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「環境新聞」2016年4月6日より

本格化する廃棄物処理・リサイクルビジネスの海外展開(10)
マレーシア 家庭系ごみのリサイクル率向上に向けた取り組み/地方自治体の廃棄物管理のノウハウを用いて官民協同でビジネス化を

NTTデータ経営研究所
社会・環境戦略コンサルティングユニット
マネージャー 加島 健

 マレーシアは、2004年から13年までの10年間で人口増加率が約15%、1人当たりGDP(名目)は2倍以上の伸びとなっており12年には1万ドルを超えるなど、東南アジアでも屈指の経済成長を誇る国である。
 経済成長に伴い廃棄物の発生量も増加している。1人1日当たりの家庭ごみ排出原単位は、05年の0・8キログラム/人・日から12年には1・1キログラム/人・日と7年間で40%近くの伸び率となっており、廃棄物の発生量は急増しているため、将来的な最終処分場の逼迫が懸念される。

 このような状況を踏まえ、マレーシア政府は廃棄物の3Rを推進している。マレーシア政府が16年から20年までの国家5カ年計画として発表した「第11次マレーシア計画」では、20年には家庭系ごみのリサイクル率を22%まで向上させる目標を掲げた(注:家庭系ごみのリサイクル率は10年の5・0%から12年には10・5%まで上昇)。
 家庭系ごみのリサイクル率向上の切り札となるのが15年9月1日からスタートさせた分別収集プログラム(2+1プログラム)である。2+1プログラムは固形廃棄物・公共清掃管理法(ACT672)に基づく対応で、クアラルンプールやジョホール州などの複数の州で導入された。

 具体的には、プラスチックや紙、金属、ゴムなどのリサイクル対象物や家具などの粗大ごみ、草木ごみは週1回の収集、週1回の収集品目以外(食品廃棄物やおむつ、その他リサイクルできないごみ)は週2回の収集とし、一般市民に資源物を排出段階で分別させる仕組みだ。

 分別に協力しない場合の罰則規定に関しては、16年5月末までは警告書による対応となり、同年6月1日からは遵守しない場合1千マレーシアリンギット(以下RM)、日本円で約2万8千円の罰則が適用される予定だ。

 2+1プログラムの事業実施管理主体である固形廃棄物・公共清掃管理公社(SWCorp)は、15年12月末までに約2万世帯(うち25%はクアラルンプール地区の世帯向け)に対して一般家庭でのごみの分別ができていない旨の警告書を発送したと報告しており、一般家庭への分別排出に対するさらなる啓蒙が必要な状況が伺える。筆者は15年11月にジョホール州の最終処分場にて家庭ごみの組成分析に立ち会ったが、家庭ごみの中に分別対象である多くの資源が含まれているのを確認した。

 なお、16年6月1日からは、ルール違反の警告書に対しても罰金が適用される予定であり、1回目50RM、2回目100RM、3回目200RMの罰金になる予定だ。

 わが国では容器包装リサイクルや小型家電リサイクルなどの法制度が整備されており、一般家庭による細分化された分別排出が徹底されている。日本人の国民性(真面目、几帳面等)が分別排出に適しているために導入できた、とも言われるが、十分に機能しているのは家庭ごみの分別収集を担う地方自治体による住民への粘り強い啓発活動や環境教育の賜物である。地方自治体がこれまでの実務で培った分別回収を含む廃棄物管理に関するノウハウは貴重な財産だ。

 なお、15年8月に、北九州市がSWCorpと相互協力に関する覚書を締結した。北九州市とSWCorpは廃棄物管理やリサイクル技術などの環境分野を中心に、相互の課題解決に向けた協力や情報交換を行うとともに、市内企業のビジネス交流を推進することを目的としている。

 このように、廃棄物管理のノウハウを有する地方自治体が課題解決の糸口を作り、リサイクル技術を有する民間企業が現地にて地方自治体の支援を受けながらビジネス展開するモデルが、今後、海外でリサイクルビジネスを展開するうえでより一層重要となるであろう。

家庭ごみに含まれる資源物(缶、ペットボトル等)

家庭ごみに含まれる資源物(缶、ペットボトル等)



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