「NTTデータ経営研究所 対談シリーズ」第2回目では、三菱商事やマッキンゼーに長年勤務し、企業のビジネス、コンサルティングの両方で豊富な経験を持つ名和高司氏に、コンサルタントに求められる姿勢や学びについて話を聞いた。「20世紀的なコンサルの時代は終わった」と語る名和氏の真意は。
コンサルの役割が大きく変化し、伴走型のコンサルが必要に
今日は名和さんに、コンサルタントの秘訣と言うべきか、私たちコンサルタントが何を学ばなければならないのか、何をしていけばいいのかといったことをインタビューしていきたいと思います。
名和さんは現在、一橋大学大学院 経営管理研究科国際企業戦略専攻の客員教授をされています。また著書も多数で、最近では『資本主義の先を予言した 史上最高の経済学者 シュンペーター』を刊行されました。私も大変興味深く読ませていただきました。
また直接コンサルに関係するところでは、『コンサルを超える 問題解決と価値創造の全技法』という書籍も書かれています。
最近はパーパス経営が注目されていますが、名和さんは著書の『パーパス経営―30年先の視点から現在を捉える』の中で、日本企業は昔から「志」を大事にしてきたとしたうえで、「志本主義」と呼ぶパーパス重視の経営をすべきだと説いておられます。
今日はそのあたりも含めて、いろいろとお話をお伺いしたいと思っています。名和さんは三菱商事に勤務された後、ハーバード大学でMBAを取得され、マッキンゼーのディレクターとして約20年間、コンサルタントに従事されました。BCG(ボストン コンサルティング グループ)のシニアアドバイザーを務められたこともあります。日本を代表するコンサルティングファームでの経験をお持ちです。
まずお伺いしたいのは、社会や企業が変革しようとしている中で、今のコンサル業界全体の現状についてどう思われているかという点です。
私がずっと言っているのは、20世紀的なコンサルが終わったということです。コンサルの役割が大きく変化しています。一口で言えば、これまでの御託宣型あるいは提言型の、「かくあるべし」といった偉そうなコンサルではなく、クライアントと一緒に伴走し新しい未来を作る、伴走型のコンサルがますます必要になってきているのではないかと思っています。
日本では今、さまざまなコンサルが生まれています。どういうところを強化していくべきだと思いますか。
未来にはいろいろな選択肢があると思います。必ずこうなるという確実なものはありません。そういう意味で言うと、コンサルやシンクタンクが未来を予言することはもう無理なのです。
逆に言えば、主役は企業であり経営者であり、あるいはそこにいる社員です。その人たちの思いに寄り添って、その思いを未来にどうつないでいくか、あるいは未来を一緒に紡いでいくか、こういうことができるのが、コンサルとしてのこれからの役割ではないかと思います。
「伴走型」のコンサルに求められているものとは
今まで求められていた提言型や、未来を予測したあるべき論ではなく、実績をお客様とともに出していくということになるわけですね。そうするとコンサルタントも、いろいろな知識や理論を知っているだけではなくて、求められるものも変わってくるように思えます。
お客様の言っていることを応援するだけなら、お客様の社内にもそういう役割の人たちがいると思います。あえて第三者としてのコンサルの役割があるとすれば、一つは外部の視点をしっかりと持ち込むことです。その企業が常識だと思っていることがひょっとしたら常識ではないかもしれない、といった気づきを与えることがお役に立つでしょう。
皆さんは、いろいろな業態業種をご存知ですよね。企業はどうしても自社のことしか分かりません。その広がりの部分がすごく大事だと思います。
もう1点は、企業はどちらかと言えば今あるものを延長して考えがちです。そこで、時間軸を少しずらして、例えば2050年ぐらいの姿をしっかり描いてそこからバックキャストする。そうすることで、企業が今の延長線上で考えている未来とはまた違った形の風景が見えてくると思います。
あえて、異論ではないですけれども、空間的な広がりや時間軸の長さという、違った角度から提案できる力がコンサルに必要だと思っています。
そうなると、今までのように海外の理論などを勉強してお客様に提案するだけでなく、もう少し広い観点での教養や歴史、人間観や社会観が求められてきそうですね。
その通りです。コンサルに求められることがますます難しくなりタフになります。IQ(Intelligence Quotient:知能指数)、EQ(Emotional Intelligence Quotient:心の知能指数)という指数があります。
IQは知性です。ロジックをしっかりと身につけるとか、考える力は磨いたほうがいい。コンサルの一つの技ですから。
難しいのはEQのほうです。これは人に寄り添うといったように、論理で切るよりは感性でしっかりと相手に共感を持っていただく、あるいはこちらも相手に対して共感を持つ、ある種の人間味です。これがないと、たとえ正しいことを言ったとしても相手はなかなか乗ってくれずコンサルの一人よがりになってしまいます。人間的な幅を作ったり人間の魅力を磨いたりするのは難しいものです。知性なら勉強をすれば身につきますが、EQは、人間としてある種の修羅場をくぐった経験やその人の持ち味が重要なファクターになります。
IQ、EQに加えて、私はさらにJQ(Judgement Quotient:判断指数)という言葉を作りました。いわば判断する力です。基本的に経営者は判断しなくてはなりません。正しいかどうかだけでは決められず、ある種のリスクを取ってやらなければなりません。このJQに寄り添うのが一番難しいのです。
「真善美」で言えば、「真」はIQでなんとかなります。「美」はEQを磨けばいいでしょう。ところが「善」というものは答えがありません。人によって違うし、時と場所によっても違いますから。この「善」の判断をうまくしていただくための勇気を持っていただいたり背中を押したりするのがコンサルの役割だと思います。
そのためには、コンサル自身の頭の中や胸の中に、哲学であるとかリベラルアーツ的な要素がしっかりと入っていなければなりません。そこからにじみ出てくる、これまでの御託言とは違う、相手の方に信じてもらうような、後押しができるようなJQがこれからは求められるようになると思います。
名和さんの著書の中では「原体験」という言葉もありました。本を読ませていただいて、名和さんご自身も社会科学に対する古典などに関する深い知見をお持ちであることがわかりました。社会とは何か、人間とは何かといったところまで理解された上でコンサルをされているのだろうと感じました。
自分の体験だけでは幅が広がりません。人類が過去に生み出した知恵をどれだけうまく吸収できるかが私たちのやれることだと思います。古典を読んだり歴史を知ることは一種の疑似体験ではありますが、この数がどれだけ増えるかがその人の幅につながり、豊かにしてくれると思います。
というと「今までまったくやってこなかった」と、がっかりする人もいるかもしれませんが、諦める必要はありません。それぞれの時代において自分の関心に合ったもの、あるいは関心よりちょっと離れたぐらいの所にしっかりと好奇心を持って、そこから読みこなしていくという活動をするといいでしょう。どの年代の人でも始めるのに遅すぎるということはありません。明日からでも始めてください。
若手コンサル、シニアコンサルがそれぞれ心がけるべきこと
名和さんは日本を代表するような企業の社外取締役もされていますね。中でも私が興味深く思ったのは、オーナー企業の社外役員を多く引き受けられていることです。やはり、創業者の判断の際に「善」的なアドバイスを求められるためでしょうか。
経営者の方々は実は孤独です。特に創業者であるカリスマ経営者はそうですね。常に判断をしなくてはならないのですが、100%自信があるわけではない。自分の拠り所の限界もよくご存知です。だからといって弱音を吐くわけにはいきません。そこでのアドバイザーは非常に価値があると思っています。
そういう経営者は、自分の判断をできるだけ正しい方向に持っていきたい、「善」に持っていきたいという気持ちがあるので、聞く耳は持たれています。私が異論を唱えると嫌な顔をされますが、それが私の役割だと思ってやっています。サラリーマン経営者よりも、自分の思いの強いカリスマ的な創業者のほうがはっと気付いていただく瞬間があるという手応えがあります。
私が理想とするコンサルタントは、その場で相手に「ぐうの音が出ない」ほど言い負かす人ではありません。例えていうならば「アマゾンエコー」などのスマートスピーカーにこちらが言いたいことを吹き込んでおき、それを夜中に経営者に聞かせて、朝起きたら、あたかも経営者が自分で気が付いたように話される…といったものが最高のアドバイザーではないかと思っています。隠れた「アマゾンエコー」になりたいというのが私の思いです。
名和さんはマッキンゼーやBCGでもコンサルをされた経験をお持ちです。お伺いしたいのは、若手のコンサルタントが何をすべきかということです。もう一点は、名和さんの書籍に、フレームワークであるべき論を言うのではなく、「なぜ今それができてないのか」という観点で、それをどうやってひも解くか、解決するかが重要だというお話がありました。そこを少し教えてください。
二つとも重要なテーマです。まず若い人に期待することですが、私はマッキンゼー時代に、新卒の採用担当をしていたことがあります。面接の際に必ず聞いていたのが、その人の本当の自分を作った原体験です。それから失敗した経験も聞きました。口先だけでコンサルの真似をするのではなく、自分の体験から何を語れるかをすごく大事にしていました。
話を聞いているとやはり海外にいる人は、これらがビビットに自分の中に刻まれていていました。海外に出たことでむしろ日本人であることのアイデンティティーを発見したり、自分一人では何もできないことが分かったり。あるいは今風に言えばマイノリティのある種のつらさみたいなことに気づくといったことが人生の深いところに刻まれているのです。このような人ほど、そこから立ち上がって何かをしようというときの拠り所になります。
若い人にはぜひ旅に出てくださいと言いたいですね。受験勉強や就職活動だけではなく、バックパッカーでも何でも、自分の原体験と思えるようなことをやってほしいと思います。コンサルの私の本など読む必要はありません。手法は後からいくらでも学べますから。その時代でしかできないような若さを武器にしたチャレンジをすることがすごく大事だと思います。
二つ目の質問のフレームワークについて。コンサルになるといろいろな道具をあてがわれます。それらの使い方も覚えるのですけれども、それらを当てはめただけでは当たり前の答えにしかなりません。山口さんがおっしゃったように、まず、世の中的に整理するとどうなるのか。コストとクオリティ、社会価値と経済価値などを横軸と縦軸で切ってみる。そしてそのどちらかを選ぶのではなく。「その両方を狙って右上のほうに行きましょう」といった提案をするのです。
二者択一の「or」ではなくて「and」を取る。それは妥協ではなく、そこに次のイノベーションが生まれるヒントがあるからです。フレームワークもバカにしたものではありません。分けるだけではなく、それらがもう一回融合する地点を考えることが大切です。出発点で場合分けした上で、それらがWin-Winになる世界をつくるという一つの判断のスタートポイントになるのです。
まさにそこを考えることがクリエイティブですね。今、若手のコンサルへのアドバイスをいただきましたが、逆にこれまで経験を積んできたシニアのコンサルタントも悩んでいるところがあると思います。DXなど、変革の波が次々と押し寄せている中、今までの経験ではうまくいかないということもあるようです。シニアコンサルにとっても、変わらざるを得なくなっていると思います。
先ほど年齢に制限はない、いつ始めても遅くはないと話しました。さらに、それぞれの年代ごとの特徴もあると思います。若者の物おじしないチャレンジ精神も大事だし、シニアの人がそれなりの経験から何かを編み出すことも大事です。そのカウンターバランス(つり合い)がすごく大事だと思います。若い人であればいろいろな人から英知をもらうことが大切です。ただし、シニアの人にとっても、常に学ぶ心は大事だと思います。
私もDXなどに関する最新のテクノロジーは若い人から教えてもらっています。「YouTube」や「TikTok」などの動画共有アプリは、孫に教えてもらっています。リバースメンターという言い方もありますが、若い人からほど学べることもたくさんあります。そのような双方向性がすごく大事だと感じます。
0を1にするだけでなく、1を10に、100にすることが大切
最近ある経営者の方とお話したら、名和さんの話題が出ました。名和さんから「「0から1のアイデアはいくらでもある。大事なのは1から10、10から100に事業を拡大することだ」と言われたそうで。その経営者は「まさにこれだ」とはっとしたそうです。社内でいろいろなアイデアコンテストをやるのはいいけれど、大切なのはそれをどうやってスケールさせるかだと。
経済学者ヨーゼフ・シュンペーターは、今から100年前に「イノベーション」という概念を最初に定義しました。シュンペーターによれば、0から1はインベンション(発明)に過ぎないというのです。それ自体に価値はあるかもしれませんが、社会は変わりません、新しい市場も生まれません。
大切なのは、「0-1」の「1」をどれだけ早く10にし、100にするか、すなわちマネタイズ(収益化)です。事業化しお金が回るためのスケールが必要なのです。シュンペーターによれば、スケールして初めてイノベーションといえるのです。
日本人の多くが誤解しているのは、イノベーションとは技術革新だということです。それは一つの発明の武器ではあるけれども事業ではありません。「技術で勝って事業で負ける」という日本企業を表す自虐的な言葉もありますが、まさにそれです。技術で勝っているだけでは勝っているうちに入らないのです。事業にするためには1を10にしなければなりません。
「本当のイノベーションは技術革新ではなく市場創造である」というのは、シュンペーターの概念を受け継いだ経済学者ピーター・ドラッカーの言葉です。マーケットを作って初めてイノベーションなのです。
「マーケットアウト」という言葉もあります。プロダクトアウトでもなくマーケットインでもない。マーケットアウトとプロダクトアウトは紙一重ですが、お客様が言っていることをそのまま形にするだけではなく、お客様も気付いていないような新しい未来を作ることがマーケットアウトです。未来が作れないとただのプロダクトアウトで終わってしまいます。マーケットアウトでない限りはイノベーションではないことに、日本人は気づくべきだと思います。
コンサルタントはまさに1を10にし、10を100にするイノベーションの支援をすべきですね。
私はよく「ふくらし粉」と言っています。アイデアはよくてもまったく膨らまず原石のままでは仕方がありません。まずマネタイズする形で膨らませ、社会に実装する形でスケールさせれば強いのです。これを経営者一人でやるのが難しいとすれば、コンサルタントが一緒に伴走し、1を10、100にすると、日本の企業として可能性が開けてくると思います。
グローバルスタンダードの幻想にとらわれず日本独自の強みを生かす
名和さんのパーパス経営に関する本を読んではっとしたのが、日本経営が悪いのではなく、グローバルスタンダードいう幻想にとらわれているのではないかという指摘でした。日本企業ならではの強みや良さを大切にすべきだということでした。
名和さんのお話では、パーパスの考え方は、日本企業が昔から「志」として持っていたということですね。名和さんは「志本主義」という言葉をつくられて、パーパス重視の経営を説明されています。
私は必ずしも日本礼賛をしているつもりはありません。ただし、それぞれの国ごとに固有の文化や価値観があると思っています。ドイツならドイツ、北欧なら北欧で、自分たちの立派なモデルを作っているのです。グローバルスタンダードという名のモデルにしばられていません。私たちも自信を持って日本的な良さを自覚し、その上に、グローバルに通じるものをトッピングすればいいのです。
実は、私はパーパスというが嫌いです。わざわざ英語を使わなくても、日本語にはもっといい言葉があります。それが「志」です。「志」は「士」に「心」と書きます。「士」とは武士などのプロフェッショナル、すなわち道を極めている人たちのことです。一生懸命道を極める、その心こそ日本人が本当に誇るべき切磋琢磨の精神だと思っています。もちろん、志だけではなかなか実現しません。夢見るだけではなく、そこに近づく熱意、情熱も大事です。
日本発のコンサルティングファームとしてNTTデータ経営研究所に期待
名和さんのお話は、日本と海外とで優劣を比較するのではく、日本の良さも認識すべきということだと思います。その点では、私たちNTTデータ経営研究所はNTTデータグループの日本のコンサル会社です。日本にこだわることもないのですが、日本の風土などもよく理解した上で日本企業・経営者のお役に立っていかなければならない、社会の変革にも役立っていかなければならないと考えています。このような日本の企業および私たちNTTデータ経営研究所に対する期待があればお聞かせください。
まず日本発であるということ、それからNTTデータグループがデジタルに対する知見が非常に深いということ。ここを掛け算すればとても素晴らしいコンサルティングができるのではないかと思います。
よく「日本はデジタルで後れを取っている。GAFAに比べると遅い」などと言われます。確かにサイバースペースではGAFAなどに負けていますが、まさにCPS(Cyber Physical System)と言われているようなサイバーとフィジカルが交わる世界では日本企業の強みが発揮できると思っています。そのあたりの道案内をNTTデータ経営研究所の皆さんにやってほしいと期待しています。
ありがとうございます。私たちも、既存企業がどうやってデジタル化で成功するかを重要テーマと考えています。海外の状況を見てみると、もちろんGAFAは進んではいますが、海外においても既存企業のデジタル化にはけっこう苦労しているようです。逆に日本企業のリアルの世界をデジタルによって生かすことで強みを発揮できると考えています。ただ、日本の中では若干、変化になかなか対応できないという風土もあるように思います。
残念なのは、日本ではどうしても中国や欧米と比べるとスピードとスケールが足りないことです。こつこつと磨きをかける改善は大好きですが、デジタルを使ったスピードやスケールは海外企業のほうが上手です。
私はよく「匠(たくみ)と仕組み(しくみ)」と言っているのですが、日本人は匠に走り過ぎていて、一人一人は深いのだけれどもなかなか仕組みに落ちません。結果的にスピードとスケールがどうしても出てこないのです。海外はどちらかというと人間をあまり信じていなくて、仕組みにすぐ落とそうとします。そのため、仕組みは標準化されて広がるのですが、それほど深くないのです。
どちらがいいかという話ではなく、両方、すなわち、匠を仕組みにする仕掛けがあるといいと思っています。匠を人間が深くするだけでなく、それをいち早く仕組みに落とすと、仕組みがどんどん進化し始めます。一人一人の匠が新しい仕組みのネタを作るのです。
私が師事した野中郁次郎先生は、これを「クリエイティブルーチン」と呼んでいます。クリエイティビティはn=1で、これは匠が作ります。n=1ではAI(人工知能)は作れません。AIはビッグデータが必要ですから。n=1を仕組みに落とすとスケールします。仕組みに落とすためには標準化しなければなりません。ただし、標準化した途端に陳腐化します。匠の世界、クリエイティビティの世界とは相反する、トレードオフなのです。
そこで「クリエイティブルーチン」ではこのクリエイティビティを見つけてルーチンに落とし込みます。これができるようになるとルーチンが進化します。これを回していくとクリエイティビティがあればあるほどルーチンが進化するようになります。クリエイティビティの人は何か作ってもすぐルーチンで落とされるのでもっと先に行かなければなりません。お互いが切磋琢磨しながら回りだすと日本の匠の世界がしっかり仕組みに化けます。
実はトヨタのプロダクションシステム(TPS)はまさにこれです。現場で問題が起こると「アンドン(ラインのトラブル状況表示板)」で止めて人間が問題解決するというn=1が起こります。それが素早くTPSの中に取り込まれます。つまり、問題が発生するごとにTPSが進化するのです。日本の企業の多くが、「クリエイティブルーチン」を業務や経営でもやれるようになると、日本は楽しい世界になると思います。
社会課題を解決するためのコンサルタントの役割
最後にもう一点、コンサルタントは企業の課題を解決する仕事だけでなく、今後は社会課題を解決していくことも必要だと思います。名和さんはどうお考えでしょうか。
目の前の企業や消費者を見るだけでなく、企業も個人も結局は社会の一員だっていう意識に移ってきています。自社だけ儲ければいいというのではなく社会をどう調和のある形に進めていくかが各企業の問題意識になっています。自分さえ病気にならなければいいといったことはコロナ禍ではありえません。利他的になることが未来の自分に対する利己的な価値につながります。
コンサルタントがお客様に向かうのではなくてお客様と同じように未来に向かい、お客様の実現を支援していくということが重要だということがよく分かりました。まさにそういうところでNTTデータ経営研究所は頑張っていきたいと思います。
今日はありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
対談動画
対談動画はこちらからご覧いただけます。
名和様プロフィール
株式会社ファースト・リテイリング(~2022年11月)、株式会社デンソー(~2018年6月)、味の素株式会社、NECキャピタルソリューションズ株式会社、朝日新聞社(いずれも現在も)の社外取締役。
その他、インターブランド・ジャパンなど複数社のシニア・アドバイザーを務める。
主な著作・翻訳
- 『高業績メーカーはサービスを売る』(2001、ダイヤモンド社、共著)
- 『戦略の進化』(2003、ダイヤモンド社、共著)
- 『学習優位の経営』(2010、ダイヤモンド社)
- 『失われた20年の100社の勝ち組企業100社の成功法則~X経営の時代』(2013、PHP研究所)
- 『CSV経営戦略』(2015、東洋経済新報社)
- 『成長企業法則~世界トップ100社にみる21世紀型経営のセオリー』(2016、ディスカヴァー・トゥエンティワン)
- 『企業変革の教科書』(2018、東洋経済出版社)
- 『コンサルを超える問題解決と価値創造の全技法』)(2018、ディスカヴァー・トゥエンティワン)
- 『経営改革大全 企業を壊す100の誤解 』(2020、日本経済新聞出版)
- 『パーパス経営~30年先の視点から現在を捉える』(2021、東洋経済出版社)
- 『稲盛と永守 京都発カリスマ経営の本質』(2021、日本経済新聞出版)
- 『資本主義の先を予言した史上最高の経済学者 シュンペーター』2022、日経BP)
など著書・寄稿多数