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「環境新聞」2016年1月13日より

本格化する廃棄物処理・リサイクルビジネスの海外展開(7)
ベトナム 廃棄物発電へのFITの適用/求められる官民連携型の東南アジア向けビジネスモデル

NTTデータ経営研究所
社会・環境戦略コンサルティングユニット
マネージャー 加島 健

 ベトナムは前回紙面にて紹介した「廃棄製品の回収および処理に関する規定」など、廃棄物の適正処理・リサイクル推進に向けた法整備を着々と進めている。今回紹介する廃棄物発電におけるFIT(Feed-in Tariff:固定買取価格制度)の導入も、同様の流れに沿った制度整備といえる。

 2014年5月にベトナム政府は「Decision No: 31/2014/QD-TTg(固形廃棄物発電事業の支援メカニズムに関する決定)」を公布し、埋立処分場から回収したガスの燃焼に伴う発電及び固形廃棄物を直接焼却し発電した電力の20年間の買取義務を定めた。固形廃棄物の直接焼却発電による電力買取価格は10.05 UScents/kwh(1ドル=120円換算で約12円/kWh)。この決定を踏まえ、2015年10月にはベトナム商工省による通達「Circular No:32/2015/TT-BCT(固形廃棄物発電事業の開発及び標準電力購入契約書に関する通達)を公布し、電力売買契約書の雛形を提示した。本通達の第10条では提示した売買契約書の基本的な内容変更は認めない旨(内容追加は可)が明記されているため、FITを適用するためには雛形にもとづき電力事業者(ベトナム電力公社:EVN)と契約する必要がある。

 都市ごみを用いた廃棄物発電事業の主な収益源はごみ処理費(チッピングフィー)と売電収益の二本柱となるが、ベトナム政府・地方行政機関ともに財政的な余裕はない。地方行政機関における現状の都市ごみ埋立処分費用はごみ処理1トンあたり数ドル、焼却やコンポスト化でも高くて20ドル前後であり、廃棄物発電事業にて事業採算性を確保するために十分なチッピングフィーとは言えない。それゆえにFITへの期待も高いが、電力買取価格は10.05 UScents/kwhと必ずしも手厚い支援とは言い難いため、結果として廃棄物発電事業がなかなか進まない状況に陥っている。

 一方、2015年11月に公布された首相決定「Decision No:2068/QĐ-TTg」では、都市ごみのエネルギー源としての利用割合を2020年までに20%程度、2030年には70%、2050年には大部分の都市ごみをエネルギー利用する方向性を示しており、都市ごみを用いた廃棄物発電の導入が促進される可能性がある。

 サービスに対する適正なフィーが支払われなければ、事業が立ち上がらないのは自明の理である。ベトナム商工省は、廃棄物発電に先駆けて実施した風力発電のFITに関して、投資家が思うように集まらず、風力発電による再生可能エネルギー導入目標達成が困難との見通しを踏まえ、固定買取価格の値上げを図っている最中である。

 廃棄物発電に関しても、ベトナム政府に対して再生可能エネルギー(バイオマス)導入目標の達成・さらには増加が著しい廃棄物の減容化・リサイクルを促進するための固定買取価格値上げの必要性を、訴求すると共にチッピングフィー増加の必要性を提案することが重要になっている。

 但し、FIT価格もチッピングフィーも増加させることにより、事業採算性を確保し易くなれば、我が国企業だけでなく、例えば、中国企業等の参入可能性も高まることになる。リスクの小さいビジネスで競争が激化するのも、また、当然のことといえよう。この点を踏まえれば、我が国企業には、我が国の自治体と連携してチッピングフィーを生み出すための仕組みづくり、有害廃棄物の原燃料化と廃棄物発電をパッケージ化したビジネスモデルの提案など、我が国企業ならではの創意工夫を生かしたアイデアを検討していくことも、また、重要ではないか。官民連携の知恵が求められているといえよう。

挿入写真

増加し続ける都市ごみの埋立処分量



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