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「環境新聞」2016年5月11日より

本格化する廃棄物処理・リサイクルビジネスの海外展開(11)
マレーシア 指定廃棄物処理・リサイクル市場の活性化/中長期にわたりWIN-WINの関係性構築可能なパートナー企業との連携を

NTTデータ経営研究所
社会・環境戦略コンサルティングユニット
マネージャー 加島 健

 前回は、マレーシアの一般廃棄物(家庭系ごみ)について、現在展開中のリサイクルプログラムである”2+1プログラム”の概要・運用状況および地方自治体が保有する廃棄物管理のノウハウを用いた官民共同でのビジネス化について言及した。今回は、同国における指定廃棄物(Scheduled Waste)の処理およびリサイクルについて述べる。

 マレーシアでは、1974年に制定された環境基準法(Environmental Quality Act 1974)に基づき89年に制定、2005年に改正された指定廃棄物に関する環境規則にて指定廃棄物を定義している。指定廃棄物は5つの区分・77種類に分類されており、14年に約254万トン発生している。発生量は11年をピークに緩やかな減少傾向を示しているが、現状の経済成長〔04年から13年までの10年間で1人当たりGDP(名目)は2倍以上の伸び〕等を考えると、今後、発生量が急激に減少することは考えにくく、非常に大きなマーケットであると言える。

 なお、指定廃棄物の焼却処理・埋立処分は、これまでクオリティーアラーム社(Kualiti Alam社:KA社)がほぼ独占していたが、15年、マレーシア政府との指定廃棄物の最終処分に関する独占契約の失効に伴い、廃棄物処理・リサイクル企業による廃棄物処理・リサイクルマーケットが活性化している。日系の廃棄物処理・リサイクル企業もマーケット参入を目指しており、例えば国内でセメントリサイクル事業や有機性廃棄物を原料としたバイオガス化事業などを展開しているアミタは、日本政府の助成制度を活用し、マレーシアでのセメントリサイクル事業の具現化に向けて精力的に活動している。これまで寡占企業に割高な委託処理費用を支払っていた排出事業者にとって、マーケットへの企業の新規参入は競争原理が機能しコストダウンにつながるので、早期の事業化に対する期待は非常に高い。

 マレーシアのような1社寡占状態の廃棄物処理・リサイクル市場が開放された場合、日系企業の参入方法としては大きく「寡占企業との協業」か「現地大手・中堅企業との協業」という2つの選択肢となる。

 前者は寡占企業に対してどの程度付加価値を提供できるかが鍵となる。例えばKA社の場合、保有する焼却施設には発電設備が併設されていない(=単純焼却)ので、廃棄物発電技術を保有するプラントメーカーが「FITを活用した発電によるコストダウン」や「リサイクル率向上」を付加価値として施設のリプレースを提案することなどが考えられる。一方、「現地大手・中堅企業との協業」の場合、リサイクラーとの協業と、これまで多額の処理委託料金を支払ってきた排出事業者との協業が想定されるが、特に後者のケースでは、排出事業者側にとっては「廃棄物処理コストの軽減」と「新規ビジネス創出」という大きなメリットがあり、日系企業から見ると「廃棄物処理・リサイクルに関する技術・ノウハウ」という切り札により排出事業者側に完全に主導権を取られずに経営に参画できる可能性が高い。このように双方にとって非常にWIN-WINの関係性を構築できるので、有力な選択肢であるといえる。

 マレーシアに限らず、今後東南アジアでは寡占化されていた廃棄物処理・リサイクル市場がインフラ事業の民営化などの流れで開放されることとなり、新たなビジネスチャンスとなる可能性が高い。廃棄物処理・リサイクル技術を有する日本企業は、このような状況が顕在化する前に、日本政府のさまざまな助成制度を活用して中長期にわたりWIN-WINの関係性を構築可能なパートナー企業の目星をつけ、事前に弾込めすることが重要だ。

KA社の廃棄物処理プラント(焼却施設)

KA社の廃棄物処理プラント(焼却施設)



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