弊社と早稲田大学スポーツビジネス研究所が共同で設立・運営しているSports-Tech & Business Lab(以下、「STBL」)では、2018年3月の設立以後、定期的に研究会やワーキンググループを開催し、テクノロジー×スポーツによる事業創造や社会課題解決について議論を行っている。去る2020年6月18日には、新型コロナウィルスの感染拡大の影響により無観客試合の開催等を余儀なくされているスポーツ団体・チーム・学生の厳しい状況を踏まえ、テクノロジーがその問題を解決していくべきなのではないか?との問題意識から「無観客試合時代におけるデジタル観戦体験の在り方とは」と題したオンライン・カンファレンスを開催した。その模様について簡単にご紹介したい(図1)。
当日は、まず初めに、スポーツファシリティ研究所代表で追手門学院大学准教授の上林功先生、NTTグループで今年設立したばかりの、スポーツ事業に特化した事業会社NTTSportictの中村正敏社長のお二人にご講演いただいた。
上林先生からは、「ベルギーサッカーリーグにおいてオンライン観戦者の姿がスタジアムに映し出される取り組み」「ヤマハ・ジュビロ磐田・清水エスパルスによるネット中継を見ながらスタジアムに声援を届けるリモート声援システム」などのデジタル観戦体験の事例や、「マツダスタジアム(広島)」や「ペトコ・パーク(サンディエゴ)」でのリアルのソーシャルディスタンス事例のご紹介があり、中村氏からは「AIカメラを活用したアマチュアスポーツの100試合無償配信」などについて紹介いただいた。
パネルディスカッションからは、スポーツ観戦ファン向けのスマホアプリ「Player!」を運営するookamiの尾形太陽代表取締役、アバターを活用したスポーツ観戦体験などに取り組んでいるANAの松本英明氏にもご登壇いただき、モデレータの河本を含む5人で議論を行った。そこでは、
- デジタル観戦体験が、スポーツビジネスのマネタイズにどう貢献するか?
- 地域やファンとの「つながり」という面から見たときのデジタルの役割とは?
- スタジアム単体でみるのではなく、都市機能とスタジアムが一体となっていくなかで、リアルとデジタルの体験をどのように融合させていくべきなのか?
といった点から、「リアルの代替」ではない「デジタルによる新たな市場の創出」について議論が発展した。(図2)
今回は、STBLとして初となるZOOMウェビナーとFacebook Liveを活用したオンライン・カンファレンスであったが、100名を超える参加者があり、普段参加が難しい遠方からの参加者が多かったこと、またチャット機能等で双方向の議論がより活発に行えたという点で、オンライン開催のメリットがみられた。また、当日はNTTのグラフィック・レコーディングチームである「NGRA(NTT Graphic Recording Association)」の皆様にご協力いただき、プレゼンやパネルの様子を「グラレコ」していただくなど、振り返りでも分かりやすい工夫がなされた。(図3)
STBLでは、デジタル観戦体験の先駆けとなる「IoTによる観戦体験の見える化プロジェクト」など、様々な事業開発に取り組んでおり、随時参加企業・団体を募集している。
活動内容は、特設Webサイトで公開中