インタビュー
Withコロナ/ニューノーマル時代におけるスノーリゾート地域の今後の展望とは?

情報戦略事業本部ビジネストランスフォーメーションユニット
スポーツ&クロスクリエイショングループ
マネージャー 松川 勇樹
コンサルタント 荏原 圭

スノーリゾート地域の活性化に向けた取り組み

 日本の雪質やスノーリゾートへのアクセスの良さは世界と比べても優れている。しかし、国内のスキー・スノーボード人口は1990年代の18百万人をピークに現在では半減している。また、スノーリゾートも開業から30年以上が経過し、老朽化が問題になっている施設も多い。

 観光庁は2015年からスノーリゾート地域の活性化に向けた検討を開始し、様々な調査や有識者による検討、モデル事業の実施などを通じ、活性化に向けた課題と取組方策を取りまとめてきた(参考:「スノーリゾート地域の活性化に向けて」https://www.mlit.go.jp/kankocho/shisaku/kankochi/snowresort-kentou.html)。また、2019年からはスノーリゾートの投資環境整備に向けた検討を開始し、2020年から具体的な補助事業の実施をしているところである。

 本インタビューでは、スノーリゾート地域の動向について詳しく、一般社団法人日本スノースポーツ&リゾーツ協議会で参与を務める岩田 克己氏に、新型コロナウィルス(以降、「コロナ渦」と略す)の影響下におけるスノーリゾートの現状や課題などについて伺った。

インタビュー概要

  • 日時:2021年2月12日(金)
  • 実施方法:オンライン(Zoom)
  • 話し手:一般社団法人日本スノースポーツ&リゾーツ協議会:岩田 克己氏
  • 聞き手:松川、荏原

岩田様のご経歴や(一社)日本スノースポーツ&リゾーツ協議会の活動について教えてください。

 昔からスノーリゾートの取材を数多く行ってきました。日本のスノーリゾートの魅力を国内外に発信する冊子「SNOW RESORT JAPAN」を発行しています。この冊子はホームページ上で電子ブック形式でも提供しています注1。また、野沢温泉、蔵王、白馬八方、妙高赤倉、草津の日本のクラッシックリゾートによる広域連携組織「マウントシックス(Mt.6)」の事務局も務めているほか、スポーツ庁が設置している「スポーツツーリズム需要拡大のための官民連携協議会」にもオブザーバーで参加するなど、国や自治体の事業にも関わっています。

注1:(参考URL)https://snowresortjapan.com/

図1 スノーリゾートジャパン(左・冊子、右・HP)
図1 スノーリゾートジャパン(冊子)図1 スノーリゾートジャパン(HP)

 (一社)日本スノースポーツ&リゾーツ協議会は、「日本スキー発祥100周年委員会」のメンバーが中心になって2016年に設立され、私も設立に向けた様々な準備に携わりました。

コロナ渦下で迎えた2020-2021のスノーリゾートの状況を教えてください。

1月の緊急事態宣言の影響が大きい

 2020~2021シーズンは雪の降り始めが早かったこともあり、シーズンインの直後は入れ込みが順調なスキー場もあったようです。ウィンタースポーツはソーシャルディスタンスが取れているので、コロナ渦でも宿泊の予約は入っていました。緊急事態宣言が発出されるまでは、19-20シーズンより良い業績だったようです。19-20シーズンは雪不足とコロナ禍が重なったので、むしろ20-21シーズンより下げ幅のインパクトが大きかったです。

 しかし、2021年1月7日に発出された緊急事態宣言によって一気に客足が遠のいてしまいました。例えば、白馬、野沢は大都市圏のお客様が多かったので、緊急事態宣言の影響が特に大きいです。白馬、野沢は地元のお客様も来ますが、関東圏の土日の宿泊客が遠のいてしまったことが本当に痛いのです。スキーやスノーボード自体はソーシャルディスタンスが確保されているアクティビティですが、宿泊を伴う観光行動が避けられてしまった。反対に、関西地域や北海道などで地元のお客様が定着しているスキー場では、そこまで影響がなかったようです。ただ、北海道でも宿泊施設をともなう大型スノーリゾートは、本州から訪れる客が多いため、軒並み集客はダウンしているようです。

 本来は2月ごろが書き入れ時なので、3月7日まで緊急事態宣言が延長されてしまったのは大きな痛手になっています。緊急事態宣言後は、スキー修学旅行も全てキャンセルになってしまったので、スクールや宿泊施設も影響を受けています。スキースクールの存続も難しい状況と言えます。札幌市内のスキー場などは地元の学校によるスキー授業などの需要がまだあるため、持ちこたえているようです。しかし、長野県のあるスキー場では、今シーズン(2020 年 12 月~2021 年 1 月)の損失売上が約 3億円弱にも上ったという報告も受けております。また、今まで2億円あったスクール事業の収益が、今シーズンは数十万円にまで落ちたところもあるようです。

 スクール事業者がそういった状況に直面していることをふまえ、スクールのインストラクターなどに対しても補償を出してもらえるように、協議会として国に提案しているところです。自民党のウィンタースポーツ&リゾーツ議員連盟にも要望書を提出しました。政府でもウィンタースポーツ事業に対して支援が必要だという流れになってきているところです。

 世界的に最も注目されているニセコも、コロナ禍以前はインバウンドの勝ち組でしたが、今は活況な頃とは比べ物にならない状況です。白馬や野沢なども長い時間をかけてインバウンド客の獲得を中心にしてきたため、インバウンド客がいなくなったからといって、日本人の客が増えるわけではありません。

スノーリゾートにおけるコロナ渦感染の問題

 スキー場で起きている問題として、比較的若年層のお客様がマスクをしていない傾向があることが挙げられます。スキー場ではマスク着用が当たり前になっていますが、ルールを守っていないお客様も見受けられます。もともとスキーやスノーボードをする際、頭や顔をカバーするフェイスマスクをつけている人が多いので、他のスポーツに比べて感染リスクは低いと思いますが、ゴンドラ内やレストハウス内での感染は注意しなければなりません。観光庁からも従業員同士の感染防止策を徹底するように通達がきている状況です。スキー場で直接感染するよりも、臨時で雇用している従業員が気づかずにウィルスを持ち込んでしまうケースがあるようです(従業員同士の寮生活などで感染してしまうことがあるようです)。

インバウンドバブル発生の可能性

 1つ恐れているのは、2022年の北京オリンピック・パラリンピックが予定どおり開催された場合、インバウンドバブルが起きるのではないか、ということです。オリンピック・パラリンピックが開催され、日本への渡航も許可されれば、外国人観光客が日本のスキー場に流れ込んでくるのではないでしょうか。特に中国国内のスキー場で満足できない層が日本に流れ込んでくる可能性があります。そうした時に国内のスキー場が需要をさばききれない恐れがあると思います。

コロナ渦下でみえた、現在の日本のスノーリゾートの課題を教えてください。

グリーンシーズンの巻き返しが重要

 日本のスノーリゾートは、2021-2022シーズンを見据えて今のうちから手を打つ必要があると思います。例えばスキー場はマウンテンリゾートの一部なので、グリーンシーズンで巻き返せるかが重要だと思います。

図2 スイス・レンツァーハイデ「バイクキングダム」
図2 スイス・レンツァーハイデ「バイクキングダム」

 地域によってはスノーリゾートを活用し、マウンテンバイクなどが盛り上がっているケースもあります。マウンテンバイクはスキーが出来ないグリーンシーズンに活用できるので、この「バイクキングダム」アプリのような取り組みはぜひやるべきだと思いますし、「バイクキングダム」のスキー版があってもおもしろいと思います。ただ、スキー場のコースを滑っている様子を単にバーチャルで体験しても面白みはないでしょう。バイクであればゲーム性が出しやすいですが、スキーでゲーム性を出していくのは難しいかもしれません。そのため、何かゲーム性があるアプリを作ったらヒットするのではないでしょうか。

冬のキャンプニーズへの対応が必要

 昨今のキャンプブームで面白いのは、コロナ禍も影響してか、ソロキャンパーが増えていることです。誰かとまとまっていくより、一人で安全にキャンプを楽しみたいというニーズが増えているようです。また、「冬のキャンプ」というのは一定のニーズがあるはずなので、そのニーズを受け入れられる環境も作っていければと思います。例えばキャンプ場の一区画をソロキャンプ区画にできるのも面白いですよね。

安心・安全を確保してグリーンシーズンの需要を捉える

 グリーンシーズンのリゾート需要をいかにワーケーションにつなげられるかも重要です。特に長野県ではワーケーション関連の取り組みが多い地域です。しかし、需要があったとしても、結局は安心・安全な環境がないと人は集まらないので、今後のリゾートはシーズン問わず安心・安全の確保が重要となります。

若者層へスキーの魅力を伝える

 若年層に対していかにウィンタースポーツの魅力を伝えられるかも重要です。親世代がウィンタースポーツに熱中していても、その子供である若年層にうまくバトンが渡っていない印象があります。若年層にウィンタースポーツの価値を知ってもらうためにもスキーなどと組み合わせた修学旅行は重要です。ただ、滑るだけでは地域の魅力が伝わらないので、プラスの魅力を如何に提供できるかが今後カギになるでしょう。

コロナ禍において、どのようなICTやDXが重要となるのでしょうか?

通信環境の整備やICTでリゾートの安心・安全を確保

 スキー場内は通信環境が整っていないケースが多いので、安心・安全確保のため通信環境を整えることにはニーズがあるのではないでしょうか。通信環境が整っているとゲレンデ内で迷子になっても安全性が担保されます。また、滑っている時にゲレンデ脇の雪に突っ込んでしまい、そのまま雪の中から自力で脱出ができず、亡くなってしまうケースもあります。そういった事故を未然に防ぐためにも、通信環境の整備は必要です。大規模な設備でなくても、個人の携帯電話でも活用できる余地はあるのではないでしょうか。ウィンタースポーツだけでなく、アウトドアスポーツそのものがブームになってくる中で、安心・安全の需要は間違いなくあります。安心・安全だけでなく、ウィンタースポーツの魅力を伝えるためにも通信環境は必要です。

5Gを活用したイベントの配信・視聴

 ウィンタースポーツ関係の大きなイベントがあったとしても、現地へ見に行くことのハードルは高いです。そうしたときに5Gを活用してイベントの配信・視聴が出来れば面白いのではないでしょうか。例えば、スキーアルペン、スノーボード、スキージャンプなどの競技の様子を、屋内でマルチアングル映像により視聴できるなど、手軽に迫力ある映像を視聴できる環境があれば、新規のファン獲得にもつながるはずです。

リゾートにおけるワーケーションの効果の実証が必要

 現状ワーケーションがなかなか普及しないのは、本当に効果的なのかがはっきりしていないことが原因の一つだと考えています。ウィンタースポーツがいかにワーケーションに効果的か、実証実験を通じて証明出来れば、企業もワーケーションに取り組みやすくなります。ウィンタースポーツ以外でもサーフィンやマウンテンスポーツで上記の様な取り組みをやってみても面白いのではないでしょうか。

 パタゴニアなどの企業はコロナ以前からワーケーションに近い取り組みを行っていました。海沿いにオフィスを構え、午前中はサーフィンをできるような環境です。そういった環境で働くことが出来れば、製品開発にも生きてきます。すぐに遊べる・試せる環境があるからこそ新しい製品に対するアイディアも出てくるものです。

プロフィール

岩田 克己

岩田 克己(いわた かつみ)

(一社)日本スノースポーツ&リゾーツ協議会参与

「SNOW RESORT JAPAN」編集長

(株)トップエンド 代表

長年に渡り日本のスノーリゾート地域を取材し、専門誌の発行に携わる。インバウンド向け冊子「SNOW RESORT JAPAN」を創刊するなど、日本のスノーリゾート地域の魅力を国内外に発信し続けている。野沢温泉、蔵王、白馬八方、妙高赤倉、草津のクラシックリゾートの広域連携組織「マウントシックス(Mt.6)」の事務局も務める。近年では、日本のスノーリゾート地域の活性化とウィンタースポーツの振興を加速するため、「一般社団法人日本スノースポーツ&リゾーツ協議会」の設立に尽力。数多くの取材を通じて日本のスノーリゾート地域やウィンタースポーツの事情に精通し、様々な地域、ステークホルダーとネットワークを有する。


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