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「環境新聞」2014年9月24日より

リサイクルビジネス進化論(14)
~勝者のコアコンピタンス~
「一般貨物船」の有効活用/モーダルシフト促進を支えるパートナーシップ

株式会社NTTデータ経営研究所
資源循環ネットワーク代表理事
シニアマネージャー 林 孝昌

 逆有償・有償を問わず、リサイクル貨物の単位当たり付加価値は低く、物流コスト低減は普遍的な課題と言える。その手段として、車両運送から船舶輸送への切り替え(以下、「モーダルシフト」)は、経済面・環境面で明らかに合理的な手段である。特に鉄スクラップや建設発生土、スラグ等のバルク系貨物の場合、沿岸部に立地する素材系施設に一括で搬入できるメリットは大きい。船舶輸送の実績は増加傾向にあるが、本来のポテンシャルとそのメリットを考えれば、さらなる促進を図るべきと言える。本稿では、一般貨物船(以下、「船」)による船舶輸送を念頭に、その拡大に向けた個別課題などの整理を行う。

 最初の課題は、積地となる港湾への貨物の集積にある。499GT型のオーソドックスな船で、建設発生土やスラグなら1500トン程度を積載できる。一方、大規模建設現場など特殊なケースを除き、内陸部の発生源は分散しており、港湾への搬入日時にもズレがあるため、効率良い荷役作業には港湾地域での集積・保管機能が必須となる。倉庫利用はコストが嵩むため、適切な環境配慮を前提に、港湾管理者との調整により、一定期間の野積みが可能なスペースを整備することが望ましい。

 次に船の安定的なチャーターには、港湾単位での定期的な出荷量確保が欠かせない。船社目線で見れば、稼働率の高い定期運航が理想であり、単発輸送の優先順位は低い。荷主であるリサイクラーにとって、個社単独での取引量には限界があるため、複数社による船の共同利用を視野に入れるべきである。その場合の課題は、混載する貨物の品質や量に応じた処分費用あるいは売却費の公正な配分にある。同じ鉄スクラップでも、その種類や品位に応じて取引重量当たりの単価は大きく異なる。バラ積みで搬入される際、電炉側が発生源ごとにその内訳を区分して支払い先を決めることは不可能である。現実的な解決策は、共同利用を行う荷主側が、船積み前に自社貨物の量や品位などに応じた売却費の按分比率などを決めておくことである。そのためには積地の側に客観性の高い管理機関などを設置して、港までの搬入車両ごとに貨物の検品や記録などを行うことも有効である。

 最後に、船舶輸送のコストメリットを享受するには、片荷輸送の最小化が必要となる。素材系施設が立地する揚地で積み込む貨物の目途があれば、チャーター費用は大幅に下がる。片荷の発生防止には、静脈側のみならず、動脈側も含めた広域物流ネットワークの構築が課題となる。例えばセメント工場の立地地域には、大抵石灰山がある。石灰は高炉原料でもあり、逆に製鉄所ではスラグが発生するため、往復貨物となり得る。石灰とスラグの組み合わせは古典的な往復貨物の事例だが、こうした貨物マッチングを幅広い貨物に展開することで、無駄のない往復輸送を全国展開することが可能となる。

「一般貨物船」の有効活用

 以上の通り、船舶輸送の活性化は、「官と民」、「民と民」の連携可否に左右される。モーダルシフト実現に一人勝ちは有り得ない。だからこそ、関係者によるWIN―WINのパートナーシップ構築を目指すことができる。



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