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トップ・インタビュー

日本発のコンサルティングファームとして
進むべき道~後編~

2022.11.01
(語り手)株式会社シナ・コーポレーション 代表取締役 遠藤 功
(聞き手)NTTデータ経営研究所 代表取締役社長 山口 重樹
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コンサルタントとしての価値、それは一次情報と熱量格差。

山口

コンサルタントとして求められている価値を提供するには、やらなくてはいけないことが非常に沢山あると思ますが、遠藤さんが若い時から心がけてきたことを教えていただけますか。

遠藤

やはり自分ならではの武器がなくてはいけないと思います。私自身は、とにかくクライアントの現場に足繁く通い、社長が絶対知らないようなネタを拾ってくるようにしました。

経営者は現場の一次情報にはすごく興味を示してくれる。私の場合、切れ味鋭い論理展開が得意なわけではなかったので、泥臭く現場に通い、いろんな材料を持ってきて「今、現場がこうなっていますよ。社長、知っていますか?」と言うと「じゃあ、どうしたらいいんだ?」となる。自分なりの経営者に対する付加価値の付け方が必要なのです。単に「社長、何かお話聞かせてください」といった御用聞きではなく、こちらから何か球を投げなくてはいけない。

海外の先進事例を話してお茶を濁すコンサルタントもいますが、そんなのは聞かされても全然面白くないのですよ。そうではなくて、やはりその会社のことを本当にわかった上で、泥臭く食らいついていく。このやり方は日本的かもしれないですが、日本企業のトップには受けます。

以前、とある住宅メーカーのプロジェクトが始まるとき、その会社と競合会社の住宅展示場を合計20カ所ぐらい周って、それを元に社長に話をしました。そうしたら「君、社長の僕よりよく知っているね」って言われました(笑)。「僕が行っても、全部みんなお膳立てしているから、全然実情がわからない」と。でも、「実際はこうなっていますよ」と話をするとやはり喰い付き方はすごく良いですね。そこからは、「じゃあ、そこからどうしていくのか」と、経営目線に引き上げた議論をしていくというスタイルでずっと私はやってきました。

この、事実ベースでエビデンスを元に話をしてくというスタイルは、別に経験値がなくたってできます。泥臭く一次情報を自分で取ってきて話をすると、絶対に経営者は耳を傾けてくれます。それは若い人でも絶対にできることです。自分の足で稼いだ一次情報というのは、コンサルタントにとって最大の武器だと思います。

山口

コンサルタントは、現場の一次情報を重視し足で稼いだ上で、論理を組み立てていくことが基本中の基本ということでね。

遠藤

もちろん演繹的に世の中の流れを組み立てて俯瞰的に考えることも大事ですが、経営者は皆優秀なので、そんなレベルの話は大体わかっているのです。正直それだけだと、なかなか付加価値にはならない。そのため、演繹的に考えたものに対して帰納的に現場に足繁く通って、現場のリアリズム・リアリティを元に話をすると、経営者の方からはすごく感謝されるし、「では、コンセプトと現場のリアリティというものをどうやって結びつけていくのか」というような議論になってくるので、非常に突っ込んだ議論ができるようになります。

ですから、若い人も逡巡する必要はありません。自分で泥臭く現場へいけばいいのです。それはそれで大変なことではありますが、すごく大事なことだと思っています。

山口

そのためにコンサルタントはクライアントを好きになり、好きな相手のことを徹底的に調べるという熱意を持って仕事をすれば、おのずから得るものは膨らんでくるということですかね。

遠藤

私がコンサルタントになりたての頃は、今思えばコンサルタントのレベルもそれほど高くはありませんでした。当時はまだ「知識格差」があって、例えばMBAも日本の企業では一般的ではなかったので、MBAを取得して経営の知識を身につけていると、それだけでクライアントは「おお!」と言ってくれた時代です。ある日本の会社で、その会社の事業のポートフォリオを書いた際、それだけでクライアントが「おお、わが社はこうなっているのか!」と驚かれたことがありました。ポートフォリオを書くだけで、すごく感謝される…それはまさに「知識格差」があった時代なのです。

しかし時間が経つとクライアントの方もみんな勉強し始めて、そんな理屈は全部理解してくる。では、次にコンサルタントが何をやったかというと「情報格差」での勝負でした。要は、クライアントが持ってないような情報です。「こういったことは海外の企業ではこうやっていますよ」とか、「ベストプラクティスはこうです」といったような「情報格差」で付加価値を付けていく。

これもまたインターネットが普及してくると何でも自分たちで調べられるので「情報格差」は無くなっていきます。では、「知識格差」も「情報格差」も無くなった中で、どうやって付加価値を付けていくかとなったとき、私は「熱量格差」でいくしかないと行き当たりました。コンサルタントが情熱的に語り、その熱量で泥臭く動き、そこで集めてきた情報と論理で対峙していく。そういうコンサルタントでないと、もはや付加価値がつかないと思います。でも、現実を見ると、綺麗にまとめようとするコンサルタントが増えているため、クライアントにはなかなか刺さらない。今や桁違いの熱量がないと刺さらないのです。コンサルティングも簡単な仕事ではなくなって来ているので、知識や情報の格差だけのコンサルタントはクライアントから求められません。やはり今こそ「コンサルタントの付加価値ってなんだろう」と考えるタイミングだと思います。

山口

熱量を持ってファクトやエビデンスを押さえつつ、その中から独自のものを作っていくということが、今真に求められていることなのですね。

遠藤

それは今までも普遍的に大事だったのかもしれませんが、より一層求められていと言えます。答えというのは簡単に導き出せるものではありません。本質的に大事なことは何かということを、クライアントよりも深く真剣に考える姿勢が求められていると思います。

山口

以前、クライアントのことを一生懸命知るだけではなく、「クライアントの先の顧客がどうクライアントを評価したり、継続的に利用したりしているのか」や、「まだ顧客になってない人がクライアント企業どう見ているか」の情報を提供すればクライアントには喜ばれると思ったことがあります。

遠藤

それはまさに一次情報ですね、おそらくクライアントの顧客などはクライアントに対して本音を言わないですよね。逆に客観的なコンサルタントだからこそ本音が導き出せる。それを深めるにはやはり情熱が必要だし、インターネットから二次情報を取ってきても意味はない。「自分の足で稼ぐ」という泥臭さが必要ですが、相当の熱量がないと付加価値はつけられないと思います。今はコンサルタントもだんだんデスクワークになってしまっていますが、基本的にコンサルタントは足で稼がないとダメだな、と思います。

山口

若いコンサルタントが遠藤さんのような、本当の経営を語れるコンサルタントを目指すとすると、例えば30代、40代ではそれぞれ何をやるべきか、というアドバイスはありますか。

遠藤

基本は全部一緒です。マネジャーになったら何か変えたか、パートナーになったから何か変えたかということはありませんでした。結局パートナーになっても現場に行きますし、やっていることは一緒なのです。やはり現場に行って一次情報を集め、そこから見えた景色から本質を考え、直接社長に伝えるとか、基本的にやることは一緒だと思います。理屈で考えるだけではなく、現場のリアリズムを理解した上で、本当に機能する戦略を考えることが大事だと思っています。

山口

遠藤さんのお話を聞くと、現場での一次情報の積み重ねをしている人と、机の上の論理だけを考えている人では、長い目で見ると圧倒的にコンサルタントとしてのレベルが違ってくるように思います。

遠藤

それはあると思います。クライアントへの提案が刺さる瞬間というのがあるのですが、それはだいたい一次情報をもとにした論理です。クライアントが真剣に聞いてくれているのは、クライアントの生の声とか、現場で泥臭く集めたデータや一次情報を元にした分析結果であり、これはもう本当に刺さります。だから如何にリアリズムあるアウトプットを出せるかというのが醍醐味のような気がします。しかも刺さる瞬間って気持ちが良いのですよ(笑)。クライアントの心の中で何かが変わったな、と感じる瞬間や「この事業をやろうよ!」と言って頂けた時の快感というのがあります。

そういう意味でいうと、たった1枚のキースライドでクライアントに付加価値をつけることができます。いくら100枚のスライドを書いても、クライアントが喰いつくのはたった一枚のキラーチャートです。キラーチャートを書けるかどうかというのは、コンサルタントの妙味であり、たった一枚でお客さんに刺さるというのはコンサルタントにとっての醍醐味です。

クライアントがどうやったらビジネスで勝てるのか、真の強みは何なのか、弱みは何なのかという本質を見抜き、それを凝縮させたたった一枚のスライドがクライアントの運命を決める。これはコンサルタントをやっていて本当に面白い。もちろんやっているときは悶々とするのですけどね。

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コンサルタントとしての顧客提供価値とは。

山口

遠藤さんのように、経営者に経営改革を提言されていく立場では、やはり経営改革で成果が出るところまで、様々な支援をされますよね。

遠藤

私は戦略コンサルティングファームに居たので、システム構築まではできませんでしたが、やはり最上流のところから始まって、業務系のサプライチェーンの機能設計まで落とし込むところまでは支援していました。幸い私のコンサルタント経験の中で、BCGのときは戦略系の仕事が多かったのですが、その後、アクセンチュアとブーズ・アレンでは業務系のBPR(プロセスの観点からの業務改革)の仕事や、サプライチェーンの業務改革も多く携わったので、戦略からオペレーションまでは大体理解しています。

今求められているのは会社全体の変革をどう総合的にサポートしていくのかです。上流からインプリメンテーションまでできる国産コンサルティングファームが日本には絶対に必要です。NTTデータ経営研究所には、国産の統合型コンサルティングファームとして是非そこを担って欲しいと思っています。

山口

ありがとうございます。先ほど遠藤さんがおっしゃった現場力とも関わりますが、実際に現場で実行するのはコンサルタントではなくクライアント側かも知れません。その企業が成果を出すためには、そこまで含めて現場を変えていく必要があるということだと思うのです。

遠藤

最近、ケイパビリティという言葉がさかんに使われるようになりました。経営におけるケイパビリティの重要性というのは世界でも言われ始めていますし、今までストラテジーだとか言っていたアメリカの会社も急にケイパビリティと言い始めている。そしてこれは正に私の言っている「現場力」のことだと思います。結局、実行力で差がついているのです。戦略がどんどん同質化してく中で、実行能力を高めていく、実行能力が高い会社が勝つ。そしてそれをコンサルタントはどう支援していくのか。まさにそれは、NTTデータが得意なITの活用や現場をサポートする仕組みなどだと思います。

経営トップが関与する「CEOアジェンダ」や「トップイシュー」から始まり、現場力をサポートできる仕組み作りまでどうやって一気通貫で落としていくかが、今切実に求められているのだと思います。

山口

デジタル時代では企業の行動のスピードも求められていますが、現場力をどうやって鍛えるか、または現場力を高める文化をどう創造し、作っていくかが今後のポイントだと思います。そのあたりはいかがでしょうか。

遠藤

経営そのものをアジャイル化していく中で、現場力がなかったらアジャイル経営などできるはずもないのです。毎回上にお伺いを立てて物事を決めていくのではなく、現場が自分たちで判断する自律的な組織になっていかなければいけない。そういう組織に日本の企業は変わっていかなくてはいけません。そのために必要な仕組や教育は何なのかというところも、実はすごく重要なコンサルティング領域なのだと思います。企業は自分たちだけで変革するのは難しい。そういう意味で、組織能力の開発のようなことをどう支援していくのか、単なる人材育成だけではなく、その仕組みなども含めて、すごく大事になってきていると感じます。

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国産コンサルティングファームの必要性

山口

NTTデータ経営研究所は国産のコンサルティングファームとして、グローバルを理解した上で国産ならではの価値を高めたいと考えています。そういう意味で、遠藤さんが長年率いられたローランド・ベルガーが、ドイツを起点に世界規模のコンサルファームに成長された経験についてもぜひお話を伺えますか。

遠藤

私は創業者のベルガーさんに採用され、2000年にローランド・ベルガー日本法人の社長になったのですが、彼が最初に話してくれたことがあります。彼は元々BCG出身なのですが、BCG時代にボストンでコンサルティングをしている際に、ドイツの会社に対して「どう考えてもBCGの考え方はドイツ企業には合わない」というような提言をしていたそうです。そして、米国の考え方をそのままドイツの会社に持ち込もうというのは正しくないと考えるに至った。彼はその後BCGを辞め、出身地のミュンヘンに戻り、たった一人でローランド・ベルガーを立ち上げました。ドイツ発のコンサルティングファームを作るということをゼロから始め、グローバルファームにまで成長させたのです。

彼に言わせると、やはり経営というのは、それぞれのお国柄によって違うということがあるのだと。特にドイツ企業は日本企業に近いところが多くあります。例えば利益一辺倒ではなく、長期的な経営、地域との共生、それから人や現場を重視するという点は日本と似ています。そうなると当然、経営の優先順位やバランスも米国企業とは変わってきます。また、ドイツにはファミリービジネスがたくさんあるのですが、非上場の会社が多いため、別に株主のことばかり気にする必要もないということです。米国のコンサルティングファームは、基本的に上場会社であるクライアントの株主のことを見ているが、そういうやり方でドイツの企業がグローバルでやっていけるとは思わないと考えたのだそうです。

その後、ドイツの自動車企業などがグローバルで通用し、成長していったのは、ベルガーさんの手腕だと言っても過言ではないと言うぐらい影響力を持っていました。

やはり、その国を代表するコンサルティングファームというのは当然あってしかるべきで、その国の実情に合った戦略を一緒に考え実行していくというのが、私は日本にも絶対必要だと思っています。では、それができるポテンシャルを持つ会社があるのかというと、NTTデータ経営研究所ぐらいしか私は思い浮かびません。そして、そこを目指して欲しいなというのが私の思いでもあるし、ぜひみなさんに目指してもらいたいと思っています。

ちなみにベルガーさんはいくつかの日本企業のアドバイザリーボードのメンバーを務めていたので、日本企業の実情もよく分かっています。来日時に会食すると「とにかく日本企業に合った戦略を提案しなさい。米国の考え方が必ずしも正しいわけではない」といったアドバイスをしてくれました。

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深さ、広さ、高さ ― コンサルタントが若いうちに習得すべきことは?

山口

今、多くの若い人がコンサルタントになりたいと思っています。遠藤さんからは先ほどもコンサルタントの心構えや武器などについてお話いただきましたが、他にコンサルタントが若い時にやっておくべきことなどについてアドバイスいただけますでしょうか。

遠藤

基本的にコンサルタントという仕事は、プロフェッショナルだと思っているので、プロを目指さなくてはいけないと考えています。それこそプロのサッカー選手とかプロ野球選手などと一緒で、要はフィールドできちんと力を発揮し、結果を出さなければなりません。

そうなると、やはり自分ならではの武器を磨くことが大事だと思います。自分の持っている専門性や強みをもっと磨くことです。一方で、パートナーなどの上位クラスになると、残念ながら専門性だけでは経営者と対峙でません。専門性とは要は知識ですので、その知識が新鮮なうちは役に立ちますが、どんどん陳腐化するし、一般化してしまう。そう考えると「経営コンサルタントとしての力」を磨かなくてはいけないのです。それは、専門性ではなくて、総合性だったり統合性という目線の高さが重要になってきます。そのためには、大きく3つの軸があると思っています。

まず初めは「深さ」です。何か専門性ある「深さ」を持つこと。例えば私だったら現場力にこだわり「深さ」を極めます。次に「広さ」も大切です。「これしか知りません」というのはいずれ通用しなくなります。自分の守備範囲だけではなく他の事もちゃんとできる、まさに大谷選手みたいに投げても打って良しっていうような二刀流の「広さ」も必要です。そして、最後にもう一つ大事なのは目線の「高さ」です。コンサルタントは「深さ」「広さ」「高さ」という三軸で自分を磨いていく必要があります。

知識は深いが、広さや高さが足りないというコンサルタントでは、一流にはなれません。一流コンサルタントは三軸が備えられている。特に「高さ」については経営者と直接対峙することによって経営者から学ぶことも多い。経営者の目線については経営者が何を考えているのかを実際に考え、磨いていくものなので、常に意識し、努力することが大事だろうなと思います。

山口

広さという意味では、例えば教養的なものとかも含まれるでしょうか。

遠藤

例えば「テクノロジーのことしか知りません」という人がいるとしましょう。しかし、この人がマーケティングや戦略、組織論を勉強することによってテクノロジーの本当の活かし方が分かってくる。そのように自分の専門性を持った上で、経営という間口の広いところに興味を持っていく事は広がりを生みます。業界で考えても、例えば自動車業界しか知りませんではなく、他の業界にも興味をもって広げていく。今や業界の垣根はどんどんなくなっているので、今までのようなインダストリー別という考えの良し悪しは、今後議論されて来ると思います。

翻って、では自分はどうだろう?と考えることは重要です。自分の縄張りはあまり狭くしない方がいいし、広げていかないと仕事も面白くないと思います。結局経営トップが悩んでいることは、全部共通するので、若いときは深さも大事だけど、広さと高さというものを自分で意識しいかないと、コンサルの仕事としても広がりがでてこない。

また、私がいつも言っているのは、プロというのは「絶対価値」であるということです。サラリーマンは相対価値ですので、組織の中で比べられ、振り落とされて残っていくものですが、コンサルタントは絶対価値なので、その人にしかできないこと、自分ならではの価値というのを追求していくことができる。これがこの仕事の醍醐味だと思います。

私がローランド・ベルガーにいた時に社員に言っていたのは、「例えば100人コンサルタントがいたら、100人みんなパートナーになってもいい。パートナーは10人しかなれないなんてことは全く考えてない。100人全員がパートナーになってくれた方が会社も嬉しい。みんなパートナーになって欲しいけれども、そのためには、自分で自分を磨かないことにはパートナーにはなれない。別にAとBを比べてはいないので、AはAのやり方で絶対価値になればいい、BはBのやり方で絶対価値になればいい。それがコンサルの基本だ」という事です。

やはり、自分の絶対価値が何なのかを若いうちに見極め、それを磨いてくということが重要だと思います。

最後に

山口

ありがとうございます。遠藤さんは多くの書籍を出版され、しかも中国語や韓国語で翻訳されているということは、やはり記載されている内容が普遍的なのだと思うのです。これだけの書籍を執筆されるエネルギーはどこから来るのでしょうか。

遠藤

コンサルタントの仕事はあくまでも黒子です。例えば、良い仕事をしても「このクライアントのコンサルティングを実施したのは私だ」なんて言えないですよね。もちろん、黒子の仕事は黒子の仕事ですごく面白いのですが、自分の経験を何とか世の中に発信し、少しでもいいから残しておきたいという気持ちがありました。幸い私は書くことがあまり嫌いではないので、その結果が今に至っています。

面白いのは、「現場力」の本は中国でもすごく読まれています。私は中国のビジネススクールでも教鞭をとっていましたが、15年ぐらい前は現場力なんて全く関心は持たれていませんでした。しかし私の本が中国語で翻訳され、読まれるようになってから、ビジネススクールに来る経営者も私の本を読み、関心を持ってくれるようになりました。ある日本の経営者に、「今、中国の経営者は現場力に関心を持っている」と言ったら「遠藤さん、日本の国際競争力が劣化するから、現場力をあまり輸出しないでくれ」と言われましたが、そのぐらい日本の現場力は実はすごく普遍的なものだと思っています。

山口

本日は、ありがとうございました。最後にひとこと、当社への期待をお願いできますでしょうか。

遠藤

NTTデータ経営研究所が今後日本という国の中でどのような役割を果たしていくのかとても興味があります。技術や社会課題も分かっていて、NTTデータという大きなバックボーンもあり、上流から下流まで一気通貫できるコンサルタントがいる。そういう会社がこれから更に飛躍して、グローバルファームと肩を並べる日本発のTop-tierコンサルティングファームへと成長することを大いに期待しています。

遠藤 功 氏 プロフィール

Profile
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Endo Isao
遠藤 功
株式会社シナ・コーポレーション 代表取締役

早稲田大学商学部卒業。米国ボストンカレッジ経営学修士(MBA)

三菱電機、複数の外資系戦略コンサルティング会社(ボストン・コンサルティング・グループ、アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)、ブーズ・アレン・ハミルトン(現PwCコンサルティング)、ローランド・ベルガー)を経て、現職。

2006年から2016年まで早稲田大学ビジネススクール教授を務めた。2020年6月末にローランド・ベルガー会長を退任、同年7月より「無所属」の独立コンサルタントとして活動している。多くの企業で社外取締役、経営顧問を務め、次世代リーダー育成の企業研修にも携わっている。

株式会社良品計画社外取締役。SOMPOホールディングス株式会社社外取締役。株式会社ネクステージ社外取締役。株式会社Epsilon Molecular Engineering社外取締役。株式会社ドリーム・アーツ社外取締役。株式会社マザーハウス社外取締役。株式会社ガラパゴス顧問。Unipos株式会社顧問。静岡県ラグビーフットボール協会理事。

15万部を超えるロングセラーである『現場力を鍛える』、『見える化』(いずれも東洋経済新報社)をはじめ、『生きている会社 死んでいる会社』、『現場論』(いずれも東洋経済新報社)、『新幹線お掃除の天使たち』(あさ出版)、『ガリガリ君の秘密』(日本経済新聞出版社)など、ベストセラー書籍多数。7月に『「カルチャー」を経営のど真ん中に据える』(東洋経済新報社)を出版。

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