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「環境新聞」2014年11月26日より

リサイクルビジネス進化論(16)
~勝者のコアコンピタンス~
「焼却施設」に見出す未来/海外需要を見据えた積極展開を

株式会社NTTデータ経営研究所
資源循環ネットワーク代表理事
シニアマネージャー 林 孝昌

 国内焼却施設は一般廃棄物だけで1183施設(2012年度)、さらに産業廃棄物向けは許可数ベースで3467件(区分重複多数)が整備されている。間違いなく世界最多であり、その最大の要因は、わが国の廃棄物行政が衛生処理を目的に、基礎自治体単位で進められてきたことにある。無論、衛生処理を徹底しつつ最終処分量を低減する上で、焼却は有効な手段であり続ける。ハードとソフトが高度に融合した焼却施設は、廃棄物処理施設の女王である。

 国内施設数は、今後確実に減少する。人口減少や分別収集拡大に伴う廃棄物発生量減少に加え、広域処理普及による施設集約が進展しているためである。本稿では、焼却施設に見出すべき未来についての検証を行う。

 まず、一般廃棄物の焼却施設は、確実に民間委託の方向に向かう。本格的な建て替え期を迎え、循環型社会形成推進交付金の交付基準は厳しさを増しており、延命工事で凌ぐ自治体も多い。全国的に焼却能力が過剰となった今、処理責務を負う自治体が自前の施設を持つ必然性は低下している。さらなる広域化による施設大型化の動きは、それ自体が「域内処理の原則」という従来見解の限界を示している。すなわち、PFI方式の導入や、確かな能力を有する民間業者への処理委託こそが、財政逼迫に苦しむ自治体にとって現実的な解決策なのである。

 次に、焼却施設の発電能力への注目はさらに高まる。廃棄物発電の13年度実績は約20万MW時で再生可能エネルギー全体の約11%だが、火力や水力を含む総発電量との対比では0・03%にも満たない。廃棄物発電はあくまで処理に伴う結果であり、電力供給自体が目的にはなり得ない。ただし、災害時・非常時の電源として考えた場合の重要性は見逃せない。電力系統に接続するのではなく、いわゆる「特定供給」により公的施設や避難所への電力供給を行う仕組みを構築すれば、大規模停電時などに非常時電源の役割を果たすことができる。その立地が分散していることからも、地域密着型電源としての期待が大きい。

「焼却施設」に見出す未来

 最後に、わが国が培った焼却技術は、アジアの途上国などに積極展開するべきである。途上国で焼却炉が普及しない理由として、廃棄物の発熱量が低いこと、経済水準が追い付かないことが挙げられる。ただし、各国の急速な経済発展は、先進国並みの発熱量や財政負担力の改善を約束しており、課題解決は時間の問題である。また、根拠なく焼却炉を環境汚染源として捉え、制度的に建設を禁止している国もある。結果、人目に付く海や山で廃棄物が山積みになっている事例が後を絶たない。途上国における環境意識の高まりが、いずれは冷静な現実判断を促し、焼却を選択する方向に向かうことは容易に予測できる。

 リサイクル率の高い欧州でも、約4割に及ぶ直接埋め立て量削減を目的とした焼却炉の導入が拡大している。「焼却より、リサイクル」という主張は、「原発より、再生可能エネルギー」と同様に乱暴で、滑稽ですらある。安定的に廃棄物の容量を減らし、衛生処分の徹底に資する焼却技術は、迷いなく世界に広めるべきわが国の宝である。



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