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「環境新聞」2016年6月15日より

本格化する廃棄物処理・リサイクルビジネスの海外展開(12)
拡大する新興国の廃棄物処理リサイクルビジネスへの参入のために/ビジネス生態系を理解して、グランドデザインを描く

NTTデータ経営研究所
社会・環境戦略コンサルティングユニット
パートナー/ユニット長 村岡元司

 これまで、10回に分けて、東南アジア諸国の廃棄物処理・リサイクルビジネスの現況や可能性を紹介してきた。これらの国々の現況を一言で表現すれば、フォーマルとインフォーマルが混在した複雑系といえよう。

 いずれの国にも共通しているのは、経済発展が想像以上で、都市部では物があふれ、家電や車の普及も進みつつあり、発生廃棄物の種類と量は先進国に近付いていることだ。一方、焼却や廃棄物発電、分別と組み合わせた高度処理は、一部の国を除いて導入されておらず、都市部と大きな格差のある地方部へと中古品が流れていく。製品のリユース、部品のリユース、利用可能な材料のリサイクル等は経済原理に則って、インフォーマルセクターを巻き込み、時には環境汚染も引き起こしながら実施されており、ビジネス生態系が形づくられている。

 制度整備は現在進行形の状態で、国によって進展度合いが異なっている。ベトナムでは家電に始まり二輪車や四輪車等のリサイクル制度の整備が進みつつある。タイでも家電リサイクルの法制度が検討されているが時間を要している。マレーシアでは、生活ごみのリサイクル推進活動が開始されており、廃棄物発電事業の導入も検討されている。制度整備状況は各国により異なっているが、既得権益を確保している現地企業の活動が余程悪質でない限り、それら企業の権益を完全に壊すような制度設計は採用されない可能性が高い。

 従って、これらの国々へのビジネス参入に当たっては、制度設計の現実的な方向性を見極めた上で、現地のビジネス生態系の構造を理解し、どのポジションにどの役割で参入を図り、将来的にはどのポジションを獲得していくのか、戦略を十分に検討する必要がある。

 その際、参考になるのは、各国で合法的に成長している企業の先行例だ。例えば、タイのWongpanit社は1974年創業の老舗であるが、金属・紙・ガラス・プラスチックの他、有害廃棄物等のリサイクルを主なビジネス対象とし、従業員数は約1万4千人、タイ全土で1328社、ラオスに5社、ミャンマーに2社、カンボジアに3社、マレーシアに1社、アメリカに3社を有する巨大企業となっている。その特徴はリサイクルを行う際の買取価格を店頭やウェブで公開していること、リサイクルビジネスのトレーニングコースを設けノウハウを伝授するとともに、フランチャイズ形式で全国展開を図っている点にある。同社の技術に対する関心は高く、日本企業の有する技術の導入にも大いに興味を持っている。

 こうした企業と技術を中心に連携すれば、同社の拡大とともに技術の販売先を拡大することも可能かも知れない。あるいは、同社の講習を受け、フランチャイジーの1社として活動を行っていくことも可能だ。同社と同様に、まずは産業廃棄物の分野からビジネス参入し、いずれは一般廃棄物の分野に領域を拡大していく方策もあるかも知れない。

 海外展開に当たり、必要なことはグランドデザインを描くこと、後は同デザインに則った迅速な動きなのである。わが国企業の奮起を期待したい。(終わり)



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