「第2回 企業における不動産テックの取り組み動向調査」
不動産テック(PropTech)の動向に、7割もの不動産関連企業が危機感
~不動産テックを認知している人の所属企業では、43%が取り組みを推進~

株式会社NTTデータ経営研究所

株式会社NTTデータ経営研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:川島祐治、以下 当社) は、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:塚本良江)が提供する「NTTコムリサーチ」登録モニターを対象に、「第2回 企業における不動産テックの取り組み動向調査」(以下、本調査) を実施しました。

昨今、破壊的イノベーションやディスラプターの名のもとで、様々な業界・企業がデジタルビジネスやデジタルトランスフォーメーションに取り組んでいます。FinTech(金融)をはじめとするテック系ビジネスの動向に目を向けると、金融の隣接領域とも言える不動産領域において不動産テック(PropTechもしくはReal Estate Techとも呼ばれる)の注目度が急激に増しています。

こうした不動産テックの盛り上がりを背景に、「不動産テックに関する取り組みをしているか?」、「不動産テックで取り入れている先進テクノロジーは何なのか?」、「取り組んでいる不動産テックの成果は出ているのか?」、「取り組んでいる不動産テックの成功要因は何なのか?」、「今後、有望だと考える不動産テックのサービスとは?」などの観点で各社の取り組み実態について調査しました。

調査結果として、不動産テックの認知度自体は3.9%とFinTechの22.9%に対してまだまだ低いものの、不動産テックを知っている人の所属企業のうち43%は不動産テックに取り組んでいることが把握できました。また、こうした不動産テックのような新しい動向に対して危機感を感じる不動産関連の企業は約7割に達しました。

実際に取り組まれている不動産テックで主に導入されているテクノロジーは、「ビッグデータ(DMP:Data Management Platform含む)」、「AI(機械学習、ディープラーニング含む)」、「Web化・オンライン化」、「IoT」が上位で、現在および今後の不動産テックのサービスの中心は“データの収集・分析・共有”に関するものと判明しました。

不動産テックの成果については、成果が得られたとする回答が約半数である一方、十分な成果は得られていないとする回答は4割近くに上りました。

不動産テックで成果をあげるためには、有望なターゲットを見極めたうえで顧客ニーズを明確にした取り組み、および有望企業への出資や買収が重要であると言えます。さらに、より期待以上の成果を上げるためには、出資や買収だけではなく、その出資先企業との積極的な関係構築が重要であることが明らかとなりました。

当社では今後も、アンケート等の分析結果や過去のコンサルティングの知見・ノウハウを活かし、各社の不動産テックの取り組みを支援してまいります。

本調査のサマリー

不動産テックの取り組み実態サマリーイメージ

本調査により、企業における不動産テックへの取り組み実態を明らかにすることができた。不動産テック(PropTechもしくはReTech)の認知度自体はまだまだ低いものの、不動産テックを知っている人の所属企業のうち4割以上が不動産テックに取り組んでいることが把握できた(正確には43.0%)。
不動産テックに取り組む企業を見ると、テクノロジードリブンの新しい取り組みは、ベンチャー企業や身軽な中小企業のほうが積極的に取り組むイメージもあると思われるが、実際は企業規模が大きい企業ほど不動産テックに取り組んでいた。不動産テックに取り組む企業の状況について、2018年度の結果と今回2019年度の結果を比較すると、2019年度に最も多かった「企画・立案の検討中 (31.3%)」は、2018年度の26.3%と比べて5.0ポイント増加した。一方、「調査・研究の段階」は2018年度の17.2%に対して、2019年度は11.3%と5.9ポイント減少した。これは、「調査・研究の段階」から「企画・立案の検討中」へとシフトしたものと推察される。
実際に取り組まれている不動産テックの概況としては、サービスローンチからの経過期間として最も多いのが「2年~3年未満 (40.0%)」であった。サービスローンチまでに費やした資金として最も多いのが「5億円以上 (20.0%)」、続いて「5000万円~1億円未満 (13.3%)」、「1億円~2億円未満 (13.3%)」、「2億円~3億円未満 (13.3%)」であった。年間売上の最高額としてもっとも多いのが「3億円~4億円未満 (20.0%)」、「4億円~5億円未満 (20.0%)」、「10億円以上 (20.0%)」と60%以上が3億円以上であった。
つまり、登場している不動産テックのサービス像は、サービスローンチから2~3年が経過し、“億”単位を投資した結果、3億円以上の売上のサービスというイメージである。
実際に取り組まれている不動産テックの導入テクノロジーとしては、「ビッグデータ (DMP:Data Management Platform含む) (63.8%)」、「Web化・オンライン化 (51.3%)」、「AI(機械学習、ディープラーニング含む) (48.8%)」、「IoT (40.0%)」であった。
過去・現在・未来に取り組む不動産テックのサービス、および今後有望と思われる不動産テックのサービスの第1位が「不動産価格データ収集・分析:不動産の成約価格、物件情報などのデータを収集・分析・共有することで資産価値評価や売買予測等を行うサービス群」という結果から鑑みても、不動産テックのサービスの中心は“データの収集・分析・共有”に関するものであると言えよう。
また、過去・現在・未来に取り組む不動産テックのサービスとしては、「3Dモデリング・3Dマッピング:実際の空間をスキャンしたり、設計図などからPC上に3Dで再現するサービス群」が僅差で第2位であった。
実際に取り組まれている不動産テックの成果については、「期待通りの成果」「期待以上の成果」のいわゆる“成果が得られている”が51.3%であった。一方で、「一定の成果は得られているが、期待していた程ではない (31.3%)」「期待していた成果は得られていない (7.5%)」の合計として4割近くが成果は得られていない。
いわゆる“成果が得られている” とする成功要因としては、「有望なターゲットセグメントを特定したこと」、「顧客ニーズを明確化したこと」という回答が多かった。他の成功要因としては、異業種間における提携・協業・交流が挙げられる。本調査では、不動産テックの成果と、不動産テック実現に向けたアライアンスや買収などのアクションの相関についても調査を行った。結果としては、有望企業への出資や買収と成果に相関を確認できた。
具体的には、いわゆる“成果が得られている” とする割合は、「有望企業へ出資または買収し、出資先の有望企業と積極的に協業・交流した」が76.9%であった。特に、「期待以上の成果が得られている」が69.2%と、他が10%程度であることと比べて突出していた。
このように、不動産テックで成果をあげるためには、有望なターゲットを見極めたうえで顧客ニーズを明確にした取り組み、および有望企業への出資や買収が重要であると言える。さらに、より期待以上の成果を上げるためには、出資や買収だけではなく、その出資先企業との積極的な関係構築が重要であることが明らかとなった。

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主な調査結果

1. X-Techの取り組み実態

  • 認知度の高いX-Techは、「金融:FinTech (22.9%)」。

    …参照P. 11

  • X-Techの認知度調査の結果について、2016年度の結果と今回2019年度の結果の比較として、その差分が最も大きいのは、「金融:FinTech (2016年度17.9%、2019年度22.9%より、差分5.0%)」。

    …参照P. 11

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2. 不動産テックへの取り組み実態

以下は、前述のX-Techの認知度調査で不動産テックを知っている回答者に対して行った質問に対する結果

  • 不動産テックの動向への危機感の有無で最も多いのは、「不動産テックはコア事業とは関係ないため、危機感は感じない (34.4%)」。「不動産テックはコア事業とは関係ないため、危機感は感じない」を除いた不動産テックがコア事業と関係のある回答者だけに絞って集計すると、「危機感を感じる (69.7%)」、「危機感を感じない (30.3%)」。

    …参照P. 13

  • 不動産テックの動向への危機感の有無について、2018年度の結果と今回2019年度の結果を比較すると、「不動産テックはコア事業とは関係ないため、危機感は感じない」を除いた不動産テックがコア事業と関係のある回答者だけに絞って集計すると、「危機感を感じる」が2018年度の61.1%から69.7%へ8.6ポイント増加、「危機感を感じない」が2018年度の38.9%から30.3%へ8.6ポイント減少した。

    …参照P. 13

  • 不動産テックに関する取り組み有無で最も多いのは、「取り組みをしたことは無い (44.6%)」。一方、「過去に取り組みをしていた (2.7%)」、「現在、取り組んでいる (26.3%)」、「まだ取り組んでいないが、今後そういう取り組みをすることが決まっている (14.0%)」を足し合わせると43.0%と過半数に近い企業で不動産テックの取り組みに前向きという結果になっている。

    …参照P. 15

  • 不動産テックに関する取り組み有無について、2018年度の結果と今回2019年度の結果を比較すると、2019年度に最も多かった「取り組みをしたことは無い (44.6%)」は、2018年度の45.1%と比べて0.5ポイント減少した。また、「過去に取り組みをしていた」、「現在、取り組んでいる」、「まだ取り組んでいないが、今後そういう取り組みをすることが決まっている」の合計は2018年度の35.7%から2019年度の43.0%へと7.3ポイント増加している。

    …参照P. 15

  • 業種別の不動産テックに関する取り組み有無で、「過去に取り組みをしていた」、「現在、取り組んでいる」、「まだ取り組んでいないが、今後そういう取り組みをすることが決まっている」を足し合わせると、製造業は同56.7%、運輸業は同50.0%、建設業は同42.9%と、不動産業の同42.2%を上回る結果になっている。

    …参照P. 17

  • 不動産テックの取り組みは、企業規模が大きくなるほど取り組みを実施している。具体的には、「過去に取り組みをしていた」、「現在、取り組んでいる」、「まだ取り組んでいないが、今後そういう取り組みをすることが決まっている」の合計は、[従業員300人未満×資本金3億円以下]の企業は26.3%、[従業員300人未満×資本金3億円以上]の企業は25.0%、[従業員300人以上×資本金3億円以下]の企業は53.6%、[従業員300人以上×資本金3億円以上]の企業は51.6%。

    …参照P. 18

  • 不動産テックに取り組む企業の状況として最も多いのは、「企画・立案の検討中 (31.3%)」。

    …参照P. 19

  • 不動産テックに取り組む企業の状況について、2018年度の結果と今回2019年度の結果を比較すると、2019年度に最も多かった「企画・立案の検討中 (31.3%)」は、2018年度の26.3%と比べて5.0ポイント増加した。一方、「調査・研究の段階」は2018年度の17.2%に対して、2019年度は11.3%と5.9ポイント減少した。これは、「調査・研究の段階」から「企画・立案の検討中」へとシフトしたものと推察される。

    …参照P. 19

  • 不動産テックのサービスローンチからの経過期間として最も多いのは、「2年~3年未満 (40.0%)」。

    …参照P. 21

  • 不動産テックのサービスローンチにあたって費やした資金として最も多いのは、「わからない・不明」を除く回答のうち最も多いのは「5億円以上 (20.0%)」。続いて「5000万円~1億円未満 (13.3%)」、「1億円~2億円未満 (13.3%)」、及び「2億円~3億円未満 (13.3%)」であった。

    …参照P. 22

  • 不動産テックのサービスにおいて最も大きかった年間売上として最も多いのは、「3億円~4億円未満 (20.0%)」、「4億円~5億円未満 (20.0%)」、「10億円以上 (20.0%)」。

    …参照P. 23

  • 不動産テックのサービスの直近の業績として最も多いのは、「計画どおり黒字 (46.7%)」。

    …参照P. 24

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3. 不動産テックの取り組み内容

以下は、前述の所属している会社における不動産テックに関する取り組み有無の質問で、過去・現在・未来に取り組みを行うと回答した者に対して行った質問の結果

  • 不動産テックに取り組む目的で最も多いのは、「収益拡大のための新規事業(直近よりも将来の中核事業育成) (43.8%)」。続いて「収益拡大のための新規事業(直近の売上高へ貢献) (40.0%)」、および「既存事業の売上強化(特に顧客の増加や維持)のため (40.0%)」と続いた。

    …参照P. 25

  • 不動産テックに取り組まない理由で最も多いのは、「不動産がコア事業でないため (63.9%)」であった。ここで「不動産がコア事業とは関係ないため」を除く回答を見ると、不動産テックに取り組まない理由で最も多いのは「会社として危機感を感じていないため (15.7%)」であった。

    …参照P. 27

  • 過去・現在・未来に取り組む可能性のある不動産テックのサービスで最も多いのは、「不動産データビジネス:不動産の成約価格、物件情報などのデータを収集・分析・共有することで資産価値評価や売買予測等を行うサービス群 (23.8%)」。続いて「3Dモデリング・3Dマッピング:実際の空間をスキャンしたり、設計図などからPC上に3Dで再現するサービス群 (21.3%)」であった。

    …参照P. 29

  • 取り組む不動産テックにおける本質的な価値で最も多いのは、「従来と比べ明らかに、”効率が良い”、”手間が減る” (51.3%)」。

    …参照P. 30

  • 取り組む不動産テックにおける導入テクノロジーで最も多いのは、「ビッグデータ (DMP:Data Management Platform含む) (63.8%)」であった。続いて「Web化・オンライン化 (51.3%)」、「AI (機械学習、ディープラーニング含む) (48.8%)」であった。

    …参照P. 32

  • 取り組む不動産テックの成果は、「期待通りの成果」「期待以上の成果」が51.3%と、約半数を占めている。一方で、「一定の成果は得られているが、期待していた程ではない (31.3%)」「期待していた成果は得られていない (7.5%)」の合計として4割近くが期待を下回っている。

    …参照P. 34

  • 取り組む不動産テックの成功要因は、「有望なターゲットセグメントを特定したこと (1位33.3%、2位9.1%、3位4.5%)」であった。続いて、「顧客ニーズを明確化したこと (1位21.2%、2位21.2%、3位1.5%)」であった。

    …参照P. 36

  • 取り組む不動産テックにおける社外の人的リソースの活用で最も多いのは、「ITベンダーのようなITの専門家の活用 ※システムやWebサービスの開発を行う前の段階 (55.0%)」。続いて「コンサルタントのようなビジネスの専門家の活用 (41.3%)」であった。

    …参照P. 38

  • 取り組む不動産テック実現に向けた提携・出資・買収で最も多いのは、「有望企業と提携し、提携先の有望企業と積極的に協業・交流した (32.5%)」であった。「有望企業へ出資または買収し、出資先の有望企業と積極的に協業・交流した (32.5%)」「有望企業へ出資または買収したが、カネだけ出して出資先の有望企業には介入しなかった (21.3%)」「有望企業と提携し、提携先の有望企業と積極的に協業・交流した (16.3%)」の合計約7割が有望企業との提携・出資・買収のアクションを起こした。

    …参照P. 40

  • 取り組む不動産テックで「有望企業へ出資または買収し、出資先の有望企業と積極的に協業・交流した」とする企業のうち「期待以上の成果が得られている」が69.2%。「期待通りの成果が得られている(7.7%)」と合わせた“成果が得られている”とする割合は76.9%。

    …参照P. 41

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4. 不動産テックのサービス別の認知度・今後の有望度

以下は、前述のX-Techの認知度調査で不動産テックを知っている回答者に対して行った質問に対する結果

  • 知っている不動産テックのサービスで最も多いのは、「不動産価格データ収集・分析:不動産の成約価格、物件情報などのデータを収集・分析・共有することで資産価値評価や売買予測等を行うサービス郡 (68.8%)」。

    …参照P. 42

  • 今後有望だと考える不動産テックのサービスで最も多いのは、「不動産価格データ収集・分析:不動産の成約価格、物件情報などのデータを収集・分析・共有することで資産価値評価や売買予測等を行うサービス郡 (1位39.8%、2位4.3%、3位5.4%)」。

    …参照P. 44

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< 本調査におけるアライアンスの定義 >

戦略的な目標を共有する企業間で協力関係を結ぶこと。アライアンスの種類は、資本提携、業務提携、技術提携、オープンイノベーションとし、それぞれの定義は下記の通りとする。

  • 資本提携=一方の企業が他方の企業の株式を保有する、または双方で株式を保有しあうことを通じて、事業上の協力関係を構築すること。M&Aも資本提携に内包している。
  • 業務提携=複数の企業が業務上の協力関係を築くこと。販売提携、生産提携も業務提携に内包している。
  • 技術提携=事業上重要な技術を供与する、もしくは相互に供与する関係を構築すること。
  • オープンイノベーション=自社の業務やノウハウ・技術の一部を外部に公開し、広く外部のアイディアや技術を活用して自社の課題を解決する取り組み。

本件に関するお問い合わせ先

■ 報道関係のお問い合わせ先

株式会社NTTデータ経営研究所
コーポレート統括本部 業務基盤部
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