1. はじめに
「うつは甘え」
一度は耳にしたことのあるフレーズだろう。精神障害を理由に、休職や時短勤務をしている人を見て、心の中でちらついたこともあるのではないだろうか。
うつ病・双極性障害・統合失調症・発達障害…見た目は元気そうなのに、なぜ彼らは他の人と同じように働かないのか。自分ばっかり頑張っているような気がして、絶対に思っていても口には出せない「ずるい」という感情に自己嫌悪や葛藤を感じる人も少なくないのではないだろうか。「障害」であると頭ではわかっていても、どうしても当人を責めたくなる気持ちが捨てきれないからだろう。
しかし、上述のような精神障害は誰でも当事者になり得る。自分に限らず、上司や同僚、部下などが罹患するといった状況も、もはや他人事ではない。では、身近になりつつある精神障害とどのように付き合っていけばいいのだろうか。「うつは甘え」「メンタル不調の人には仕事は振らない」といった過剰なおよび過少な期待は、本人および周囲のモヤモヤを燻ぶらせる一大要因となり得る。
本稿では、うつ病をはじめとした精神障害に対するそのようなスティグマを科学的視点から検証する。互いに生きづらさを感じる当事者たちのモヤモヤの背景にあるのが、誤った情報に基づいて形成された偏見なのであれば、その葛藤や苦しさは正しい知識を身につけることで少しでも和らぐかもしれない。
さらに、「福祉」の観点に加えて「経営・事業」の視点から、会社の成功のためにも精神障害との共生が不可欠であり、復職支援や職場環境の構築が利益になることを提案していきたい。
なお、本稿においてはうつ病を中心に他の障害についても触れながら精神障害領域を幅広く扱う。近年は複数の障害が併存するケースも多く、うつ病に限定せずさまざまな障害について検討する必要があるためである。
2. 公衆衛生課題としての精神障害が社会経済に与えるインパクト
今日では世界中で精神障害が公衆衛生課題における重要項目になっている。精神障害は疾病による負担が大きく、中でもうつ病の障害調整生命年(※)は1990年から2019年の30年間で順位は19位から13位まで上がった3。世界保健機関では、2030年には精神障害が世界の公衆衛生負荷の主な原因になると予測している4。しかし、パンデミックを経て精神障害の罹患率がさらに増えた5ことから、この流れは加速するはずである。
日本でも現在500万人以上の精神障害患者(令和2年時点)がおり6、生涯を通して約5人に1人は精神障害を患うと言われている7。
特に問題なのが、経済を支える、働く世代における精神障害の存在感の巨大さである。20代〜50代全ての世代で障害調整生命年TOP10の要因の中に自傷行為が、また、50代後半を除いた全ての世代でうつ病が入っている。20代前半と30代前半に関しては、障害調整生命年TOP10の要因のうち半分が精神関連の障害である(図1)8。
Birnbaumら(2010)による調査9では、労働者における大うつ病(うつ状態が続き、躁状態がほとんどないこと)の罹患率は7.6%と報告されており、そのうち適切な治療を受けていたのはわずか20%ほどであった。症状が深刻であればあるほど仕事の生産性は低く、このような高い罹患率と低い治療率による企業への経済的負担は大きい。
同論文では、1万人の従業員がいる企業を想定したとき、労働者の仕事パフォーマンスの低下による雇用主の経済的損失は年間2億円を超えると予測している。
精神障害の公衆衛生負荷、そして企業における経済的負荷を加味すると、もはや精神障害は無視できるものではない。
3. 職場に存在する精神障害へのスティグマとその影響
Disabled by society, not by our bodies ~ 障害をつくるのは社会であって、身体ではない
これは、障害者研究をおこなっているTom Shakespeareが彼の論文10の中で使ったフレーズだ。社会モデルとも呼ばれる考え方で、「障害を抱えている身体そのものではなく、障害のある人を取り囲む社会の仕組み・人々からのスティグマが彼らを障害者たらしめている」という意味である。
スティグマとは、ギリシア語に由来する「烙印」という意味で、日本語では「差別」や「偏見」などと訳されることが多い。精神障害など個人の持つ特徴に対して負のレッテルを貼られ、周囲から否定的な扱いを受けることを指し、この周囲からの不当な扱いは自己の尊厳の低下を引き起こすことにもつながる。
障害があるとされた人は、周囲から排除あるいは過小評価をされやすく、周囲からのこの「スティグマ」によってあたかも自分が無力であるかのように感じてしまう11。つまり、社会によって、障害のある人が、その障害以上に社会に参加しにくい構造が作られてしまっているという考え方である。
Pescosolidoら(2010)は、社会人の47%が大うつ病を持つ人と仕事で密接に関わることを望まず、30%が交流したくないと思っていたことを報告12している。ほかにも、ある男性が32社の採用試験の半分には精神科に入院していたことを公表、もう半分には公表せずに応募したところ、公表しなかった時の方が面接官の反応が友好的で採用にも協力的であったという13。
精神障害に対して否定的な考えや感情をもち、それらが定着することで患者に対する差別的な行動がうまれる。しかし、その否定的な考えや感情は、ただの思い込みや認識不足に基づいている可能性もある。精神障害のある人は暴力的で危険であると思われがちだが14,15,16、35,000人近くのデータを用いて精神障害と暴力の関連性を検証した研究グループは17、精神障害があることは暴力の独立した予測要因にならなかったと結論づけ、かつて持たれていた精神障害が暴力の主要な要因であるという認識を否定した。
風邪や怪我、がんの発症などは周囲から体調を気遣われることが多いのに対し、なぜ精神障害は理解を得にくいのだろうか。「甘え」のように思われ、自己責任であるとまで言われる疾患は他にない。風邪、怪我、がんなどの傷病に関しては、ある程度の自己責任な部分も、逆にそうでない部分もあること、症状の重さに個人差や変動があることを理解できるが、精神障害に関してはそうした側面があることが理解できない。
言い換えれば、「本来の定義的な怠け」を連想して疾患を本人の責に帰してしまったり、症状の有無をゼロイチで表現してしまったりする傾向があり、障害の全部を本人の甘え・怠慢だと思ってしまう。そして、このような思い込みがスティグマの背景にあると指摘されている14。
他にもスティグマがうまれる主な要因として、回復への期待の低さ16、症状だけでなく発症の原因も本人にあるという自己責任論15など、誤解を含む疾患に関する知識不足16が挙げられている。
そして、前述したように、このようなスティグマは精神障害のある人の障害の要素をさらに強めてしまう。これには周囲からのスティグマに限らず、本人が自分自身へ向けるセルフスティグマも含んでいる。セルフスティグマとは、周囲の精神障害に対するイメージを障害のある本人が自己へ当てはめ、自分に対してネガティブなイメージを持ってしまうことである。
精神障害のある人において、周囲からのスティグマを懸念している人ほど、また、セルフスティグマの強い人ほど、対人関係やタスク管理などの仕事パフォーマンスが下がり、欠勤率が上がることがわかっている18。双極性障害または統合失調症のある患者264名を対象にした研究では、スティグマの強い人ほど7ヶ月後の家族以外の人との交流における社会適応能力が下がることを報告した19。他にも、スティグマがあることが治療を受けるハードルとなり、回復の見込みが制限されてしまうこともある20,21。
スティグマの存在が周囲へ助けを求めるバリアとなり、必要とするサポートを得られなくなってしまう。結果として、自身の社会経済的能力を低下させることにつながってしまうのだ。
スティグマは患者本人のみならず、職場全体にも悪影響を与えうる。スティグマによって本人の仕事の生産性や社会性が制限されれば、結果として企業全体の損失になりかねないからだ。欠勤率が上がれば周りの人間がカバーしなければならないし、対人関係の構築能力が下がれば一緒に働く人の負担は増えるだろう。治療を受けるハードルとなっていれば、早期の治療を受けられず、貴重な人材を失うことになるかもしれない。
スティグマの存在が、当人そして周りの人への負担を大きくしているのである。
4. 精神障害のある人は弱く、甘えた人なのか ~スティグマの検証~
それでもスティグマの内容が事実で、精神障害が本当に本人の弱さに起因する自己責任な問題なのであれば「そうした精神障害のある人への見方にも妥当な部分もあるはずだ」と主張したくなる人もいるだろう。ここでは、精神障害へのスティグマの中身を科学的研究を基に検証する。
まず一点目は、精神障害の発症リスクの多くが本人のコントロール外であり、疾患の発症が本人の責任によるものではないということを話すとともに、そのようなスティグマをうむ要因について考察する。
二点目は、精神障害のある人は甘えて過ごしてきた弱い人であるというスティグマに関して、精神障害のリスクと認知能力との関連性に焦点を当てながら検討していく。
三点目には、精神障害の発症=もう仕事はできないという等式は成り立たないことについて、症状回復後の仕事のパフォーマンス力に関する研究をもとに議論する。
4.1. 精神障害発症のリスク要因とそれらがもたらす症状 ~発症自己責任論の検証~
4.1.1 精神障害発症のリスク要因は本人のコントロール外であることが多い
精神障害の発症要因はそれ自体がまだ不透明な部分が多く、発症リスクは「これがリスクである」と明言できないほど多岐に渡り、一つ一つの貢献度も大きくはない。ただ、遺伝・生物学的なものと環境・社会的なものとに大別され、その多くが本人のコントロール外であることは間違いなさそうである。
まず遺伝・ホルモンなど生物学的な要因によるリスクについて紹介する。例えばうつ病の家族歴のある人はそうでない人に比べて有意に発症確率が高いことが報告されている。Kendallらはレビュー論文22のなかで、家族歴に関しては遺伝要因と環境要因の両方が共存しているものの、双子研究や養子縁組研究による結果を検討し、家族環境の共有による家族歴とうつ病リスクの関係への影響は比較的小さく、遺伝による影響は変わらず大きいと結論づけた。
他にも、うつ病発症のリスク予測因子として、抗うつ薬のターゲットとしても著名なセロトニンを調節する遺伝子を中心に膨大な数の遺伝子が報告されており、リスクのある遺伝子によるうつ病発症への影響が指摘23されている。
また、女性ホルモンの変動は女性のうつ病発症に影響を及ぼすことがあり、月経前や産後などにはうつ病発症リスクが上がることがわかっている24。うつ病の発症にはさまざまな社会的要因も関係しているため、全ての性差の要因を生物学的な違いに帰着させることはできないが、大うつ病は女性(12.43%)の陽性率の方が男性(5.83%)よりも高いという3,786名を対象としたスクリーニング研究結果も報告されている25。
他にも、幼少期の経験や置かれている環境も精神障害の発症と関連していることが分かっている。教育水準が低い人は高い人よりも26、また、幼少期に辛い経験をした人はそうでない人よりも27うつ病発症のリスクが高い。
虐待やネグレクトのような幼少期の逆境的経験によるトラウマは、ストレスに関する遺伝子発現を後天的に修飾し、そのことがストレス耐性、そして精神障害の発症リスクに影響を与えることも指摘されている28。
また、職場における緊張感29や、都会に住むことで感じる社会的ストレス30などもうつ病発症のリスクを高める。
上にあげた事象で発症原因のすべてを説明することはできないが、影響することは事実のようである。だとすると、先天的な生物学的リスクは自ら選択して避けられるものではないことは言うまでもないし、幼少期の環境はおろか、現在置かれている環境でさえも変えることは難しい。
そもそも、環境要因によってうつ病発症のリスクが高まる場合、本人よりもその環境を作っている周りや社会に問題があるのではないだろうか。精神障害の発症を本人の責任であるように感じるのは、こうした発症原因の部分に関する理解が進んでいないことも大きく貢献しているように感じられる。
4.1.2 精神障害の原因は目には見えない~目に見える症状のみへの注目がスティグマを生む
上述のように精神障害のリスクとなる因子は多数存在し、その多くは本人が選択できるものではない。しかし、それが「見えにくい」のがこの領域の大きな特徴でもある。その因子が逆境的経験などであれば尚更、それらが心(脳)へ刻むトラウマ(精神的外傷)は外から見えるものではないし、血圧や血糖値のように客観的に測ることもできない。
しかし、その「見えないトラウマ」が引き起こす「症状」は目に見えやすいため、多くの人は「メンヘラ」「コミュ障」というような言葉を用いて、精神障害をあたかも現在のその人特有の(半ば自ら選んだ)人格として忌避することがある。
医療の世界でも、原因が明確でなくかつ客観的計量が困難であるが故に、精神障害は「目に見える今の症状」をベースにした診断が主流である。「目に見える症状」、つまり風邪などでいう咳や発熱は生体の防御反応であり、症状自体は正常で生体に有益なものである場合もある(ノロウイルス感染時のウイルスの対外排出は症状を止めるのに合理的であると聞いたことがあるだろう)。
また、それらは行き過ぎると医学的な対処が必要なこともある。そのため、まず症状による悪影響を評価し、対処が必要な場合には症状を抑えるだけでなく、症状を引き起こす原因となっているものを特定したうえで治療をするのが通常の医学のアプローチある。それに対し、精神障害の診断では「症状」の「原因」は明らかにしない・できないことがほとんどである。
精神障害の診断基準として現在スタンダードとなっているDSM(The Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders; 精神障害の診断と統計マニュアル)は、「症状」の寄せ集めと言われている31。「今ある症状」がどれだけマニュアル上の「症状」に当てはまるかをもとに診断を行うのである。
目に見えるその「症状」さえあれば、一人の人物に対して多くの障害名が並ぶこともあり、このような現在の精神障害診断を批判する声もある31。
このような診断方法はVSAD(Viewing Symptoms As Diseases; 症状を疾患と見る)と呼ばれている。疾患とは、ある症状を引き起こす体の不調のことを示しており、ここでいう「症状の原因」に近い単語である。だからこそ、表に出てくる症状そのものを疾患として診断するこの潮流を、進化精神医学者のRandolph Nesseは、精神医学が陥りやすいミスであると警告している32。
インフルエンザの症状である咳や熱を引き起こす疾患は、肺炎や他の風邪ウイルス感染など他にも多くの候補がある。それらを鑑別しないと効果的な治療は選択できないにも関わらず、症状だけで診断名・治療方法を決めてしまっているのと同様なことがおきているという指摘だ。
風邪でいう、「目に見えない原因」であるウイルスに反応して起こる生体防御反応が「目に見える症状」である咳ならば、精神障害でいう、暗黙のトラウマを原因とした生体防御反応が、明示的なうつ症状やコミュニケーション障害などの症状になる。
このように原因と症状を分けて考えると、精神障害分野特有の「目に見えるものだけ」にとらわれやすくなる傾向から脱却し、自己責任であるという感覚は薄れるのではないだろうか。
そして医科学は、症状緩和のための対症療法ではなく、原因へアプローチする根治療法を目指すべきである。幸いにして脳にも可塑性という変わる力がある。脳内では、ニューロン(神経細胞)がシナプスを介して繋がっており、それらが電子回路のようにネットワークを形成することで情報を伝達している。
電子回路と大きく違うのは、この神経細胞を繋げているシナプスがその人の経験によって強くも弱くもなるという点(=可塑性)である。逆境的経験は、この可塑性により精神障害を発症しやすいものへと脳を編成してしまうが(=トラウマ)、一方でその可塑性を利用して脳の再配線を行えば、対症療法ではない精神障害への新しい根本的な介入となることが期待される。これらの可能性については、本稿の後半にあるニューロテクノロジーの章で扱う。
4.2. 精神障害のリスクの高い人はむしろ仕事ができる可能性 ~能力へのスティグマの検証(発症リスク)~
近年、人間の脳の発達・高度化が精神障害のリスクと結びついているという指摘がなされている。進化の過程で思考・学習ができるようになったことで、精神障害のリスクを負うようになったというものだ。この論点を広げると、思考・学習といった仕事で必要不可欠となってくる能力が高い人ほど、精神障害発症のリスクも高まるとも言える。
ここでは、進化論的精神医学の観点から見た精神障害のリスクを検討しながら、「甘えた人が弱い心を持っていたから精神障害を発症した」というスティグマへ反駁していく。
もちろん精神障害のある人全員が同じように高い仕事に関する能力を持っているというわけではない上、仕事ができることは人を評価する要素のひとつに過ぎないが、職場で必要とされる能力の高さと精神障害のリスクの関係性を示唆することで、精神障害を理由に彼らを職場から排除してしまうことが会社にとっての損失となる可能性を指摘していく。
4.2.1.人類の認知機能の発達と併せて背負った精神障害のリスク
Polimantiら(2017)は、人間の脳進化における遺伝子選択の結果によって残ってきた遺伝子が自閉症スペクトラム症(ASD)の発症に関わるのではないかという仮説を研究した33。ASDを持つ人の遺伝子情報について、アルゴリズムを用いて遺伝子選択による生き残りの確率を予測したところ、生き残り確率の高い遺伝子とASDの発症リスクを上げる遺伝子との間に相関関係がみられた。
つまり、人間の進化に伴い選択されてきた遺伝子が、ASDの発症リスクを高めている可能性が指摘されたのである。また、ASDの発症リスクを上げるとされる遺伝子が神経系の発達に関連していること、ASDの遺伝が学歴や幼少期の知能など認知能力に関する要素と強い相関関係があることも併せて報告された。
以上から、研究グループは、「ASDのリスクとなる遺伝子は神経発生や認知能力の発達に関与し、人類の進化の過程で正の淘汰を受けた」という仮説を提示した。
また、片方のみが双極性障害を持つ双子(双子A群)と2人とも障害のない双子(双子B群)と比較した研究34がある(図2)。双子の一方が双極性障害を患っていて、もう一方が患っていない場合、障害のない方は双極性障害ではないが、双極性障害患者と同じ遺伝子・生活環境を持っていることになる。
興味深いことに、この双子A群の障害のない方の片割れは、2人とも障害のない双子B群よりも言語学習能力や社交性が高いことがわかった。その上、それらの能力は遺伝することも報告された。つまり、双極性障害患者の家族は言語機能と社交性の領域において特有の遺伝的利点を持っていて、それを受け継いでいっていると解釈できる。
これらの研究からもわかるように、精神障害のリスクを高める遺伝子は人類の進化における自然淘汰によって生き残ってきた可能性がある。高い認知力の発達と共に精神障害のリスクを背負ってきたこと、精神障害のリスクを高める遺伝子は他の領域で有利に働くことが示唆され、精神障害は高い思考や学習などの認知能力と切っても切り離せない可能性が出てきた。
4.2.2 精神障害のリスクの高い職員は会社に必要不可欠な人材
高い能力とその副産物であるかもしれない精神障害リスクは、実際の生活においてどのよう表れているのだろう。ここでは、仕事に関する能力との関連が指摘されている2つの要因について紹介する。
ひとつ目は、物事に対して過度に高い目標を設定し、完璧な状態を目指して努力を行う特性を指す完璧主義傾向だ。この完璧主義傾向は学業成績35、スポーツ36、単純な実験課題37などさまざまな分野において高いパフォーマンスとの正の相関が報告されている。大学生を対象に彼らの完璧主義傾向と実験タスクのパフォーマンスについて調べた実験37においては、完璧であるための努力をする参加者ほど短時間で正確にタスクへ回答をし、高いタスク遂行能力が確認された。
しかし、この完璧主義傾向は神経症的痩せ症38やうつ症状39の脆弱要因でもあり、完璧主義的思考によるやる気の増加はうつ症状の増加を予測することがわかっている。この研究から、高いタスクパフォーマンスや、やる気を持っている人ほど障害のリスクが高い可能性が指摘された。
ふたつ目はインポスター思考である。インポスター思考とは、優秀な人や高い評価を受けている人などが感じる「知的にせもの感」であり、本当は実力があるにも関わらず、「自分には能力がないのに、自分に能力があるかのように周りの人をだましている」という感覚に陥ってしまう思考だ。
米国の会社員155名を対象に行われた調査40によると、インポスター思考を持っている人は対人スキルが高いことがわかっている。仕事場では欠かせない高い対人スキルを持つ彼らだが、このインポスター傾向もメンタル不調のリスク要因のひとつだ。インポスター傾向は不安感やうつ症状との正の相関が報告41されており、うつ病のみならず、さまざまな精神障害との関連性が指摘42されている。
このように、職場に欠かせない高いタスクパフォーマンスや対人スキルを持つ人は、精神障害のリスクも高いことが示唆されている。他にも、起業家における高い精神障害の罹患率43や、双極性障害のある人は障害のない人よりも創造性や独創性に優れるとの報告44もあり、仕事に関する能力が高いことと精神障害のリスクは同時に存在する可能性が高そうである。
つまり、精神障害のある同僚は弱く、甘えているのではなく、むしろ人一倍会社に貢献できる人材である可能性が高いのだ。
4.3. 精神障害を発症した人はもう仕事はできないのか 〜能力へのスティグマの検証(発症時・回復後)〜
精神障害、特にうつ病を発症した人に「がんばれ」と声をかけてはいけない。復職してきてもあまり仕事をふらず、簡単な仕事を与えて早めに帰らせた方がいい。
本当だろうか?
そうした考えは、本来まだ活躍できる精神障害のある人々を無力にさせるスティグマの危険ではないだろうか。前述したように、精神障害のある人は過小評価されやすく、その周りからの評価によってあたかも自分が無力であるかのように感じてしまう。精神障害を発症した人も、彼らのペースで「がんばれる」ことはあるのではないだろうか。
4.3.1. 精神障害を発症した人は「使えない」のか
精神障害のある人は使えないというのは偏見である。現に、自閉症を患う人は周囲から否定的な態度や差別を受けやすいが、いざ働き始めると雇用主から好意的な評価を受けるケースが多いことが指摘されている45。
他にも例えばうつ病を持っている人であれば、否定的な感情を抱えながら過ごす日々が多い。仕事に関連するいくつかの側面で、ネガティブな気分状態にある人はそうでない人よりも力を発揮することが報告されている。例えば、気分が落ち込んでいる人はそうでない人よりも高い共感力を持つ46。クライアントなど、誰かの要求に応えるような仕事であれば、そのクライアントへの共感力は相手の要求をより正確に把握する有益な能力だ。
また、Forgasら(2017)によるレビュー論文47では、ネガティブな感情を持っていることによる利点を過去の実験を元にいくつか紹介した。ネガティブな感情を持っている人は、そうでない人よりも思い込みなどバイアスによる影響を受けにくく、より正確な判断ができる。悲しみまたは喜びの感情を持った人に、著者の写真とともにエッセイを見せてエッセイを評価してもらったところ、悲しみを感じていた人は喜びを感じていた人よりも、エッセイ著者の外見に影響を受けることなく公平にエッセイを評価した。
加えて、ポジティブな感情を持っている人は自己主張的なコミュニケーションが多いのに対し、ネガティブな感情を持っている人は丁寧かつ礼儀正しいコミュニケーションをとる傾向がある。場面に応じて、後者のコミュニケーション方法の方が良い結果をもたらすこともあるはずだ。さらには、ネガティブな気分を持っている人の方がより忍耐的にタスクと向き合う、与えられた情報に対して懐疑心を高めるため騙されにくい、記憶をより正確に保持できるといった実験結果も紹介されている。
双極性障害患者、クリエイター職の健常者、非クリエイター職の健常者を対象にいくつかのワーキングメモリタスクを行った研究48では、発散的思考力と独創性に関するタスクで、双極性障害患者は非クリエイター職の健常者よりはるかに高く、かつクリエイター職の人並みの好成績を出した(図3)。
このように精神障害を発症した後でも、むしろ優れたパフォーマンスを出せる分野が存在するのに、そうした機会を奪うようなスティグマは一体誰のためになるというのか。
とはいえ現実は厳しい。日本で行われた双極性障害患者対象の就労調査分析では、患者の就労率は50%にとどまり(生産年齢人口の平均80%程度)、実際に症状がある患者の就労の難しさが明らかとなった49。
一方で、教育や家族との同居など周囲の支援があることや50,51、自分の特性に合った内容やペースで仕事をすること、仕事を続けることを応援してくれる人が存在することが就労継続の成功につながることがわかっている。
さらには、少しでも仕事をできているという感覚を得ることで自信や希望を持つことができ、健康面にもポジティブな効果があることもわかっている52。うまく本人の能力と就労環境のバランスをとることで、社会参画の道筋を残すことは本人にも企業にもメリットになるはずである。
4.3.2. 症状と共に仕事の能力も回復する
疾患の発症によって仮に仕事のパフォーマンスが落ちていたとしても、症状の回復に伴いパフォーマンスが戻ってくることがわかっている。米国ミネソタ州にあるメンタルクリニックの外来患者を対象に、うつ病治療前後のうつ症状と仕事の生産性の変化を調べた研究53では、うつ病治療後のうつ症状の有意な減少とともに、仕事の生産性が有意に上がったことがわかった。
治療開始前のベースラインから6ヶ月間において、うつスコアが1ポイント低下するごとに生産性スコアが1.87ポイント上昇し、全体として平均で9.35ポイント(11%)の生産性改善が確認された。これは、週あたりの生産性が約4.4時間分増加することに換算できる。精神障害を発症した人がもともと人一倍仕事のできる人であった場合、その人が無事復職をして今までのように働けるようになることは会社にとって大きなメリットだ。
さらには、災害やがんなど精神的苦痛を伴うライフイベントを経験した後におこる心理的変化として、ポストトラウマティックグロース(PTG)という現象がある。PTGとは、耐え難いストレス体験をした後に、そのストレスを乗り越え回復するだけでなく、むしろ成長を遂げ、ポジティブな心理的・身体的変化を経験することだ。トラウマを経験した人の40~70%はPTGを経験すると言われており、具体的な変化には、人生の満足度や自己肯定感の向上、抑うつ症状の減少、健康行動の増加、薬物使用頻度の減少、免疫強化などがある54。
PTGを経験するきっかけとなるトラウマには暴行事件や災害などに限らず、がんや脳卒中といった疾患経験なども含まれる。精神病性障害回復後のPTG経験について検討した論文55では、精神病性障害を発症した77名の実験参加者のうち、84%にあたる64名が、「自己肯定感が上がった」「共感力が上がった」「人間関係が改善された」などを含む何らかのPTGを経験していた。
これらの報告にもあるように、耐え難い出来事や疾患の発症というストレスフルな出来事を通じて、より自己理解が深まり、他者のために動く意欲が増えるといったポジティブな効果も生まれるのである。
もし精神障害を発症した人がPTGを経験することで自己理解を深め、他者のために動くことができ、周囲と良好な人間関係を構築することができるようになって帰ってきた場合、その職員が会社にもたらす利益は計り知れない。
5. 精神障害と共生する職場環境とは
精神障害は本人の甘えであるというスティグマについての反証例に続いて、本人ではなく周囲の環境、ここでは復職支援プログラムや最新のテクノロジーなど職場環境側が可能な取り組みを概観していく。
5.1. 復職支援プログラムの導入
復職支援プログラムの導入は企業へ社会的価値を付与するだけでなく、経済的利益をもたらす可能性がある。過去の文献情報をもとに、復職支援プログラムにかかるコスト、プログラムがある場合とない場合の患者の症状改善率、発病によるコスト、症状改善時の利益などのパラメーターをもとにアルゴリズムを作成し予測計算を行った研究56では、復職支援プログラムがあることによってもたらされる利益が、プログラムそのものにかかるコストをはるかに超えていた。
このことから、研究グループは復職支援プログラムを導入することは会社にとって大きな経済的利益をもたらすと結論づけた。
有効な復職支援プログラムを持つことの経済的メリット、復帰した職員によってもたらされる大きなリターンを考慮すると、復職を会社で支援することは決して慈善活動ではなく、会社自身の成長を促す効果の高い投資となる。しかし、令和2年時点で復職支援プログラムを持っている日本企業は全体の24.8%と4分の1にも満たない57のが現状だ。復職支援プログラムの開発や導入は、今後の日本企業に必要な取り組みと言えるだろう。
5.1.1. 新たなテクノロジー(ニューロテクノロジー)を利用した復職支援の可能性
現在、復職支援プログラムの多くは、認知行動療法や行動活性化療法、心理教育療法などの心理療法によるものが中心だ。しかし、Finnesら(2019)のレビュー58によれば、これらの心理療法による復職成功への効果は有意ではあるものの、小さいことがわかっている。そこで、筆者らの専門分野であるニューロテクノロジーの中でも、ニューロフィードバック(NFB)トレーニング(※)を活用した、復職に役立つ介入について検討する。
まず初めに、精神障害によって休職した人が最初に目指すべきことは症状の改善だ。ここでは、うつ病を例にNFBトレーニングを用いた症状改善の介入例を紹介しよう。現在、うつ病治療の主流は薬物治療と心理療法の2つである。しかし近年、それらに加えてNFBトレーニングのうつ症状緩和への有効性が指摘59され始めている。NFBトレーニングは薬物抵抗性のある患者にも効果があり60、認知行動療法のような心理療法並みの治療効果を発揮する61上に、副作用は少ない62という利点が挙がっている。では、具体的な事例を見ていこう。
うつ症状が深刻な人の特徴に反芻思考というものがある。反芻思考とは、ネガティブな出来事について何度も思い出し、考え続けてしまう思考のことだ。健康な人は、ネガティブな出来事があっても一定時間経つと思考を切り替えられるのに対し、うつ病患者はなかなかそのネガティブな悩みから抜け出せない。
健康な人は、デフォルトモードネットワークと呼ばれるぼんやりと安静にしているときに現れる神経活動と、実行制御ネットワークと呼ばれる真剣に何かを考えているときに現れる神経活動とを頻繁に切り替えながら交互に活性化させている。しかし、反芻思考の多い人はデフォルトモードネットワークに留まる時間が長く、これらの2つのネットワーク間の変動が少ない(図4A)。
そこで、Taylorら(2022)63は抑うつレベルの高い人を対象に、NFBトレーニングを使って、この反芻思考時に現れるバイオマーカーの正常化を図った。NFBトレーニングの間、被験者は「脳内で何かをする」最善を尽くすことで画面に表示された緑の円をできるだけ大きくするよう言われた。緑の円の大きさは2つのネットワークの変動量を表していた(図4B)。4日間のセッションを経て、被験者らのネットワークの切り替えレベルが上がり、より健康な人の神経活動に近づいた。
また、彼らの抑うつレベルは実験期間を経て有意に下がった。さらには、反芻思考バイオマーカーの正常化と抑うつレベルの低下との間には相関関係が見られ、2つのネットワークの変動量が多い人ほど抑うつレベルが低下した(図4C)。以上から、NFBトレーニングで健康な人の神経活動パターンへと近づけることによるうつ症状緩和の有効性が示された。
うつ症状改善の兆しが見えたら、いよいよ復職準備に取り掛かることになる。では、復職に必要なものとは何か。ここでは、復職に役立つ特性をひとつ紹介する。短期間で復職を成功させる人とは、自分は復職できるはずだと信じている人である64。
そして、強いレジリエンスを持っている人ほどそのような自己効力感を持っていることがわかっている65。レジリエンスとは、ストレスや困難に直面した時に「うまく適応できる」しなやかさのことを指す。このレジリエンスは鍛えることが可能であり、レジリエンスを強化することは復職への近道となるかもしれない。
Jackobら(2019)は、軍の戦闘訓練を受け日々ストレスの多い環境で過ごしている健康な新兵180名を対象に、NFBトレーニングのレジリエンス強化への有効性を検証した。感情調整やストレス対処に重要とされている神経活動、扁桃体-脳下垂体間の結合を強化させることを目的としてトレーニングを行った実験群と対照群を比較したところ、実験群はトレーニング後に感情調整力が改善し、レジリエンスが向上した66。
このように、うつ症状の緩和やレジリエンスの強化など、復職支援のさまざまな側面にNFBトレーニングは有望な新技術と言えそうである。
5.2. 精神障害のある人が働きやすい職場環境を整える
症状が改善し、無事復職できたとしても、そこがゴールではない。職場へ復帰した職員が、負担なく働き続けられるような職場環境を提供することは企業側の責任だ。精神障害のある労働者のほとんどが職務上でのサポートを必要としているものの、それらを受けられていないケースが多い。
その一方で、必要なサポートを受けることができれば、より長期的な継続勤務や、仕事のパフォーマンス向上につながることが分かっている。そして、労働者が必要としているサポートの大半は、直接的な費用をかけずに導入できるのだ67。では、具体的にどのような職場環境を提供するべきなのか。
5.2.1働き方に関する便宜や職場の雰囲気
さまざまな精神障害を抱える従業員が共通して働きやすい勤務形態として挙げているのは、勤務スケジュールが柔軟であることだ68。自由に休憩時間を確保できることや勤務時間を短縮できることは、従業員が体調に合わせて勤務することを可能にするため、長期的かつ持続的な雇用につながる69。しかし、現在の日本の企業では、復職時は特に、労働管理をする名目で逆に勤務スケジュールを固定化するようなリスクの高い勤務形態をとることも多いように思われる。
また、自閉症を患っている人の多くが文脈を理解することが苦手であり、細分化や単純化によってタスクをわかりやすくすることや、指示が明確で直接的であることは、彼らにとって仕事を格段にやりやすくする70,71。
他にも、疾患について職場の人が理解を示し、自然と助け合えるような雰囲気があることは彼らの居心地をよくする71。特に、ランチタイムや休憩時間の職場の人同士の交流促進や、定期的なミーティングやフィードバックによる上司との密なコミュニケーションも効果的である72。
5.2.2. オフィスの設備・環境
職場の個人ができることに加えて、オフィスの設備を物理的に変えることでも、症状のまだ残る職員でも働きやすい空間を提供することができる。例えば、自閉症のある人は健康な人が気に留めないような小さな音や光のノイズによって集中力を阻害されてしまうことがある。そのため、室外の騒音を遮断するカーテンや音を吸収するカーペット、クワイエットルームの設置などは非常に有効である。また、チラツキの多い蛍光灯の代替となる照明を用いることも、彼らの集中力維持やストレス軽減に効果的だ73。
他にも、うつ病のある人にとって、植物や水辺が目に入ることや自然へのアクセス、リラックスして働くことにつながる。そのため、観葉植物の設置や、庭園へのアクセスがあること、窓の外が眺められる環境などの重要性が指摘されている。
さらには、単調な内装よりも、色鮮やかな壁紙やインテリアの設置などデザイン性のある内装は職員のストレスを和らげる。自然光を室内に取り入れ、部屋を明るく保つことも癒しを与えることに効果的だ74。
表1に精神障害のある人にとって働きやすい職場環境例を示した。こうして見ると、ここで示された働きやすい職場環境は、精神障害のある人に限ったものではないのではないかとも思える。例えば、明確で直接的な指示や建設的なフィードバックで仕事がやりやすくなるというのは、何も精神障害のある人に限った話ではない。誰しも完璧な人はいないのだから、助け合いの雰囲気によって心地よく働くことができるというのは職場全体に言えるだろう。
また、健康な人において自然光を浴びることが作業効率を上げる75ことや、勤務中に植物などの自然に触れることがストレスを軽減させる76こともわかっている。精神障害のある人のために導入しようとしている新しい職場環境は、彼らのみならず、会社全体にポジティブな影響をもたらすのではないだろうか。
6. おわりに
日本人の5人に1人が精神障害を経験する今日、あなた本人が罹患することになるか、あるいは周囲の人の身に起こるか、どちらにせよ精神障害の当事者になるという話は他人事ではない。発症のリスクは誰にでもあり、もはや共存は必須の状況なのである。
職場で感じる本人と周囲の働きづらさ・生きづらさは、誤った情報に基づくスティグマが背後にある。その幻想の苦しみから抜け出すのに、自他へのスティグマに気づくことは、職場におけるメンタルヘルス課題との共存の第一歩であるはずだ。現に、精神障害に関する教育介入をおこなった研究77では、精神障害に関する正しい知識が身につくと同時にスティグマが減ったことが報告されている。
「うつは甘え」というフレーズが頭をよぎった人に見えている、その‟弱そう”なメンタルは、決して本人の甘えや怠慢ではない。むしろ実は有能さの裏返しである可能性すらある。精神障害のある同僚が便宜を図ってもらっていたら「ずるい」と思ってしまうかもしれない。それでも、自分の持っている精神障害へのイメージがただの思い込みであるかもしれないことを知ることで、少しでも快く精神障害のある同僚に手を貸せるようになるのではないだろうか。
とはいえ、頭でわかったところでスッキリするような簡単な問題でもないだろう。
実際、多くの患者と接している臨床医によると、精神障害を言い訳に開き直るケースも少なくないという。「自分は精神障害があるから頑張れない/頑張らない」というような発言を耳にすることもしばしばあるそうだ。
このような、症状が改善する可能性を無視した開き直りもセルフスティグマの一形態であると考えられる。こういった発言は本人も周囲もさらに苦しめることになるだろう。だからこそ、本人も自身のセルフスティグマに対抗する努力をする必要がある。
今自分の持っている精神障害へのイメージは事実に基づかないただの思い込みなのではないだろうか。そんな問いを、精神障害のある本人、そしてその周囲の人達の双方が、本稿を読み終えて自分へ投げかけてくれるだけで、より生産的で調和的な職場へと近づけるかもしれない。そして、その実現のために、我々は学びと実践を続けていく。
謝辞:本稿の執筆にあたってNTTデータ経営研究所の同僚である山川夏鈴、鶴巻明梨、村上拓郎、田島美咲―、各氏の協力を得た。ここに感謝の意を表する。