりではない。「職場の飲み会」や「家族と過ごす時間」などのように、これまでよりも好ましい時間を過ごしている人もいる。一方で、「緊急事態宣言」発令時の調査において、4分の3以上の人が漫然とした不安を抱えている現状から、長期的な視点では、感染リスクや経済損失に加え、今後一層、メンタルケアの重要性も本調査では示唆している。