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(「環境新聞」2014年4月30日より)

リサイクルビジネス進化論(9)
勝者のコアコンピタンス
「管理型最終処分場」という切り札

リサイクル補完する最強ツール

株式会社NTTデータ経営研究所
資源循環ネットワーク代表理事
シニアマネージャー 林 孝昌

  逆説的だが、リサイクルビジネスの競争力を高める最強のカードは、管理型最終処分場(以下、「処分場」という)である。現に売り上げ規模が100億円を超える超大手リサイクラーの多くが処分場を保有しており、その利益率は中間処理より総じて高い。以前、銀行の融資担当者から、処分場へのプロジェクトファイナンスについての相談を受けた経験がある。それ自体、レンダー側が積極的にアレンジに乗り出すほど、長期的収益が確実な事業である証左と言える。

  2011年度の産業廃棄物最終処分量は全国1200万トン強で、発生量の3%に過ぎず、毎年減少している。それでも処分場がリサイクラーの強みとなる第一の理由は、収集運搬から中間処理までを原価で受けても、最終処分で利益を稼ぐ体制が構築できることにある。すなわち、処分に至る処理手法やサービスの水準が同じなら、価格勝負で勝てる。

  「ゼロエミッション」を目標に据える大手排出者は多く、最終処分を避けるための出口には、セメント原燃料化が選ばれる。ただし、セメントの廃棄物受け入れ量は年次計画で定められており、急な受け入れには高値が提示されるのが通例である。特にセメントが嫌う塩素分や重金属の含有割合が高い飛灰や汚泥等の場合、少なくともコスト競争力という観点では処分場に軍配が上がる。

  廃棄物の処分量が減少しても、第2溶出基準以下であれば汚染土壌の処分も可能である。建設需要が旺盛な当面の間、発生土等の処理ニーズは拡大する。こちらも目先のライバルはセメントだが、勝負の決め手は輸送コストである。船を使った大量輸送では系列の海運会社と連携するセメントに優位性があるが、ダンプでの陸送は単純に距離がものを言う。浄化や調質のために別サイトを経由するなら、直接処分場に運び込む方が優位となる。

  さらに期待が高まる分野として、PFI方式による一般廃棄物処理施設の建設・運営への参画が挙げられる。オペレーションのみを請け負う場合を除き、民間委託には災害や事故等を含む処理停滞リスクへの懸念が付きまとう。処分場の保有により財務的な健全性に加え、万が一の処分先確保という無形の安心感も示すことができる。結果、発注自治体と住民双方の理解醸成の後押しとなる。


「管理型最終処分場」という切り札


  以上の通り、処分場の保有は良いことずくめだが、莫大な設備投資のみならず、地元の合意形成という高いハードルを越えなければ実現できない。だからこそ、地域密着型の中核企業が保有すべき切り札に足り得るのである。一方、最終処分は目的ではなく手段であり、高度な中間処理等との組み合わせこそがその商品価値を高めることを忘れてはならない。むしろリサイクルを補完するツールとしての活用を志すべきであり、単なる処分業者は、資産を食い潰した後に事業継続の道筋を見失うことになる。

  最後に、処分完了後に造成した土地の有効利用は、前向きな投資として捉える必要がある。コストをかけても地元が納得する施設への再生は、新たな処分場を開くための近道にもなる。



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