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(「環境新聞」2014年6月25日より)

リサイクルビジネス進化論(11)
~勝者のコアコンピタンス~
「運搬車両」の安定確保/流通業でもあるリサイクラーの課題

株式会社NTTデータ経営研究所
資源循環ネットワーク代表理事
シニアマネージャー 林 孝昌

 公共事業増大や首都圏での建設需要拡大に伴い、ダンプ等運搬車両が全国的に不足している。バルク系の廃棄物や汚染土壌等を扱うリサイクラーにとっては他人事でなく、運搬経費の高騰が事業収支を悪化させるリスクも高い。業として収集運搬を行うためには登録車両の保有が必須だが、施設運営という観点で見た運搬車両確保に画一的な最適解は存在しない。受け入れ品目や顧客との関係性等複合的な事業の現状を踏まえた体制整備が、競争力強化に直結する。

 まず、自前車両を保有することのメリットは、顧客要請に応じた迅速なフットワークの確保にある。運搬費込みでの有価取引が可能な鉄くずでも、中間処理施設を保有する事業者の多くは自前車両を保有している。日々の相場変動の影響を最小化して、迅速な収集や素材供給を行う必要があるからである。ただし、運搬車両の保有は運転手雇用とセットになるため、高い稼働率を維持できなければ、固定費が嵩む。結果、大手リサイクラーでも自社の処理能力に遠く及ばない台数の車両しか保有していないケースも多い。

 次の手法が、「傭車」の手配である。車両と運転手一体で貨物の輸送費用を受け取るには、原則として貨物自動車運送事業法に基づく許可(青ナンバー)が必須となる。ただし、「生業と密接不可分な運送行為には運送業の許可不要」との例外も認められているため、産業廃棄物の収集運搬車両にも白ナンバーが多い。施設を保有するリサイクラーは、運搬車両が不足すれば、本来は「自家用」の白ナンバーも利用することになる。いわゆる常用単価は、燃料費の増大のみならず、白ナンバーの単価上昇に引っ張られ、貸し切り運賃が定額のはずの青ナンバーにも及ぶことで高騰する。常用単価の高騰リスクを避ける手段は2つ考えられる。一つは安定した仕事を供給することで運送会社との付き合いを深めることである。体力のあるリサイクラーは、市況に関らず安定した価格で青ナンバーの車両を確保できている。また、規模が小さいリサイクラーがスポットでの取り扱いを行う場合などに は、実運送事業者向けの往復貨物を用意することもある。具体的には、静脈物資の搬入を求める際、別荷主の動脈貨物等の情報提供を行うことで、片荷での運行をなくす代わりに運賃の引き下げを求めるのである。片荷輸送の削減は、事業者にとってWIN-WINであるのみならず、環境負荷削減にも寄与する。


「運搬車両」の安定確保


 最後に、運搬手段を持たず、あくまで施設で受け入れるという選択肢もある。実質的な営業行為を他の運搬事業者に任せることは一般論として無謀である。したがって、制度的な裏付けや特殊な処理技術等により、集荷が安定確保できるリサイクラーのみが採り得るアプローチとなっている。ただし、収集運搬プロセスのリスクや受け入れ拒否時の運賃発生を避けつつ、定額の処理費・処分費を稼げるという点では、理想的でさえある。

 リサイクルビジネスが流通業でもある以上、足回りの最適化は事業運営における主要課題である。利益を生み出す事業者は、例外なくその最適化手法を追求している。



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