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(「環境新聞」2013年9月25日より)

リサイクルビジネス進化論(4)
「非鉄リサイクル」進化の方向性

小電リ契機に「都市鉱山」攻略を

株式会社NTTデータ経営研究所
社会・環境戦略コンサルティング本部
シニアマネージャー 林 孝昌

 非鉄金属(以下、「非鉄」)とは鉄以外の金属の総称だが、代表的なリサイクル品目は軽金属ならアルミ、重金属なら銅である。純度の高いスクラップは2次原料としての取引価格が高く、回収・流通システムも確立されているため、市場原理に任せたままで自然に再資源化される。例えばアルミ缶は2次合金メーカー、「ピカ線」と呼ばれる銅線などは伸銅品メーカーが再生する。その品質は1次原料と変わらないため、製品ユーザーが意識することなく、水平リサイクルが実現されており、そこに進化の必然性はない。

一方、社会的・制度的な課題となっているのが、非鉄やその他素材が混ざり合った「雑品」のリサイクルである。雑品という用語はミックスメタルだけでなく、使用済みの産業機械や家電製品、さらにはモーター、ラジエーター、給湯器等、非鉄金属を含有する廃品類の総称として定着している。世間の定義はともかく、希少金属やレアメタルが含まれるにも関わらず、国内での有効利用が進まない雑品こそが、リサイクルビジネスが挑むべき「都市鉱山」なのである。

この都市鉱山を有効活用するために、まずは輸出を抑止する必要がある。雑品がそのままコンテナ詰めで輸出され、中国などで手解体されてきたことは周知の事実である。有価で原料として取引されていても、鉛の含有など厳密に判断すれば、バーゼル法に抵触する。政府関係者は、輸出先での「環境汚染の未然防止」や「国内資源の確保」という観点での輸出防止策を本格化させている。ただし、排出者の倫理感や水際での摘発には限界があり、本質的な抑止策は、国内での高度な非鉄再資源化システム構築にしか見出せない。

各種金属とその他素材の複合品である以上、鉱石と同様に破砕・分級・選鉱を通じて銅、亜鉛、鉛、貴金属などの歩留まり向上に資する前処理が必要となる。この際残渣として発生する廃プラスチックなどは焼却を含む燃料利用や最終処分に回ることは仕方がない。高度な精製により高品位の非鉄回収を最優先することが、手解体が困難な先進国的なアプローチである。今後、ASRなどの埋め立て対象物からの非鉄回収ニーズもさらに高まるはずである。

前処理後の原料は、最終的に国内16社の製錬所のどこかで、乾式または湿式の精錬を通じて1次原料と同品位の製品に還元される。銅や亜鉛のみならず、金、銀、パラジウムなどはその含有品位に応じて製錬会社が買い取りを行っている。ただし、品位の測定と値決めは製錬会社側が行う商習慣が定着しており、販売側が交渉力を持つ手段は「量の確保」しかない。

「非鉄リサイクル」進化の方向性

図:「非鉄リサイクル」進化の方向性

 4月1日に小型家電リサイクル法が施行された。同法では携帯電話やデジタルカメラなどの高品位品だけでなく、ミシンやアイロン、電気扇風機といった低品位品も再資源化の対象となる。低品位品は典型的な雑品であり、回収量拡大と処理ルート確立はそのまま産業由来の雑品にも適用できる。その主役を務めるのが、国が直接審査にまで踏み込んだ認定事業者である。小型家電リサイクルは、都市鉱山の本丸攻略への試金石となる。その先の進化の方向性は、「雑品から全ての非鉄を絞り取ること」にある。



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