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(「環境新聞」2014年3月26日より)

リサイクルビジネス進化論(8)
素材を超えた普遍の原則

成長求め収益構造の強化を

株式会社NTTデータ経営研究所
資源循環ネットワーク代表理事
シニアマネージャー 林 孝昌

 前回までリサイクルビジネスが扱う主な素材ごとに、今後の進化の方向性を探ってきた。素材ごとにマーケットを取り巻く状況は異なり、競争の本質が別業界ほどに異なるためである。ただし、リサイクルの付加価値は、各素材の複合物を単一素材として動脈ビジネスに還元するプロセスにあるため、特定素材のみを取り扱うことは困難でもある。例えばシュレッダー業者にとって売り上げの柱は鉄スクラップ販売でも、利益の源泉はASRからの非鉄金属回収というケースもある。すなわち、主要ターゲット素材以外の「異物」に過ぎない品目の再資源化を通じて利益を上げる仕組み作りが、競争力を左右する。取り扱い素材を拡大し、個別局面での競争力を磨く必要性はここにある。

 一方、素材を問わず、リサイクルビジネスに共通する普遍的な原則もある。その筆頭は、国内外の再生処理能力が供給過剰にあるとの認識を持つべき、との点にある。例えば容器包装リサイクル法施行時、ペットボトルの再生処理能力は不足しており、調達段階での競争はなく、設備投資が確実な収益につながると信じられていた。その後数年で再生処理能力は過剰となり、海外輸出の増加と入札による価格競争が相まって、利益を生み出すことが困難な業界構造が常態化するに至っている。リサイクルビジネスがローテク産業である以上、先行者利益を維持できる期間は短い。常に新たなビジネスモデルを模索して、投資とその回収に挑み続けること、言葉を変えれば成長を求め続けることを避ければ、どんな事業者もジリ貧に陥る。

 次に、リサイクル資源はあくまで天然資源の代替素材であり、天然資源相場変動の影響を常時受けているとの認識も忘れてはならない。古紙は木材チップと、廃プラスチックは石油化学製品や綿花と、スラグやガラスなど路盤材でさえ、天然砕石と、価格と品質のバランスの中で競争をしている。高品質のリサイクル資源を生み出しても、取引価格の上限は天然資源の市場価格であり、中間処理に過度なコストをかければ回収は不可能となる。逆有償・有償を問わず入り口の処理料金と出口の売却費の合計が収益である以上、処理コストがその額を超えれば事業の破綻は必然である。市況変動に耐え得る収益構造の強化は、安定した事業運営の前提と言える。

 最後に地域産業であり、適正地域を超えた事業運営が困難であるとの原則も共通している。通常は単位当たりの付加価値が低く、運賃負担力が低いことから、中間処理施設の所在地を核にした収集対象エリアは自ずと限定される。古紙など国際市況品でさえ、ベール化までの回収・再資源化プロセスは狭いエリアに限定される。全国規模の回収システムが機能するのは、電池や蛍光灯など処理困難物か、携帯電話など例外的に付加価値が高い品目のみである。結果、地域内で一定のシェアを確保することが事業継続の条件となるが、少子高齢化の進展は全体のパイを縮小させる。業界構成員が、あまねく生き残る解は存在せず、競争と淘汰を避けて通ることは不可能である。

 成長を求め、収益構造を強化し、淘汰の波を乗り越える。普通のビジネスでは当たり前の競争が、今後本格化することは間違いない。

 次回からは、リサイクルビジネスが勝ち残るための具体的なツールを取り上げ、その検証を行う。



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