近年の人口動態を踏まえたこれからの地方創生のあり方
~限界まで元気な地域・集落づくりに必要な2つのポイント~

第3回 住民が最期まで安心・安全・元気に暮らすための「官民連携」

社会基盤事業本部 ライフ・バリュー・クリエイションユニット
スマートシティ&ビレッジSXグループ
マネージャー 古謝 玄太
シニアコンサルタント 安生 直史
コンサルタント 山崎 咲歩

1.官民連携事業に対する機運の高まり

 2021年6月、令和2年(2020年)国勢調査の速報版が発表された。その中では、全国の82.4%(1,416市町村)の市町村が5年前(2015年)と比べて人口が減少したことが示されている。2005年以降の国勢調査結果の推移を見ても、多くの市町村で人口減少の傾向が継続し、かつその大多数で減少幅が拡大傾向にあることが分かる。首都圏など一部の地域を除く多くの市町村では、今後も人口減少が続くことで、地方公共団体で働く職員の減少や予算の削減につながり、「官」が中心になって住民向けに提供している医療、福祉等の様々な地域内サービスを維持することがより一層難しくなっていくことが推察される。

図1 人口増減率階級別市町村数の割合
図1 人口増減率階級別市町村数の割合
出所)総務省統計局 統計 Today No.174 「令和2年国勢調査 -人口・世帯数(速報値)を公表-」より

 政府が2019年に定めた「第2期『まち・ひと・しごと創生総合戦略』」(2019年12月20日閣議決定、以下「第2期総合戦略」)では、地方創生の目指すべき将来像として「将来にわたって『活力ある地域社会』の実現」と「『東京圏への一極集中』の是正」を共に目指すこととされている。そのための施策パッケージの1つに「全世代・全員活躍型“生涯活躍のまち”」が掲げられているが、これは第2期総合戦略の横断的な政策目標の1つ「多様な人材の活躍を推進する」につながるものとして定められた施策であり、「誰もが居場所と役割を持つ地域社会の実現」を目指す内容となっている。そして、こうした地域社会の実現に向け、具体的な取り組み内容の一つとして「官民連携による多様な主体の社会参加の促進等」が挙げられている。

図2 全世代・全員活躍型「生涯活躍のまち」のイメージ
図2 全世代・全員活躍型「生涯活躍のまち」のイメージ
出所)内閣官房・内閣府総合サイト 地方創生 生涯活躍のまち~全世代・全員活躍型のコミュニティづくり~より

2.官民連携が求められる理由

 なぜ、今「官民連携」が求められているのか。そこには、民間企業、住民などそれぞれの立場によって様々な理由があるが、「人口減少が進む地方公共団体」の立場で考えた際には、主に以下の2点の理由が想定される。

 1点目は資源を有効に活用するためである。近年、インフラ整備や産業振興といった従来型の行政の役割に加えて、大規模災害の発生に伴う防災対応の強化、少子高齢化への対応として結婚支援や子育て施策の充実、社会保障分野の対象者の増加など、社会情勢の変化に応じて多くの業務が生まれている。一方で、地方公共団体の職員数はそれほど変わらないなど、ヒト・モノ・カネなどのリソースは限られている。この傾向は、今後も高齢化や過疎化が進む地域の地方公共団体においては続くものと考えられる。そこで、地方公共団体が自分たちだけでは解決が難しい課題に対して、遊休施設など現在有効に活用できていない地域資源を民間企業に活用してもらうことで、その解決につながる可能性がある。また、民間企業のネットワークを活用することで、行政サービスではサポートが行き届かない住民に対し、間接的に支援を行うことができるというケースも考えられる。

 2点目は、住民を巻き込みやすい、ということである。例えば健康や福祉サービスなど住民向けに直接サービスを提供する民間企業と連携し事業に取り組むことで、官だけでは関わることのできなかった、つまり行政サービスでは対応しきれなかった多くの地域住民を巻き込むことができる。これによって、希薄化が進む地域内コミュニティの活性化にもつながる可能性がある。

3.どのように官民連携事業の検討を進めるべきか

 それでは、官民連携を推進したいと考える地方公共団体では、どのように検討を進めていくべきなのか。ここでは、検討の進め方の一例を紹介したいと思う。

 まず、官民連携で解決したい地域課題の設定を行う。ここで重要なのは、地方公共団体のみでは解決が難しいものや、民間企業が実施しているが地方公共団体が支援すべき社会性の高い事業(例えば、高齢者の見守りなど)について、官民で連携する必要性があり、また民側にも連携するインセンティブが働く課題を設定することである。

 次に、地方公共団体と民間企業が持っている資本を整理した上で、連携方策を検討することである。ここでの資本とは、経営資源としてよく語られる“ヒト・モノ・カネ”に加えて、施設などの“空間”が主なものとして想定される。この資本を整理した上で、行政では不足する資本を民間企業によって補う、または民間企業・団体が事業推進にあたって不足している資本を行政がサポートする、といった具体的な連携方策の検討に移る。

 全国では様々な官民連携事業が展開されているが、おおむね社会課題の解決に対し、官と民それぞれが持つ資本を上手く組み合わせて実施している事例が多い。ここで、上述した4つの主要な資本ごとの官民連携の考え方と具体例について紹介する。

 一つ目は“ヒト”の連携である。これは、行政のみ、民間団体のみでは事業推進に不足する人材やスキルなどを補い合うという考え方である。具体的には、大学などの教育機関と連携することにより、地域にとっては学生のアイデアや体力を活用しながら地域の魅力づくり事業を推進することができ、教育機関にとっては人材育成・研究実践の場とすることで、継続的な関係構築・事業推進を図っている事例がある。

 二つ目は“モノ”の連携である。官民がそれぞれ保有する設備や備品などを他の用途と組み合わせて有効に活用する考え方である。例えば、バスなどの公共交通機関を活用した貨客混載の事例が挙げられる。

 三つ目は“カネ”の連携である。これは主に、官が民の事業推進のために国、地方公共団体の各種補助金やソーシャル・インパクト・ボンド1(以下「SIB」)といった様々なスキームを活用し、資金を提供するという考え方である。他にも行政機関からの直接の資金提供ではなく、クラウドファンディングなどを活用し、事業理念に共感した多くの人から広く寄附などの形で資金調達を行っている事例もある。

 そして四つ目は“空間”の連携である。これは、官民がそれぞれ保有する空き店舗・空き地などの遊休施設を効果的に活用し合うという考え方である。具体的には、廃校となった学校施設などの行政財産を民間に貸し出し、住民が集まるコミュニティの場や宿泊施設として活用する事例がある。

 当社では、内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局の調査事業において全国の官民連携による地域課題解決のユースケースをまとめた「官民連携事業モデルHOWto事例集」を策定した。事例集の中では、官民連携で地域課題を解決している全国64の事例について、どのようなアプローチやヒントを組み合わせて実施しているか取りまとめており、地方公共団体、民間企業・団体問わず、地域の課題を解決するために官民連携を検討する上での気づきになる事例も多数盛り込まれているため、ぜひ参照いただきたい。

https://www.chisou.go.jp/sousei/about/ccrc/etc/chousakenkyu_r01/pdf/0521syougaikatsuyaku-kanmin_pfhowto-ntt.pdf

図3 官民連携事業モデル 6つのアプローチと22のヒント
図3 官民連携事業モデル 6つのアプローチと22のヒント

1 ソーシャル・インパクト・ボンド:行政から民間へ事業委託する際の手法の1つ。民間が実施する事業の成果指標をあらかじめ設定し、事業実施後にその成果に対する達成度に応じた報酬を支払う成果連動型の仕組み。

4.地域課題解決の仕組みを構築する事業者を資金面で支援 ~雲南市の場合~

 ここでは官民連携の具体的な事例として、上述の「官民連携事業モデルHOWto事例集」にも取り挙げている島根県雲南市におけるコミュニティ・ナース・カンパニー株式会社(以下「CNC」)の取り組みを紹介したい。高齢化の進展により地域住民への均一的な行政サービスの提供が難しくなりつつある地方公共団体が、地域住民とのネットワークを活かしてきめ細かな支援を行う民間企業の取り組みに対し、主に資金面の課題を支援することで連携している事例である。

 雲南市に拠点を置くCNCは、もともと訪問看護や生活支援サービスといった事業を展開する企業であり、地域住民との信頼関係や強いネットワークを構築していた。こうした事業を推進する中で、地域住民の中でちょっとした困りごとを解決する仕組みが必要と考え、地域のネットワークを活かし、地域内で困っている人とそれを助けたい人(≒“おせっかい”したい人)をつなぐ活動「地域おせっかい会議」を始めることとなった。ここでの“おせっかい”とは、例えば買い物支援や草刈り、子ども達が遊べる場の提供など、日常のちょっとした困りごとの解消につながるような内容である。

 しかし、こうした事業において高い手数料を取ることはできず、当該事業単独で採算性を確保することは難しく、運営資金を確保することが課題となっていた。

 一方、雲南市は市内の高齢化率が約4割と著しく高齢化が進む中、合併に伴う広域化で市内一律の福祉サービス提供が困難になるなど、行政サービスでは対応しきれない人が出てきていることが課題となっていた。こうした中で住民向けの困りごと解決のサービスを展開するCNCの取り組みを支援するために、主に資金面での連携を行っている。まずは、地方創生推進交付金を活用し、運営資金の援助を行った。さらに、CNCの事業継続・発展のために、SIBを活用した運営資金充当スキームを検討しているところである。SIBの評価指標については、”おせっかいする側”も”おせっかいされる側”も活動を通じた社会参加によって介護予防効果が得られ健康で生き生きと生活する人が増えることを想定していることから、「健康寿命の延伸」としている。なお、現在はSIBの成果などについて検証を進めているところである。

図4 地域おせっかい会議
図4 地域おせっかい会議
出所)CNC資料より

5.終わりに ~資源を上手に分かち合うシェアリング型官民連携のススメ~

 本記事で取り挙げてきた官民連携の考え方および取り組みは、近年、国内のみならずISO規格化など国際的にも関心が高まっている“シェアリングエコノミー”の考え方にも通じるところがあるだろう。

 すなわち、人口減少社会において地方におけるヒト・モノ・カネ・空間といった資源が限られる中で、官民それぞれの主体が持つ資源を持ち寄って上手に分かち合う(=シェアリングする)ことで、そこで暮らす人々が幸せになるサービスを持続的に提供することにつながるのではないかと考えている。

 本レポートをご覧になった地方公共団体や、地域で様々な活動に取り組む民間企業・団体の皆様が、今一度それぞれが持つ資源を整理し、それを外部の主体が持つ資源と上手く組み合わせることで社会課題・地域課題の解決につながる事業が各地で生み出されていくことを期待したい。

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