現在ご覧のページは当社の旧webサイトになります。トップページはこちら

(「環境新聞」2014年5月28日より)

リサイクルビジネス進化論(10)
勝者のコアコンピタンス
「情報システム」の威力/「情報化」で問われる本業の実力

株式会社NTTデータ経営研究所
資源循環ネットワーク代表理事
シニアマネージャー 林 孝昌

  制度としての廃棄物処理やリサイクルを支える情報システム構築は、1990年代後半から進められてきた。電子マニフェストや自動車リサイクルシステムなどがこれに該当する。いわゆる社会インフラであり、税金あるいは業界団体の経費で構築されて、制度的責務を負うステークホルダーによる共同利用にその主眼が置かれてきた。ちなみに、こうしたシステム構築の担い手は、いわゆる大手ITベンダーである。

  一方、昨今急速に拡大しているのは、リサイクラー自らが提供するサービスとしての情報システムである。サービスである以上、それなりの対価は請求するが、狙いは本業の売上拡大に他ならない。すなわち、集荷に資する「営業ツール」となる情報システムが、威力を発揮し始めている。

  制度化当初、排出事業者に受け入れられなかった電子マニフェストの普及率も、今年3月末実績で約35%に至っている。この背景には、一般的なIT化進展のみならず、リサイクルビジネスの事業環境変化が見られる。具体的には、いわゆる「廃棄物管理」が、建設業や製造業のコーポレート・ガバナンスの一分野として確立してきたためである。現場を含め誰もが情報端末を保有する今、入力作業の負荷を超える必然性やメリットがあれば、情報化は進展する。この機に「+α」のサービスを提供すれば、情報システムはリサイクラーの強力な武器となり得る。


「情報システム」の威力


  まず、特に大手企業にとって、グループ傘下の工場や事業所での適切な処理業者選定が課題となっている。廃棄物処理法に則った許可期限の更新などを不作為に怠る処理業者は今も散見されており、結果的に「無許可業者」との請負契約を締結してしまう事例は後を絶たない。行政側が、許認可切れのアラームを事前に処理業者に知らせることは皆無であり、コンプライアンス対策としての「廃棄物管理」が、ニーズとして顕在化している。

  次に廃棄物処理の細分化が、情報管理ニーズを高めている。かつて産業廃棄物として一括で処理委託を行ってきた排出事業者も、有価販売が可能な物品は買い取り価格の高い処理業者を選んで販売することが常識化している。一つの工場が多数の処理業者と請負契約を締結することも一般的になり、本社が全社的な排出・処理の実態等を把握するには、情報システム活用が不可欠となったのである。

  こうした中、「廃棄物管理」のニーズを捉えた処理事業者は、企業全体の処理情報を把握した上で、コスト削減にも資する高度な処理手法を検討できる。すなわち、当該企業をお客様とする全ての業者の手の内を見越した上で、自社の強みを生かした提案を通じて、本業の売上拡大を実現しつつあるのだ。

  ただし、情報化の進展は、排出事業者と処理事業者との間にある「情報の非対称性」を緩和する。情報システムを排出事業者目線で見れば、「見える化」のツールに他ならない。非合理的な処理価格の提示は困難となるため、長続きすることはない。最後に問われるのは本業の実力であり、情報システムはその説得力を高めるための手段として位置付けるべきであろう。



Page Top