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(「環境新聞」2012年4月25日より)

リサイクルビジネス講座(13)
制度の「目的」と「可能性」

広域化で付加価値増大目指す新制度

NTTデータ経営研究所
社会・環境戦略コンサルティング本部
シニアマネージャー 林 孝昌

「レアメタル」確保の議論をきっかけに、「小型電子機器等」のリサイクル制度化が進められている。中国によるレアアース輸出規制強化以来、「都市鉱山」というフレーズが世に広まったことは記憶に新しい。ただし、レアメタルリサイクルは技術的に十分確立していない、との現実に目を背けてはならない。また、政策とビジネスのインターフェースもいまだに不明確である。「希少資源の安定確保」という命題を前に、マーケットを無視した政策を導入すれば、間違いなく失敗する。例えば非産油国が原油価格を政策的にコントロールすることは不可能であり、「レアメタル」でも同じである。

本稿では制度化を目前に控えた小型電子機器等のリサイクルをテーマに、ビジネス目線から見たリサイクル制度の目的や可能性などを探りたい。

図表(リサイクル制度の「目的」「現状」及び「可能性」)

まず、小型電子機器等のリサイクル制度においても、政策的関与が可能なのは静脈物流部分のみである。例えば容器包装リサイクルにおける再商品化は、再商品化製品利用事業者に有価で販売した実績をもって動脈物流に還元されたとみなされる。一方、金属部品などを豊富に含有する携帯電話やデジタルカメラなどが集まれば十分に有価取引の対象となるため、その貴金属回収事業は今もマーケットで自然に行われている。

仮に、「資源循環」および「国内確保」を目的として一部の事業者の技術で実用化したレアメタル回収を義務付けた場合、当該事業者は出口の資源相場に処理コストや利益を上乗せした「言い値」で、確実な玉集めを行える。その費用は税金で賄うことになるが、そこまでしてリサイクルすべき鉱種は見当たらない。したがって、レアメタルの回収・リサイクル義務化が社会的に受け入れられることは、まず有り得ない。また、JOGMECによる資源備蓄などを例外に、レアメタルなどの保有者は民間である。仮に国内製錬各社がレアメタル回収に成功しても、マーケットが海外ならば国内で利用されることはない。

次に「廃棄物対策」や「環境管理強化」という観点で考える。まず、一般廃棄物最終処分場の残余年数は10年度実績で19・3年分であり、00年度が12・8年分であったことからすると、その逼迫は緩和されている。また、小型電子機器等の発生量は50万トン程度と言われ、最終処分量削減への貢献は限定的である。

環境管理強化で想定される課題は制度上の位置付けがグレーな「市中回収業の取り締まり強化」と、「不適正な海外輸出の防止」である。ただし本来、前者は廃棄物処理法、後者はバーゼル法上の運用で対応すべき課題であり、新制度の目的とするには疑問が残る。

では新制度導入の目的と可能性はどこにあるのか? ずばり、「広域リサイクル推進」と「民間参入拡大」である。ほとんどの小型電子機器等は一般廃棄物だが、高度処理が可能な大規模破砕施設や製錬施設などは限られており、全国に遍在している。自治体などの支援を受けて物量を確保した上で、民間の広域物流システムを活用すればスケールメリットが生まれ、リサイクルチェーンの付加価値も増大する。

リサイクルは手段であって目的ではない。新たに施行される制度には、「産業政策」という視点を十分に意識した詳細設計を強く望みたい。

リサイクルビジネス講座 目次
(24)他社差別化の方向性
(23)パートナーとしての行政機関
(22)マクロ経済環境の変化踏まえた投資
(21)ソーシャルビジネスとの連携可能性
(20)製品の普及と潜在市場の有望性
(19)バイオマス事業化の可能性と行政支援のあり方
(18)リサイクルによる低炭素化
(17)市場規模と業界構造
(16)リサイクルビジネスの持続可能性
(15)巨大マーケット攻略と持続可能性への投資
(14)海上静脈物流の活性化に向けて
(13)制度の「目的」と「可能性」
(12)「発電燃料」としての循環資源
(11)リユースに求められるセンス
(10)「静脈メジャー」の意味と意義
(9)リサイクル目線から見た街づくり
(8)リサイクルビジネスとトレーサビリティ管理
(7)リサイクルビジネスと地域活性化
(6)資源循環の適正スケール
(5)循環資源の「質」と「量」
(4)リサイクル技術とは
(3)原料利用と燃料利用のベストミックス
(2)利益を生み出す必要条件
(1)リサイクルビジネスとは



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