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「環境新聞」2014年7月23日より

リサイクルビジネス進化論(12)
~勝者のコアコンピタンス~
「破砕機」の生産性/”都市鉱山”に挑む中間処理設備の王様

株式会社NTTデータ経営研究所
資源循環ネットワーク代表理事
シニアマネージャー 林 孝昌

 市中スクラップや使用済み製品を「都市鉱山」に見立てて、金属系資源を抽出する中間処理施設の主役は破砕機である。製錬・精錬等により純金属に還元するプロセスは天然鉱石と全く同じであり、中間処理段階の課題はその品位向上や性状の調整にある。

 リサイクラーが電炉や製錬会社に販売する破砕後原料の大まかな売却単価は、銅くずでも50万円/トン超、金銀滓と呼ばれる基盤等の破砕物なら100万円/トン超に及び、他素材とは比較にならない程に高い。無論、仕入段階から有価の品目も多く、売却時の相場変動幅も大きいため、利益が出るとは限らないが、マーケット規模は間違いなく大きい。破砕機は木くずや古紙などの燃料化用途にも利用されるが、本稿では金属系資源を処理する破砕機の生産性について、検証を行う。

 破砕機には、その機能や性能に応じてピンからキリまでがある。ピンの代表がいわゆるカーシュレッダーであり、廃自動車や家電製品のガラを丸ごと砕いて原料化する。例えば2千馬力のプラントで月間7千トン、廃自動車換算で8千台以上の処理が可能である。シュレッダー処理後の鉄くずは、電炉への投入効率や溶融効率が高まるため、3千円/トン程度の付加価値が生まれる。集荷安定性の確保という最大の課題をクリアできるなら、年間売上規模は数十億円単位で担保される。ただし、透明性の高い市場での廃自動車等調達は競争が激しく、電気料金の高騰もあって、利益を生みだすことは難しい。鉄スクラップの取り扱い自体は売上増大の手段と割り切るべきであろう。

 一方、利益の源泉として期待できるのが非鉄金属回収である。非鉄金属は電炉が嫌う不純物であり、銅製のワイヤーハーネスやアルミ製のエンジンなどは事前に徹底して抜き取られる。破砕機であれば、磁力や渦電流による選鉱プロセスで鉄と非鉄を分離するが、自動選別可能な分は当初収支に折り込み済みの売上げに過ぎない。むしろ破砕後のダストに残存する金・銀・パラジウム等を抽出した上で、金銀滓として販売すれば抽出量は矮小でも高い利益が生まれる。また、セメント原料化などを通じてダストの処分費も削減可能となる。


「破砕機」の生産性


 昨今は小型家電製品に含まれる希少金属の再資源化を視野に、ハンマークラッシャーやクロスフロー、竪型破砕機など、剥離性や分離性の高い機種への注目が高まっている。ただし、最終的な分級・濃縮工程では手作業による原始的な選別工程の地道な組み合わせが不可欠となる。すなわち、高度な設備と分級・濃縮ノウハウなどの最適な組み合わせによる希少金属回収の高度化こそが、利益を生み出す破砕機の生産性を左右するのである。

 さらに、特に大型破砕機を保有するリサイクラーにとって、一般廃棄物処理も新たなマーケットになりつつある。リサイクル制度整備に伴う分別収集定着が、不燃ごみや粗大ごみの発生量を削減しており、破砕処理施設の稼働率および新規投資の必然性は低下している。民間ノウハウ導入による一般廃棄物からの金属回収徹底は、「都市鉱山」開発のフロンティアであり、リサイクルの「質」が向上するならば、歓迎すべきトレンドと言えよう。



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