シリーズ連載 エネルギー業界変革時代の到来 ~脱炭素社会とデジタル化から考える新しい姿~
第1回 連載開始にあたって~エネルギー業界を取り巻く環境の変化~本シリーズの概要

社会基盤事業本部 社会・環境戦略コンサルティングユニット
マネージャー 井貝 敏幸(第5回)
マネージャー 竹内 崇(第2、4、5回)
マネージャー 渡邊 太郎(全体監修)
シニアコンサルタント 桑畑 みなみ(第3回)
コンサルタント 片上 衛(第2、3回)
シニアインフォメーションリサーチャー 山川 まりあ(第3回)

はじめに

エネルギー業界、とりわけ電力業界を巡る環境は目まぐるしく変化している。2011年3月の東日本大震災以降をきっかけに、2016年3月の電力小売全面自由化で約60年間続いた独占市場が終了し、20兆円ともいわれる市場が開放された。小売部門だけではない。発電部門においても、原子力発電所の長期停止、太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーの普及による電源構成の変化が生じ、送配電部門においては、2020年4月の発送電分離が行われた。

さらに、電力市場内部の変革だけではなく、自然災害によるリスクも顕在化している。2018年9月に発生した北海道胆振東部地震では、北海道エリアにおいて、1951年の9電力体制(1972年の10電力体制)成立以降では我が国初となる、一エリア全域における大規模停電(ブラックアウト)が発生し、大きな混乱が生じた。同エリアだけではなく、日本全体でも災害級の台風や大雨が毎年のように発生し、数万~数十万件単位の大規模停電が起きている。

エネルギー業界の外に目を向けても、外部環境は大きく変化している。世界では社会貢献や環境問題への対応が喫緊の課題として認識され、パリ協定やSDGsといった新しい国際的枠組みが生まれた。また、世界の機関投資家も、そうした持続可能性の追求が長期的な企業価値の向上につながると理解し、ESG投資として投資判断を行うようになった。また、AIやIoTといったデジタル技術が浸透・進化して人々の生活や企業の事業戦略に変化を与えている。この動きは、今般の新型コロナウイルス感染症の発生により、さらに加速することが想定される。

このように、内部、外部環境がともに大きく変化しているエネルギー業界だが、社会インフラ、経済活動の源としての重要な役割は今後も変わることはない。一方で、その役割を維持しつつ業界全体で成長していくためには、エネルギー政策や電力を利用する需要家のニーズへの適応や、デジタル技術を活用し、新たな事業機会やリスクに対応するための事業のシーズの検討を進めていく必要が出てくるなど、エネルギー業界のトレンドは着実に変化している。

本シリーズの概要

本シリーズでは、電力を中心とするエネルギー業界を取り巻く外部環境の変化や、エネルギーを享受する需要家のニーズの変化、さらにはデジタル技術を活用した新しいエネルギービジネスの出現等について、現在の業界の動向を整理する。このようなエネルギー業界の動向調査を通じて、最終的には2030年、2050年といった中長期におけるエネルギー業界のトレンドがどのように変化していくのか、その展望を整理することを目指す。

本シリーズの連載は全6回を予定しており、連載終了後は書籍として出版する予定である。なお、本経営研レポートの記載内容は、書籍掲載内容の一部となっている。

本シリーズの構成は以下の通りである。

本シリーズの構成

次回掲載を予定している第2回では、エネルギー業界を取り巻く外部環境(マクロトレンド)を、PEST分析に「Climate:気候的要因」を加えた5つの視点で分析し、エネルギー業界に与えうる影響を整理する。第3回では、エネルギー政策や電力を利用する需要家のニーズの変化を捉えるため、ESG投資に起因する企業を取り巻く環境の変化や個別企業の行動変化について、現在の動向をまとめる。第4回では、エネルギー政策やデジタル技術の浸透・進化がもたらす既存事業への影響を、発電、送配電、小売の各バリューチェーンで整理を行う。第5回では、マクロトレンドの変化やデジタル技術の進化とともに新しく台頭し、既存事業の形をディスラプト(破壊)する可能性があるマイクログリッドやP2P電力取引、水素エネルギーの活用可能性などの事業シーズについて動向を調査する。最終回である第6回では、第2~5回のまとめとして、需要家ニーズの変化や新たな事業シーズの台頭等に伴い、既に変革が起き始めているエネルギー業界の今後の展望について、今後想定される電力会社の形態等を整理する。

次回に向けて

第2回の連載では、エネルギー業界を取り巻く外部環境(マクロトレンド)を、PEST分析に「Climate:気候的要因」を加えた5つの視点で分析し、エネルギー業界が考慮すべき示唆を整理する。

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