「日本企業のデジタル化への取り組みに関するアンケート調査」結果速報~日本企業のDXへの取り組み実態、成功企業の特徴について~

株式会社NTTデータ経営研究所

株式会社NTTデータ経営研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:川島 祐治、以下 当社)は、国内の大企業・中堅企業14,509社を対象に、当社独自の自主調査研究として「企業のデジタル化への取り組みに関するアンケート調査」を実施しました。
本稿は、調査研究を通して得られた、日本企業のデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)注1の取り組み実態、成功企業の特徴、そこから得られるDX推進成功への示唆について、分析の一部を速報として発表するものです。

(注1) デジタルトランスフォーメーション(DX):進歩したIT(AI、IoT、RPA等のデジタル技術)を取り込み、業務プロセスやビジネスモデルの変革、新たな商品・サービスの開発等を実現すること

※2019年8月20日付で発表した本件リリースのうち、「DXへの取り組み状況【図表1-1】」に誤りがありました。
(誤)DXに取り組んでいる企業は全体の42.7%。図表1-1の全体(n=641)
(正)DXに取り組んでいる企業は全体の43.4%。図表1-1の全体(n=663)
図表1-1および本文を訂正しています。

本調査の背景

急速に進展するデジタル技術を活用して、経営やビジネスといった企業活動そのものを根本から変革するDXが提唱されて久しい。
昨年9月には経済産業省より「2025年までに(中略)DXに乗り出さなければ日本企業は生き残れない」とのレポートも公表された。また、実際に多くの企業が、次代の成長と競争優位の確立に向けた変革の必要性から、危機感をもってDXの取り組みを推進している。
一方で、DX推進にあたっては、検討が頓挫したり、推進が空中分解の瀬戸際に陥ったりするなど、様々な壁に突き当たるケースも散見される。
こういった背景を受け、当社は、日本企業のDX推進の実態を多角的な観点で詳らかにし、どのような課題に向き合っているのか、成功の要諦は何かを客観的かつ定量的に捉える必要があると認識し、本自主調査研究を実施するに至った。

本調査の特徴

  • 偏りのない広範な母集団を対象にした調査
  • テクノロジーの視点に加え、ビジネスの変革や創造の視点(攻めのDX・守りのDX、など)も加味
  • 企業のDXにおけるトレンド、取り組みテーマ、現在の進度、成果創出への実感等の実態を多角的に調査
  • DX成功企業の特徴を経営基盤(戦略・プロセス・組織・人材・システム・ガバナンス・文化)の観点から解明
  • コンサルティングの実務経験を通して培われた弊社独自の知見に基づく洞察の付加

調査概要

  1. 調査対象: 国内の大企業・中堅企業14,509社注2
  2. 調査方法: WEBアンケート(一部、FAXまたはe-mailにて受付)
  3. 調査期間: 2019年7月23日~2019年8月4日
  4. 有効回答数: 663社(回答率4.6%)
  5. 調査観点: 下表のとおり

(注2) 株式会社東京商工リサーチのデータベースで売上100億円以上の企業を調査対象としている(一部除く)

分析結果サマリー(速報)

本調査研究は、現段階における日本企業のDXの実態を多角的な観点で分析し解明しようとするものであるが、本稿ではそれらの分析結果のうち主だったトピックを選んで速報する。

トピック①:DXへの取り組み状況とこれまでの感触

DXへの取り組み状況【図表1-1】

  • DXに取り組んでいる企業は全体の43.4%。
  • 企業規模が大きいほど取り組み企業の比率が高くなる傾向。
  • 売上1,000億円以上の大企業では77.9%もの企業がDXに取り組み中、売上500億円未満の中堅企業でも34.0%が既にDXに取り組み中。

DXに対するこれまでの感触【図表1-2】

  • DX取り組み企業への「DXの取り組みはこれまでのところ上手くいっていると思いますか」との問いに、“強くそう思う”・“概ねそう思う”と回答したDXにポジティブな感触を持っている企業は42.4%。
  • 一方で、“そう思わない”・“あまりそう思わない”と回答したDXにネガティブな感触を持っている企業は47.6%であり、DXにポジティブな感触をもっている企業よりも多数派。

以上より、日本企業がDXに取り組むことは一般的になりつつあるものの、DXに取り組んでいる企業は必ずしも上手くいっているわけではなく、むしろ上手くいっていない企業の方が多数派であることが示された。

トピック②:DXへの取り組みの推進段階(フェーズ)と成果の状況

DXの推進フェーズ【図表2】

  • 取り組みの推進段階(フェーズ)でみると、“実践着手前段階”のものが57.7%で過半数。その内訳は、「助走フェーズ」が29.4%、「構想策定フェーズ」が16.4%、「プランニングフェーズ」が11.9%。
  • 一方で、DXの取り組み全体のうち「本格活用・展開フェーズ」まで到達しているのは16.0%。

「本格活用・展開フェーズ」に到達した取り組みにおける成果の状況【図表2】

  • 「本格活用・展開フェーズ」に到達している取り組みのうち、“成果が出ている実感がある”ものが大半で77.7%。
  • “成果が出ている実感がある”とされた77.7%のうち、更に “厳密な意味で客観的に成果を出しているといえる”ものは29.8%。これは取り組み全体のわずか4.8%(「本格活用・展開フェーズ16.0%」×「厳密な意味で客観的に成果を出しているといえる29.8%」=4.8%)。

以上より、日本企業のDXにおいて、“厳密な意味で客観的に成果を出しているといえる”取り組みはごくわずかであることが示唆された。現在“実践着手前段階”にあるDXの取り組みが“実践段階”に移行していくなかで、DXで成果を出すために今後多くの企業が新たなチャレンジに直面すると推察される。

トピック③:DXへの取り組みテーマと成果の状況

DXの取り組みテーマの分類【図表3-1】

  • DXの取り組みテーマを3つの“攻めのDX”と、3つの“守りのDX”に分類。

テーマ別の取り組み状況【図表3-2】

  • DX取り組み企業がどのようなテーマのDXに取り組んでいるか調査。
  • 「業務処理の効率化・省力化」へ取り組んでいる企業が84.0%で突出。次いで「業務プロセスの抜本的な改革・再設計」の61.1%。どちらも“守りのDX”。
  • 全体として“守りのDX”が先行しており、“攻めのDX”への取り組みはまだこれからといった様相。

各テーマ別の成果の状況【図表3-3】

  • “成果が出ている”の比率は、「業務処理の効率化・省力化」の40.5%が最高。次いで「業務プロセスの抜本的な改革・再設計」の22.7%。どちらも“守りのDX”。
  • 他のテーマでは、“成果が出ている”の比率は20%以下。

以上より、現在の日本企業のDXは、成果の実感を得やすい“守りのDX”が先行していることが示唆された。DXの本丸である“攻めのDX”への取り組みについては、“成果が出ている”とする企業の比率が低いことから、難易度の高い取り組みテーマであることが示唆された。 “攻めのDX”であっても成果を出せる土台を有した企業が増えてくれば、今後取り組みが本格化していくものと推察される。

トピック④:DX成功企業の特徴とそこから得られる示唆

DX成功企業の定義

  • 本分析にあたっては、DX成功企業を以下の条件により抽出(以下、「DX成功企業」)。
    • 「本格活用・展開フェーズ(業務開始・サービスのリリース等)」に至っている企業で、かつ
    • 事前に成果の基準・指標を定めており、かつ
    • 事前に定めた成果の基準・指標に基づいて成果を測定しており、かつ
    • “成果が出ている”と回答した企業

DX成功企業の特徴【図表4-1】

  • DX成功企業における各経営基盤の項目のうち、有意な差として“当てはまる”寄りの結果を示したのは以下の6項目。
    • 【戦略】DXで何を達成するかが明確になっている
    • 【戦略】状況に応じてDXの戦略や計画を適宜修正するなど柔軟に運用している
    • 【組織】DXの推進組織またはチームは関係部門を巻き込んで組織の役割を果たしている
    • 【組織】組織間で連携し、全体最適の取り組みを進めやすい組織構造になっている
    • 【プロセス】社内の業務プロセスが明確で関係者に共有されている
    • 【文化】経営トップの意向を受けて現場の責任者が主体的に動く文化がある
  • 逆に、DX成功企業が有意な差として“当てはまらない”寄りの結果を示したのは以下の5項目。
    • 【人材】DXを推進したことが評価される人事制度になっている
    • 【人材】業務とITに関する深い知識と経験を兼ね備えた人材が豊富にいる
    • 【人材】給与や働き方に関してDX人材を厚遇することでよいDX人材を確保できている
    • 【システム】基幹システムの構造が柔軟で新しいテクノロジーを取り込みやすい
    • 【ガバナンス】DXに関する投資判断には従来とは異なる投資対効果基準を適用している

DX成功企業とそれ以外の企業との差にみられる成功への示唆【図表4-2】

  • DX成功企業とそれ以外の企業との各経営基盤のスコアを比較してそのギャップに注目することにより、まだDX成功企業に到達していない企業が今後強化していくべき変革の方向性の示唆を抽出。
  • ギャップが大きい項目(=今後強化していくべき項目)の上位5項目は以下。
    • 【戦略】DXで何を達成するかが明確になっている
    • 【戦略】状況に応じてDXの戦略や計画を適宜修正するなど柔軟に運用している
    • 【組織】組織間で連携し、全体最適の取り組みを進めやすい組織構造になっている
    • 【組織】DXの推進組織またはチームは関係部門を巻き込んで組織の役割を果たしている
    • 【ガバナンス】各DX施策を個別施策単位ではなく、施策群として依存関係と進捗を管理し、整合性をとっている

以上より、DXで成果を手にするには【戦略】と【組織】の面でDXに適した体制を築くことが重要であると示唆された。一方で、DX成功企業は【人材】や【システム】には課題を抱えながらも成果を手にしていることが示された。また、これから成果創出に向けて取り組みを加速させるDX推進企業は、【戦略】、【組織】および【ガバナンス(DX施策の群管理)】に強化の余地があり、これらの項目について客観的に評価・点検することの必要性が示唆された。

本速報の位置づけと今後

本調査研究は、日本企業のDX推進の実態を多角的に捉えるために、様々な観点で調査項目を設定している(【調査概要】5. 調査観点を参照)。本稿では、その集計・分析結果の一部を速報した。
今後、他の設問項目も含めたより深い分析と考察を行い、継続して調査研究レポートを公表することで、DXを推進する日本企業に有益な示唆を提供していく予定である。

本件に関するお問い合わせ先

報道関係のお問い合わせ先

株式会社NTTデータ経営研究所
コーポレート統括本部 業務基盤部
広報担当
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E-mail:webmaster@nttdata-strategy.com

内容に関するお問い合わせ先

株式会社NTTデータ経営研究所
企業戦略事業本部
ビジネスストラテジーコンサルティングユニット
小林洋介(こばやしようすけ)、坂井慧(さかいけい)
Tel:03-5213-4130

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