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(「環境新聞」2012年2月29日より)

リサイクルビジネス講座(11)
リユースに求められるセンス

「部品」分野で本格競争へ

NTTデータ経営研究所
社会・環境戦略コンサルティング本部
シニアマネージャー 林 孝昌

「リサイクルショップ」は、リユースを生業とする流通業を指す用語に定着した。古着や古本のみならず、大手事業者による取り扱い品目はあらゆる製品に拡大し、その市場規模は3750億円に至っている(日本リユース業協会推計値、10年度、自動車・書籍など除く)。ただし、この業態は付加価値の残った不要物の取引を仲介する流通業であり、資源循環を担うビジネスのスコープには含まれない。本稿では、リサイクルビジネスから見た「リユース」の可能性の検証を行う。

図表(リサイクルビジネスにとっての「リユース」

「リユース」を前提としたリサイクルビジネスは、「容器リユース」、「製品リユース」、「部品リユース」に大別できる。中でも認知度が高いのが、「容器リユース」である。「リユースはリサイクルよりも環境にやさしい」という直感的で乱暴な議論をベースに、ガラスびんやペットボトルの「リターナブル化」や「デポジットシステム導入」を求める声もある。飲料容器の場合、LCA評価などによる比較検証を行うまでもなく、すでに素材別リサイクルシステムが確立している中、経済合理性を伴わないリユース導入の必然性はどこにもない。また、プリンタートナーなどのリフィル事業も普及している。しかし、製品本体機能への責任を持てない第三者による備品販売は、ユーザの信頼性を確保するのが困難である。一言で言うなら、「容器リユース」は筋が悪いのだ。

次に「製品リユース」の場合、グリーン購入法の追い風を受けて市場が急拡大した「再生複写機」並びに「再生パソコン」の成功事例が見られる。「再生複写機」は、メーカーが保有する製品回収システムを活用して、リースアップ品の解体や整備、部品交換などを行い、品質保証を付けて販売する製品である。ハイスペックの製品を求めない官民ユーザーのニーズに応えることで、新たな需要発掘に成功したが、複写機メーカー以外の第三者が参入する余地はない。

一方、「再生パソコン」はリース会社などから回収した使用済みパソコンに対して、第三者がデータ消去やメンテナンスを行い、当該事業者が品質保証を付けて販売する製品である。「再生パソコン」の場合、一定の技術的ノウハウさえあれば市場参入は十分可能だ。ただし、大量のパソコンを仕入れるには、極めて高度な信頼性が求められるため、大手企業の系列会社などでない限り、成功のハードルは高い。

最後に、今後最も期待できるのが、「部品リユース」である。既存事例は、自動車解体事業者による「部品取り」や、パチンコなど遊技機器類の「液晶パネルリユース」などに限られる。これまで「部品リユース」の市場拡大が進まなかった理由は、「メーカーによる回収システムの不在」と「部品スペックの急激な進化」にあった。制度整備の進展により、耐久消費財の回収システムはおおむね確立されている。また、グローバル化の進展や国内外のユーザーニーズの多様化に伴い、ものづくり産業の「モジュール化」も進展してきた。

結果、複数ブランドオーナの製品に同一部品が使われることもあり、部品スペックの進化も限界に近い状況にある。メーカーとの連携により、回収した部品をそのままリユースできれば、素材還元による再生よりも付加価値が高いことは自明である。こうして事業環境が整ってきた中、「部品リユース」の競争はこれから本格化するはずである。

リサイクルビジネス講座 目次
(24)他社差別化の方向性
(23)パートナーとしての行政機関
(22)マクロ経済環境の変化踏まえた投資
(21)ソーシャルビジネスとの連携可能性
(20)製品の普及と潜在市場の有望性
(19)バイオマス事業化の可能性と行政支援のあり方
(18)リサイクルによる低炭素化
(17)市場規模と業界構造
(16)リサイクルビジネスの持続可能性
(15)巨大マーケット攻略と持続可能性への投資
(14)海上静脈物流の活性化に向けて
(13)制度の「目的」と「可能性」
(12)「発電燃料」としての循環資源
(11)リユースに求められるセンス
(10)「静脈メジャー」の意味と意義
(9)リサイクル目線から見た街づくり
(8)リサイクルビジネスとトレーサビリティ管理
(7)リサイクルビジネスと地域活性化
(6)資源循環の適正スケール
(5)循環資源の「質」と「量」
(4)リサイクル技術とは
(3)原料利用と燃料利用のベストミックス
(2)利益を生み出す必要条件
(1)リサイクルビジネスとは



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