バーチャル空間でリアルなコミュニケーション
~VRユニット会の試み~

NTTデータ経営研究所 情報戦略事業本部
ソーシャル&ビジネスデザインユニット/デザインストラテジーグループ
マネージャー 木田 和海

VRによるリモートでのコミュニケーション活性化

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、ワークスタイルにおいては対面の機会が減少し、代わりにビデオ会議ツールを用いたミーティングが増加するなど、非対面・リモートでのコミュニケーションの頻度が急増した。非対面・リモートでのコミュニケーションは、物理的な距離や空間キャパシティの制約を受けないこと、受発信する情報をリアルタイムで付加したり、自らに最適化した情報の受け取り方・発信の仕方が選べたりすることなど、さまざまな利点がある1。しかし、現在のビデオ会議ツールを主体としたコミュニケーションでは、現実空間でのリアルな体験がもたらす利点を超える体験に至っておらず、その結果としてリモートワーク環境におけるコミュニケーションのすれ違いや心理的な孤立感をもたらすことにも通じている。

このようなリモートワーク環境における問題点の解決や新たな体験の創出を、デジタル技術を用いて実現させる取り組みは「リモートワークテック(Remotech)」と呼ばれる。その1つとしてVR(仮想現実)空間上に仮想のワークプレイスを設け、その中でミーティングなどのコミュニケーションを図るといったトレンドも見られる。

そこで、弊社のソーシャル&ビジネスイノベーションユニット(以降、「当ユニット」と記す)では、VRやAR(拡張現実)、MR(複合現実)といったデジタル技術の活用策の探索を兼ねつつ、ユニット内コミュニケーションのさらなる活性化を図るため、VR空間内で「VRユニット会」を開催した。本稿ではVRユニット会の実施結果を紹介する。

1 浅井杏子、田島瑞希「ウィズコロナ時代のデジタルを活用した新たな体験価値」、情報未来 2020年9月号。
https://www.nttdata-strategy.com/knowledge/infofuture/65/report05.html

VRユニット会:VR空間上でアバターが参加

VRユニット会は、当ユニットに所属するコンサルタント達がバーチャル空間上のミーティングスペースに集まり、業務上の情報共有や意見交換などのコミュニケーションを図る試みである。当ユニットのコンサルタント達にVRヘッドセットを1人1台配布し、各コンサルタントはVRヘッドセットを用い、VR会議ツール2上に設けたミーティングスペースに自宅からアクセスする。VRミーティングスペース上では、各自の顔写真をはめ込んだ3Dアバター(分身)を操作し、アバターを介してコミュニケーションを行うという仕組みである。

2021年1月に第1回のVRユニット会のトライアルを実施した後、2月に開催した第2回では通常の情報共有や意見交換に加え、簡単なVRゲーム大会も行うなど、ユニット内の交流を図った。

2 「Spatial」というVR会議ツールを試験的に用いた。

開催の様子:VRならではのコミュニケーション体験

VRユニット会は、山々に囲まれ、青空が見える開放的なホールで開催された。目的や好みに応じてミーティングスペースの環境やデザインを自由に変更できることは、現実空間にはないVR空間ならではの利点である。

図1:広々としたVRユニット会の会場
図1:広々としたVRユニット会の会場

開催時刻になると、広々としたホールの中に当ユニットに所属するコンサルタント達が続々と集まり、VRユニット会が始まった。参加者は、現実空間では異なる場所からアクセスしているが、VR空間のホール内に各自のアバターが一堂に会すると、あたかも同じ場所に集合しているような感覚になった。VRヘッドセットからは、アバターの位置に連動して遠近感や方向感のある音声が聞こえてくるため、「声が後ろから聞こえてきた!」というような想像以上のリアルさに驚きを隠せない発言もあった。

VR会議ツールでも、一般的なビデオ会議ツールと同様に資料投影やホワイトボード、付箋を用いた文字記入などが可能である。加えて、空間上に複数の資料を同時に投影したり、記入した付箋を空間上に並べたりするなど、VRならではの体験も可能である。今回のVRユニット会においても、発表者が複数の資料をVR空間上に投影させながらプレゼンテーションを行い、プレゼンテーションの聴講者はソファに腰掛けるなどしながら発表を聴講し、意見交換を行った。

図2:VRユニット会の様子
図2:VRユニット会の様子

VR空間内ではアバターを介して発言することも寄与してか、ミーティングの場において役職や立場を超えたフラットな関係性を形成しやすく、多くの参加者から活発な意見交換がなされた。参加者からも、通常のビデオ会議やリアル・対面の会議と比べて発言や意見表明がしやすかったという意見が複数挙がった。

VRユニット会の本編が終了した後、各自が別のVR空間に移動してVRゲームを楽しんだ。今回は、2チームに分かれてペイント銃を使ったシューティングゲーム3をプレイした。ゲームでは海外のエンターテインメント会場を対戦フィールドとし、両チームのプレーヤーは周囲を歩いたり見渡したりしながら対戦相手を探し、見つけた瞬間にペイント銃を手に持って絵の具を撃つことで得点を競った。比較的広い対戦フィールドで相手を探している最中に背後から不意に絵の具を塗りつけられて(撃たれて)驚いてしまうなど、2次元のゲームとは異なるリアルなゲーム体験となった。

図3 ペイント銃を用いた対戦の様子
図3 ペイント銃を用いた対戦の様子

VR空間上でユニット会を実施した結果、一般的なビデオ会議ツールと異なり、身体性を伴うリアルな体験が得られた。3Dのアバター同士が仮想的に空間を共有することで、あたかも他の人が近くにいるような感覚が得られ、結果としてコミュニケーション面で一体感を感じられた。通常のビデオ会議に比べ、VR空間でのミーティングは明らかに楽しかったという感想や、VR空間のほうが活発なコミュニケーションとなり、メンバー間での感情的な交換が促されたという感想からも一体感の高まりが分かるであろう。

一方で、VRヘッドセットを装着したまま文字を入力するには習熟が求められる点、手書き操作が右手側のコントローラーのみでしかできず、左利きの人にとって操作が難しい点など、VRで身体性が高まったことにより生じるユーザー体験上の問題点も浮き彫りになった。また、「VR酔い」と言われる、VRコンテンツを体験すると乗り物酔いのような症状に陥る人も見られた。このような新たな問題点が解消されれば、定常的に業務でVRを用いる際の体験上のハードルは下がるものと考えられる。

3 「Rec Room」という、パーティーゲーム内のゲームを試した。

VRユニット会に参加したコンサルタントの声

  • 「現実にはない開放的な会議室であったため、リラックスした気分で参加できた点が良かった」
  • 「アバターの動きが変で面白かった。没入感が高く、VRヘッドセットを外すまで『会合に集まった』感覚を強く持った」
  • 「文字入力に時間がかかったり、資料の提示やページ送りがもたついたりするなど、使いにくさを感じる場面があった」
  • 「1時間程度のミーティングだったが、画面酔いしてしまった」

VRの3つの活用可能性

今回試みた「VRユニット会」を通じて、VR技術に3つの活用の可能性を見いだせた。

  1. イベントでのリアルな交流:仮想のイベントスペースなどにアバターが集合して交流することで、感情の交換や参加者同士の心理的な一体感の醸成が可能になる。
  2. 新たなワークプレイスやビジネスの場:物理的に離れた場所にいるスタッフが仮想オフィス内に集合し、執務やミーティングを実施することで、ビジネス上の意思疎通が円滑になる。
  3. 現地・現物のリアルな体験:3Dの都市・地域モデルを構築し、過去・現在・未来の街の姿をVR上で体験することにより、地域のあり方を考えることができる。また、VRショールームやVRミュージアム内で展示物を鑑賞したり、バーチャルな作業現場で技術の指導・研修をしたりすることも可能になる。

このように、VR、AR、MR技術を活用したユーザー体験は、今後も洗練され続け、さらに活用が広がっていくことが期待される。

図4:VRユニット会にて集合写真を撮影
図4:VRユニット会にて集合写真を撮影
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