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「環境新聞」2014年8月27日より

リサイクルビジネス進化論(13)
~勝者のコアコンピタンス~
「広域認定」の可能性/メーカーとリサイクラー連携強化の試金石

株式会社NTTデータ経営研究所
資源循環ネットワーク代表理事
シニアマネージャー 林 孝昌

 広域認定とは、「拡大生産者責任」に則って高度なリサイクルの実現を促す特例制度であり、その申請主体はメーカ等である。認定取得により、地方公共団体毎の「業の許可」が不要となり、広域収集によるスケールメリット確保や特定施設での再資源化が可能となる。同制度は資源有効利用促進法等に則って、自主的に回収量や再資源化実績の向上を目指すメーカや業界団体によって活用されてきた。リサイクラーはその受け皿の役割を果たしてきたが、更に積極的な営業ツールとしての活用は今後の課題である。

 産業廃棄物で見ると、平成16年の第1号認定からの10年間で195件の認定事例があり、現状の対象品目としては、「電機電子機器類」「住宅用建材・設備」「繊維製品」等が目立つ。例えば複写機ならリースアップ時、廃材や廃設備機器は解体・リフォーム時、ユニフォームは一斉買い替え時等の機会を捉えて、効率的な自社物品回収が行えるためである。ただし本業でない以上、メーカ等は目先に課題があれば自ら責任を負うより、通常の処分を選ぶ。回収以降の主役は再資源化のノウハウや処理施設を有するリサイクラーであり、メーカ等の課題や潜在ニーズを踏まえた連携方策の提案こそが、新たなビジネスチャンスを生み出す。

「広域認定」の可能性

 

 ではリサイクラー側から広域認定の申請を提案すべき品目は何か。まず発生量が大きいのは電気、ガス、通信等のインフラ関連の構造物である。例えば電柱や配管等は電気会社やガス会社が指定する明確な規格に則って生産され、定期的に交換・廃棄が行われる。インフラ系企業の多くは、地域会社や営業所単位で廃棄物処理を地場の処理業者に委託しているケースが多い。例えば広域に張り巡らされた構造物の高度処理を一括で請け負うとの提案は、再資源化量拡大に加え、コンプライアンス徹底に資する一元管理の観点からもインフラ系企業に訴求するメリットとなる。

 次に事務所で発生するオフィス家具や業務用空調等にも可能性がある。オフィス家具は中古品としては古物商が、廃棄物としては地場の産廃業者がその太宗を回収しており、現状メーカ等のアクセスは限定的である。メーカ等が古物商の免許を有する大手リサイクラーとタイアップして認定を取得すれば、再利用と再資源化の組み合わせにより低迷する回収率は一気に高まる。一方の業務用空調は建物解体時に請負業者のゼネコン等による有価売却が行われている。その多くが「雑品」として海外に輸出されているとも言われ、メーカ主導の回収システム構築は国内資源確保の観点からも重要な課題である。例えば解体業の許可を持つリサイクラーなら、メーカ側に回収のアクセスポイントを提供出来る可能性もあり、タイアップ効果は大きい。

 最後に太陽光パネルや蓄電池等新エネルギー関連機器類も資源性が高く、伸び白が大きい品目である。ただし、普及期である現在の出荷量に対して、当面の回収量はわずかに過ぎない。大規模回収システム構築には、息の長いメーカとの連携と、レアメタル回収等を含む技術的な差別化手法の提案が求められることになる。

 メーカとリサイクラーの連携強化抜きに拡大生産者責任という政策ツールは機能しない。広域認定の利用拡大は、その試金石としての可能性を秘めている。



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