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情報未来

「スタジオ観戦とTV観戦」

No.65 (2020年9月号)
NTTデータ経営研究所 代表取締役社長 柳 圭一郎
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YANAGI KEIICHIRO
柳 圭一郎
NTTデータ経営研究所
代表取締役社長

今年の夏はいつもと違う。もちろんコロナ禍もあるが、オリンピックが予定されていたこともあり都市対抗野球が11月開催予定となっているのだ。NTT東日本・西日本の応援のため、NTTグループの一員として東京ドームに行くのは本当に楽しい。しかし今年の11月には応援に行けるのだろうか?

野球だけでなく、サッカーやラグビーなどもスタジアムでは独特の雰囲気を感じる。TVで見るのとは違う楽しみだ。一方で、TVにはスタジアムでリアルに観戦するのとは違うメリットもある。スタジアムはぜいぜい5 万~8 万人の収容だが、TVではもっと多くの人が試合を観戦することができる。また家庭での夕食時にも、出張先のホテルでも試合を気軽に楽しむことができる。もし、TVが無ければスポーツのファンの数はもっと減ってしまうことだろう。

昨年はラグビーのワールドカップが開催され、オールブラックス(NZ)の生ハカをスタジアムで見る機会があった。感動はあったが、スタジアムの横から見たので、迫力は感じなかった。TV放映では撮影者がハカの前方、グラウンドに這いつくばって撮影しているから迫力を感じさせることができたののだろう。また昨今の撮影技術の進歩で、ラック時のボールの位置などはTVではよく解る、スタドからは見えない。今後5G等の技術進歩により、映像でますますいろいろな楽しみ方が増えてくるだろうが、TVと生で見るのとどちらがいいと比べるのは無意味だ。提供する価値が違うからである。

今では仕事をする際に一人一台のパソコンが机の上にあるのは当たり前だが、昔、パソコンはオフィスの共有物だった。そのため、仕事でメールを使うことはかった。メールを使い始めたころ「隣に座っているのに、なんでメールするんだ!?」といった話もよく聞いた。逆に、意見が対立する人との間で、何往復もメールがやり取りされることもあった。今では「普段はメールでやりとりするが、こういう時は直接会って話をする方が良い」というように、メールの上手な使い方が一般化したと思う。

コロナ禍によって一般化しつつある在宅勤務やオンライン会議はどうだろうか? サボってもわからない、逆に働きすぎる、仕事とオフのメリハリがつかない、運動不足になる、アイディア出しに向かない、会議で発言のタイミングが掴めない・空気が読めないなど、いろいろな不都合が言われている。リアルにオフィスで仕事や会議をするのと比べると確かにデメリットは多々ある。もちろん慣れてくれば克服できることもあるだろうし、そうでないものもあるだろう。

その一方で、メリットも多い。移動時間が無い、会議が時間通り開始されて時間通り終了する。災害やパンデミックに強いということもあるし、場所(会場)の制約なく、人数のキャパシティをあまり意識しなくて良いのは、大きなメリットだ。結果としてダイレクトに多くの人に情報伝達できるし、記録しておけば時間をずらしても情報にアクセスできる。誰かを介して説得するのは、直接説得するのに比べて難易度が高いが、チャットなどでより多くの声を短時間で収集することができるので、迅速かつ現場の混乱無く意思決定を行うことができる。今後、企業のトップとそのスタッフは発信力と情報収集におけるマネジメント力が求められるだろう。

スポーツのファンは、スタジアム観戦(リアル)とTV(広義でのオンライン)を使い分けている。我々の仕事もリアルとオンライン、どっちがいいかではなくうまく使い分けることが重要だ。熱心なファンでも、アウェー観戦を含めると、スタジアムよりTV観戦の方が多い人が殆どではないだろうか? そして、多くのホワイトカラーの人達にとって、うまく使い分けることによってオンラインがメインで、リアルがサブになる時代が来るのではないかと思っている。

TOPInsight情報未来No.65「スタジオ観戦とTV観戦」