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コラム・オピニオン

新年を迎えて

2024.01.04
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皆さま、明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。

龍の色は?

さて、今年も色の話から。今年の干支は辰=龍です。龍は十二支の中で唯一の伝説の存在なので、その色は様々に描かれます。私は緑色が龍の定番色だと思っていましたが、中国の故事によれば、金(黄)、白、赤、青、黒の五色それぞれの龍がいるそうです。

五色の龍とお酒

面白いことに、お酒には、金、白、赤、青(蒼)、黒のすべてに龍がつく商品があります。

「金龍」(宮城県 一ノ蔵酒造)、

「白竜」(福井県 吉田酒造)、

「赤龍峰」(焼酎、鹿児島県 濱田酒造)、

「越乃景虎 蒼龍窟」(新潟県 諸橋酒造)、

「黒龍」(福井県 黒龍酒造)、です。

お正月用に、これらのうち手頃な銘柄を買い揃えました(下の写真)。龍のつく名前のお酒が多いのは、「龍が水の神様とされるから」(一ノ蔵酒造)、「黒龍川という川の名前から」(黒龍酒造)など、水と関係が深いようです。

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(出所)筆者購入・撮影。左から金龍、黒龍、赤龍峰、蒼龍窟、白龍。全て720ml。約1600円~3000円

希少性を増す真水

水は人間のみならず、すべての生き物にとって貴重な存在ですが、地球温暖化の進行により、水の確保に影響が出ると言われています。それは必ずしも「温暖化=水不足」という単純な図式ではありません。気温上昇や夏の長期化で、干ばつが多い地域の水不足が一段と深刻化する一方で、蒸発の活発化が多雨地域の降水量を増やす面もあるからです。現時点でも、国別の年間降水量には大きな格差があります(図1上)。人口が多い国ほど水需要は大きいので、人口当たりの降水量をみると、より格差が大きくなることがわかります。(図1下)。

<図1>人口当たり降水量の偏在状況(2020年)

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(出所)弊社作成。

今後の人口増加の影響

さらに、新興国における今後の人口増加も水不足の要因となります。国連の世界人口推計によれば、2050年には、ナイジェリア、エチオピア、コンゴ、エジプト、ケニアなどアフリカ・中東地域の人口が大幅に増加すると予想されています(図2)。これらのうち、現在でも人口当たり降水量の乏しい国は、温暖化による水不足の影響をより強く受けると考えられます。

<図2>2050年における人口増加予想

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(出所)国連・世界人口推計より弊社作成。

真水の確保に向けて

つまり、地球温暖化は「水の偏在性」を増幅すると考えられます。なお、地球温暖化によって北極の氷が解け、海面が上昇していますので、地球全体の水の量が減るとは限りません。重要なのは、人間や生き物が摂取できる真水の量を、必要な地域で確保できるかどうかです。

地球温暖化に伴う水不足問題への抜本的な対応策は脱炭素化に向けた取り組み強化ですが、干ばつ地域の被害は年々深刻化していますので、真水の偏在に対する対応も世界の重要課題と言えるでしょう。そこで、真水の偏在問題に対するソリューションを考えてみましょう。

ソリューション1

第一に、水の偏在を経済的に克服するためには、水の豊富な地域から水不足の地域へと真水を運ぶことです。それは、民間では貿易取引で行われ、政府間ではODAの対象になるのでしょう。現在、原油を運んでいるタンカーやパイプラインは、将来真水を運ぶ役割を果たすかもしれません。

ソリューション2

第二は、真水が豊富で人口に余裕のある地域に、水不足の地域から人が移動することです。移民には民族的・文化的・制度的な障壁がありますが、経済的には、上記の「真水ビジネス」で所得を増やせる国は、移住者受け入れの余地が拡大する可能性があります。

ソリューション3

第三に、科学技術の面では、海水淡水化技術を進化させて活用することが有効だと思います。なぜならば、地球の表面水に占める淡水の比率は僅か0.01%に過ぎず、99.99%は海水だからです。進化とは、大量の海水を淡水化して安価で安心して使えるように、淡水化技術の効率性・安全性を改善することです。海水淡水化市場の規模は、現在では年間1兆円程度とされていますが、今後大幅な拡大が見込まれます。

この点、日本の海水淡水化技術は、プラント、ポンプ、浸透膜などの分野で優れた性能を誇っており、現在でも中東やアフリカ諸国のプロジェクトで数多く採用されています。今後は、脱炭素化にも適合し、環境により配慮したイノベーションが求められます。

例えば米国では、海水から自然蒸発する水蒸気を集め、それを凝縮して真水を得る技術が開発されています。海水淡水化を巡るイノベーションは、今後日本が国を挙げて取り組むべき重要分野のひとつではないでしょうか。

おわりに

最後に、私の故郷岩手県から、龍の名を冠したお酒をもうひとつ紹介します。岩手銘醸社の「奥州の龍」です。大谷翔平選手似の武士をモチーフにした、バッターとピッチャーの2銘柄があります(写真)。昨年、大谷選手は米大リーグで日本人初のホームラン王に輝くなど、二刀流での大活躍で、多くの人々に勇気を与えてくれました。大谷選手は、ルーティンを重視しながら変化を恐れず、明るい未来を自ら切り拓くことの大切さを示し続けています。

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(出所)筆者購入・撮影。左が「奥州の龍・バッター」(純米大吟醸)、右が「奥州の龍・ピッチャー(純米吟醸)。二刀流セットで約6千円。大谷選手のドジャーズ移籍を受け、3月中旬からブルーの商品も発売予定。

当社は、パーパスとして、”Design Info-future”「新しい社会の姿を構想し、ともに情報未来を築く」を掲げています。そして昨年末、新たにビジョン“Lighting the way to a brighter society”「よりよい社会への道筋を照らす」を定めました。

現代社会は、複雑さを増すとともに急激に変化しており、将来を見通すことが難しい時代となっています。当社は、これまでにない視点で、変えるものと変えないものを見極め、クライアントの皆様の課題解決を支援することによって、よりよい企業・社会へと発展できるよう、未来への道筋を照らす存在を目指したいと考えています。それがどんなに長く、曲がりくねった道であっても!

本年もよろしくお願い申し上げます。

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(出所)筆者画。“The Long and Winding Dragon Road”

Profile
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Miyanoya Atsushi
宮野谷 篤
取締役会長
株式会社NTTデータ経営研究所
岩手県出身。1982年東北大学法学部卒業。同年日本銀行入行。金融市場局金融調節課長、金融機構局金融高度化センター長、金融機構局長、名古屋支店長などを経て2014年5月理事(大阪支店長)。2017年3月理事(金融機構局、発券局、情報サービス局担当)。2018年6月から現職。
専門分野は、金融機関・金融システム、決済・キャッシュレス化、金融政策・金融市場調節。
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