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お知らせ

女子美術大学と連携し、デザインを通じて社会に変革をもたらす共創型「行動デザイン論」を実施

~2025年度参院選挙投票率を21ポイント向上させたアイデアも創出~
行動デザインサービス(ナッジ)
2025.09.05
株式会社NTTデータ経営研究所

株式会社NTTデータ経営研究所(所在地:東京都千代田区、代表取締役社長:山口 重樹、以下 当社)は、共創型リーダー人材の養成を目指す女子美術大学共創デザイン学科と連携し、2024年度と同様に、デザインを通じて社会課題に解決する行動変容アプローチを検討する「行動デザイン論」の講座を2025年5月から8月までに計10回実施しました。

講座では、「若者の政治参加、投票率向上」「カスタマーハラスメント防止」「SNSでの誹謗中傷防止」「インターネット中毒防止」「オーバーツーリズム対策」「物価高騰下での『食費節約』と『健康意識』の両立」といった社会課題について、行動変容につながるデザインのアイデアやその効果検証を、学生同士がグループワークを通じて共創しました。

本講座の取り組みを通じて、「デザインの力で、国や社会は変えてみたい」と感じる学生が26.4pt増加、「他者と協力することで、国や社会は変えてみたい」と感じる学生が9.4pt増加するなど、多くの学生が「共創」や「デザインを通じた社会課題の解決」に係る意識変容がみられました。

また、アイデアを企画するのみでなく、「若者の政治参加、投票率向上」を企画した学生グループが、7月20日に投開票が行われた参議院選挙前1週間に他の同級生に対してSNSを通じて1日1話の「選挙漫画」を発信してアイデアの効果検証を実施した結果、同大学2年生の投票率が21pt増加する(53%→74%)という成果をあげることができました。

背景と目的

当社の行動デザインチームは、人間の行動特性や心理傾向を踏まえ、人間の本質に合わせて行動を変える支援を通じて人のウェルビーイングの実現や社会課題・ビジネス課題の解決にチャレンジする「行動デザインコンサルティング」に取り組んでいます。

また、行動をデザインする施策立案や実証実験を通じた効果検証やエビデンスづくりなどのコンサルティングから得た知見やノウハウを活かし、「生活者の行動変容」を産学官での社会実装を実現するために、「施策・サービスの提供者側の変革」を実現する、共創型の「行動変容デザイナー」創出支援(= キャパシティ・ビルディング)にも取り組んでいます。

そこで、共創型リーダー人材を養成する目的で2023年に新設された女子美術大学共創デザイン学科と連携し、2024年度から行動デザインの実践方法のノウハウを提供する「行動デザイン論」を開講し、2025年度も2025年5月から8月まで計10回にわたり、同学2年生58名が身近な社会課題の当事者として、デザインの力で課題解決に向けた行動変容を促すアイデアをグループワークで共創する、体験型講座を実施しました。

参考)「女子美術大学と連携し、社会課題を行動デザインで解決する講座を実施 ~デザインの力で行動から社会課題を解決する共創型リーダーを目指して~」(2024年9月)

2025年度「行動デザイン論」の講義の様子

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学生が考案した行動デザインのアイデア

「若者の政治参加、投票率向上」「カスタマーハラスメント防止」「SNSでの誹謗中傷防止」「インターネット中毒防止」「オーバーツーリズム対策」「物価高騰下での『食費節約』と『健康意識』の両立」の計6つのテーマについて、10グループに分かれてグループワークを通じた共創型で行動デザインのアイデアを考案しました。

 

アイデアの考案に際しては、座学で学んだ行動変容に係る基礎知識を踏まえて、デスクトップリサーチや校外の事例リサーチ、学内でのアンケート調査、学生同士のピアフィードバックなどを通じて、2ヶ月間にわたりアイデアをブラッシュアップしました。

学生が考案した社会課題解決の行動デザインアイデア

テーマ(順不同)

アイデア概要

行動変容に繋げる主な工夫点

若者の政治参加、投票率向上

■ 若者にとって魅力的なコラボ「投票済証」や「選挙割」の存在を周知するポスター・チラシを作成し、選挙に行くきっかけを作る

■ 大学オリジナルキャラクターを用い、オリジナル投票済証デザインを作成

行政職員へのインタビューや学生へのアンケート結果から「政治に興味はあるが、よくわからない」というボトルネックがあると仮説を立てて、選挙に対する堅いイメージを和らげるアイデアを検討(魅力的な投票済証がSNSで拡散されることで、「同調効果」も活用)

■ 若者が日々触れるSNSで、政治や選挙に関する情報を提供するアイデアとして「選挙漫画」を企画

■ 学生同士のLINEグループで、7/20参議院選挙前に1日1話の「選挙漫画」を発信

選挙の街頭演説やポスターのみでは若者世代に訴求できない(行動ハードルを越えられない)という仮説から、毎日気軽に見ることができるSNS「選挙漫画」を活用することで、選挙の「習慣形成+行動コスト軽減」の実現を図る

■ 日本では認められていないものの、選挙の物理的ハードルを解消し、若者の投票率向上に向けて期待されている「オンライン投票」Webサイトのアイデアを企画

■ Webサイト画面遷移イメージや、併せて「オンライン投票」を促進させる広告ポスターを作成

Webサイトの動線上には、投票までのステップの提示や、候補者や政党の分かりやすい情報提示、投票期日までの残り時間を表示させる等、投票行動をEasyにする多様な機能のアイデアを検討

カスタマーハラスメント防止

■ 店員への怒りを感謝に変換する(店員に「ありがとう」を伝える)ことでポイントが貯まる「Thank youらりー」スタンプカードを作成

■ 「感謝」が溢れる店内から、「感謝」が溢れる社会に繋がることを期待

店員への迷惑行為を止めさせる、ではなく、別の行動として「店員に感謝を伝える」行動を促すために、ポイントカードという金銭的インセンティブを活用したアイデアを検討

■ カスタマーハラスメントに対して、ナッジを活用した環境整備として、実現性の高い3つのアイデアを企画

①初心者マークや苦手な業務を名札に記載

②店員が安心できるよう、店舗側で対応マニュアルを作成

③双方が安心できるよう、意見に対して真摯に向き合う意味合いでの防犯カメラや録音機を設置

カスタマーハラスメント自体を自覚することが難しいという課題感から、苦手な業務や真面目な姿勢を開示する店員に対して共感できるよう、「感情ヒューリスティック」を活かしたアイデアを検討したり、店員、客、責任者・経営者それぞれの視点での環境整備できる多様なアイデアを検討

SNSでの誹謗中傷防止

■ 有名人の中でも「推し活」に着目してアイドルにターゲットを絞り、アイドルへの誹謗中傷を抑制するオリジナル漫画を企画、作成

■ SNS利用者に対して目に付きやすいSNS媒体で広告配信することを企画

「フレーミング」や「確証バイアス」等を活用して、漫画のストーリーをバッドエンドにすることで、自分自身を漫画の主人公と重ね合わせて、誹謗中傷のリスクを自覚できるようなアイデアを検討

■ 無自覚に誹謗中傷をしている可能性がある小中学生を対象とした、誹謗中傷を抑制する新しいSNSサービスを企画

■ 誹謗中傷の恐れがあるアカウントに対しては、AIチャットボットがアラートを出すだけではなく、親身になって相談してくれるカウンセリング機能も搭載

未来の誹謗中傷を提言することをねらいとして、発達段階である子どもが適切な言葉の使い方を感じ取り学ぶことができるように、「ポジティブフレーミング」を活かした多様な機能を搭載したSNSサービスのアイデアを検討

インターネット中毒防止

■ インターネットとの向き合い方を変えて、日々の学び等、より良い生活に繋げるための、「スマホで学べることを紹介する」デジタルサイネージ広告のアイデアを作成

■ スマホを操作していないタイミングに訴求できるよう、電車内のビジョン広告でクイズ形式での実施を検討

地図やニュース、買い物等、必ずしも「インターネット利用時間が長い=中毒」とは言い切れないことから、中毒の主な要因であるSNS閲覧に代替する行動として、インターネットの有効活用方法というメリットを訴求するアイデアを検討

オーバーツーリズム対策

■ オーバーツーリズムに伴う観光地におけるゴミのポイ捨て問題に対して、外国人観光客をターゲットにゴミ箱とおみくじアプリを連動させた「喋るおみくじゴミ箱」のアイデアを作成

■ 「おみくじ」をデジタル化することで、紙としてゴミにならないような工夫も検討

EAST+Fフレームを有効活用して、観光地における「おみくじ」という日本文化を感じることができる観光要素を織り交ぜつつ、ゴミ箱のモチーフを縁起の良い三毛猫にしたり、外国人が楽しむことができる文字や色合いの「おみくじ」にすることでエコとツーリズムを両立するアイデアを検討

物価高騰下での「食費節約」と「健康意識」の両立

■ 米をはじめとする物価高騰の中、安価なPのアイデアを作成

■ 食材を選びつつ栄養バランスとの両立を目指し、備蓄米を活用した栄養レシピの開発、十六穀米やオートミールなどの併用による栄養バランスを訴求する店頭PO

ブランド米やブレンド米、備蓄米等の様々な種類の米の特徴を比較することができる早見表等を作成することで、単に備蓄米や米代替品を訴求するのではなく、幅広い選択肢の情報を提供するアイデアを検討

学生が考案したアイデアの例1:若者の政治参加、投票率向上A

「魅力的なオリジナル投票済証、投票済証や選挙割の存在を周知するポスター・チラシ」

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学生が考案したアイデアの例2:オーバーツーリズム対策

「外国人観光客をターゲットにゴミ箱とおみくじアプリを連動させた、喋るおみくじゴミ箱」

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学生が考案したアイデアの例3:SNSでの誹謗中傷防止A

「小中学生を対象とした、誹謗中傷を抑制とカウンセリング機能を持つSNSサービスコンセプト」

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学生が考案したアイデアの例4:カスタマーハラスメント防止A

「店員への怒りを感謝に変換することを促す「Thank youらりー」スタンプカード」

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学生が考案したアイデアの例5:若者の政治参加、投票率向上B

「SNSを通じて政治や選挙に関する情報を提供する、オリジナル選挙漫画」

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また、上記の「アイデアの例5:若者の政治参加、投票率向上B」では、アイデアを企画するのみでなく7/20に投開票が行われた参議院選挙前1週間に、他の同級生に対してSNSを通じて1日1話の「選挙漫画」を発信して、アイデアの効果検証を実施しました。

その結果、同大学2年生の投票率が21pt増加する(53%→74%)という成果をあげることができました(学生による検証結果)。

講義を通じた学生の変化

計10回の講座で各テーマに取り組んだことにより、学生に「共創」や「デザインを通じた社会課題の解決」に係る意識変容がみられました(事前アンケート:n=53、事後アンケート:n=47)。

 

「デザインの力で、国や社会は変えてみたい」と回答した割合は26.4pt増加し(56.6%→83.0%)、講義前に「いいえ」「わからない」と回答した学生が講義後に「はい」に変化した割合は23人中13人(56.5%)と半数以上の学生の意識に変化がありました。

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また、「他者と協力することで、国や社会は変えてみたい」と回答した割合は9.4pt増加し(56.6%→66.0%)、講義前に「いいえ」「わからない」と回答した学生が講義後に「はい」に変化した割合は23人中7人(30.4%)と3割近くの学生の意識に変化がありました。

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<学生の声>

自分が当事者になるテーマで考えることで、他人事ではなく、自分事として向き合えるようになったのが印象的でした。今後も、自分の中の気づきや体験を出発点に、行動につながるアイデアを考えていきたいと思います。

社会問題に関する調査や企画を通して、今まで表面的にしか捉えていなかった課題に対する理解が深まりました。人々の感じ方や行動の背景には複雑な要因があることを知り、多角的な視点を持つことの大切さを実感しました。これからも一つの答えにとらわれず、柔軟に考えていきたいです。

自分だけの力では難しいかもしれないが、皆のデザインの力に社会を変化させることができると信じるようになりました。 美的に美しいものを作ることだけがデザインだと思っていましたが、意外と多様な所に多様なカテゴリーのデザインが必要だということを分かるようになる授業でした。

行動デザインを通して、人の行動が少しずつ変わっていくことに達成感を感じた。誰かにポジティブな影響を与えることで、その人の生活だけじゃなく、周囲や社会全体にも良い影響が広がっていくと思う。

行動デザインの講義を通して、身の回りの社会問題についてより意識し、考えるようになりました。また、解決策をグループディスカッションすることによって、グループメンバーが社会問題についてどう考えているのかも分かって面白かったです。

女子美術大学共創デザイン学科 ご担当者様コメント

株式会社NTTデータ経営研究所 西口 周 氏ご指導のもと、共創デザイン学科2年生が多様な現代の社会課題を身近な課題として取り上げ、行動を促すデザインのプロセスを学びました。

人を動かすデザインとは何か、グループごとに校内に留まらず校外まで観察の幅を広げ、これまでに無い新しいデザインをじっくり追求することができました。

これから様々な課題に取り組む「共創型リーダー」を目指す学生たちにとって、自分たちのデザインが人々の行動を変えるきっかけになることを知り、大きく成長する一歩になったと感じます。

株式会社NTTデータ経営研究所 西口 氏をはじめ、行動デザインチームの皆様のご尽力に深く感謝申し上げます。

当社では、女子美術大学との共創経験を通じて、行動デザインに取り組む共創型人材育成(= キャパシティ・ビルディング)に取り組み、行動を変えることで社会課題やビジネス課題を解決する人材のすそ野拡大に取り組んでまいります。

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株式会社NTTデータ経営研究所

ライフ・バリュー・クリエイションユニット

マネージャー  西口 周

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