DX-Readyな企業への変革のポイント
~デジタルガバナンスの重要性と企業が取り組むべきこと~

情報戦略事業本部
デジタルイノベーションコンサルティングユニット
シニアコンサルタント 渡辺 郁弥

はじめに

 経済産業省により『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~』が公表されてから2年が経過しようとしている。「2025年の崖」が目前に迫っている中、各企業は崖の克服に向けて、どのような準備・対策を行っているのだろうか。

 各企業が「2025年の崖」を克服するには、経営ビジョン・戦略の策定や組織・人材の体制整備などを行いつつデジタル変革に取り組む準備を整える、すなわち「DX-Readyな企業」となることが望まれている。

 今般、政府の新たな取り組みとして「デジタルガバナンス」※1に注目が集まっている。DX-Readyな企業へと変革するにあたって、企業全体としてデジタルの取り組みを統制しながら推進する「デジタルガバナンス」の概念を打ち出し、企業への対応を促している。

 本稿では、DX-Readyな企業への変革のポイントとして、デジタルガバナンスの重要性および企業が取り組むべきことについて概説する。

1 デジタルガバナンスとは

 経済産業省によると、デジタルガバナンスとは、”デジタルトランスフォーメーションを継続的かつ柔軟に実現することができるよう、経営者自身が、明確な経営理念・ビジョンや基本方針を示し、その下で、組織・仕組み・プロセスを確立(必要に応じて抜本的・根本的変革も含め)し、常にその実態を掌握し評価をすること。”と定義している※2

 また、経済産業省が定義したITガバナンスを見てみると、” 経営陣がステークホルダーのニーズに基づき、組織の価値を高めるために実践する行動であり、情報システムのあるべき姿を示す情報システム戦略の策定及び実現に必要となる組織能力”とある※3

 従来のITガバナンスは、情報システムの世界に閉じた取り組みであるのに対し、デジタルガバナンスは、経営者が企業全体の活動としてデジタル変革の取り組みを統制することである。端的にいえば、デジタルガバナンスと従来のITガバナンスには、企業経営における役割・カバー領域に違いがあるといえる。(図1)

図 1 デジタルガバナンスとITガバナンス
図 1 デジタルガバナンスとITガバナンス

出所:NTTデータ経営研究所で作成

2 デジタルガバナンスの重要性

 前述のとおり、デジタルガバナンスとは企業全体の取り組みであり、経営者自身がデジタル技術による社会・市場の変化を捉えた上で、明確な経営ビジョン・戦略を示し、活動・評価を行うことである。デジタルガバナンスの有無がDX-Readyな企業へと変革できるかどうかの大きな分かれ道といえる。

 経済産業省が2018年9月に『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~』を公表してから、各企業はDX-Readyとなるためにどのような取り組みを行ってきたのだろうか。事例からそれを検討してみる。

 株式会社丸井グループでは、経営者自身がIT・デジタルに対する意識が強く、経営トップの指揮の下、レガシーシステムの刷新に早くから着手し、2011年に完了させたことによって「2025年の崖」を克服した。これにより、その後の攻めのIT・デジタルに向けての投資シフトを実現している※4

 全日本空輸株式会社では、イノベーション創出に向けた取り組みとして、IT部門自らが運航情報などの既存ビッグデータの分析・仮説検証やIT・デジタルイノベーションの視点を持つ人員を積極的に活用し、既存事業やシステムの将来像を考えながらサービスをデザインしてPoCを進めている。また、将来の事業をつくるDD-Lab(デジタル・デザイン・ラボ)などとも密に連携し、部門横断的な取り組みとして、IT・デジタルの活用によるイノベーションを通じて持続的な顧客体験価値の向上を目指した組織文化を根付かせている※5

 SOMPOホールディングス株式会社では、経営陣がデジタルディスラプションに強い危機感を抱いており、今後の事業を行う上でデジタル戦略は柱の1つと捉えている。中でも、デジタル関連予算はPoCまでをデジタル戦略部、その後の本番化はグループ内の事業会社が負担しており、すぐに利益の出ないものやリスクの高いものに挑戦しやすい組織文化を醸成している。また、企画段階から既存の事業部を巻き込むことで、ウォーターフォール型から、アジャイル開発やデザイン思考のモデルへ変化を促している※5

 これら企業に共通していえることは何か。それは、デジタル技術による社会・市場の変化へ対応していくにあたり、全社一丸となった取り組みを行っていること、かつその取り組みを中長期で継続的なものとするために、それらを指揮・統制する仕組みが機能しているということである。つまり、DX-Readyな企業へと変革していくには、デジタルガバナンスが重要であるといえる。

 次の項では、政府におけるデジタルガバナンスについての検討状況をみてみる。

3 デジタルガバナンスに関する政府の動き

 2020年5月15日に経済産業省より、「情報処理の促進に関する法律の一部を改正する法律」の施行が発表※6され、企業経営におけるデジタルガバナンスの指針を策定していく動きがある。デジタル技術の急速な発展が、グローバルな規模で経済・社会構造に影響を及ぼすようになってきている中、サイバー空間とフィジカル空間が高度に融合し、リアルタイムに情報やデータが活用・共有されるデジタル社会(Society5.0)の実現に向けて、企業が行動していくための指針(デジタルガバナンス・コード)について検討を行っている。

 デジタルガバナンス・コードは4つの「項目」からなり、各項目を説明する「柱となる考え方」などが設けられている。(図2)

図 2 デジタルガバナンス・コードにおける各項目と柱となる考え方
図 2 デジタルガバナンス・コードにおける各項目と柱となる考え方

出所:経済産業省,Society5.0時代におけるデジタル・ガバナンス検討会 中間とりまとめを基にNTTデータ経営研究所で作成

 また、これらデジタルガバナンス・コードの内容に沿った企業の取り組みを評価し、デジタル技術による社会変化へ対応していく準備度合いを認定する制度(事業者認定制度)の運用が始まっている。(図3)

図 3 事業者認定制度の構造
図 3 事業者認定制度の構造

出所:経済産業省, 第1回Society5.0時代のデジタル・ガバナンス検討会資料を基にNTTデータ経営研究所で作成

 なお、デジタルガバナンス・コードと認定制度に関する詳細は、下記記事をご覧いただきたい。

デジタルガバナンス・コードに基づく事業者認定と優良企業選定 ~企業が認定制度を取得するにあたって~

4 企業が取り組むべきこと

(1)デジタルガバナンス・コードの理解と行動

 まず企業として取り組むべきことは、経営者自身がデジタルガバナンス・コード(指針)を理解し、行動に移していくことである。

 デジタル変革の取り組みに企業格差が生じている今般、政府が策定しているデジタルガバナンス・コードを参考に、企業としての行動指針を整理してはどうだろうか。

(2)認定の取得

 経営者がデジタルガバナンス・コードを理解し、実際に企業行動に移した後は、その取り組みを外部に評価してもらうことが重要となる。

 事業者認定制度を取得することで、デジタルガバナンス・コードに沿った行動ができている企業として国から認定を受けることができ、社内外へのアピールにも繋がる。まずは、一つの目標として事業者認定の取得を目指してはどうだろうか。


 なお当社では、デジタルを活用できる企業への変革を支援するサービスメニューとして、認定制度取得支援やデジタルガバナンスの強化支援を準備している。
コンサルティングサービス/IT戦略・CIOサポート/デジタルガバナンス

 

 コンサルティングアプローチとしては、①企業のデジタルガバナンスの現状可視化、②デジタルガバナンスの指針に沿った企業活動の推進支援及び認定制度取得支援、③改善項目の特定及び強化を基本としているが、業種・業態・個社事情などを考慮して、最適なアプローチを提案している。ご興味があれば是非ご連絡いただきたい。(図4)

図 4 当社の考えるコンサルティングアプローチ
図 4 当社の考えるコンサルティングアプローチ

出所:NTTデータ経営研究所で作成

おわりに

 企業全体としてデジタルの取り組みを統制しながら推進する「デジタルガバナンス」の概念が政府によって打ち出され、企業への対応を促している今、各企業はデジタルガバナンスの重要性を認識し、デジタル変革に取り組む準備を整える「DX-Readyな企業」となることが望まれている。

 当社ならびに筆者は、これまでデジタルガバナンスに関する調査・研究やデジタルガバナンス・コード策定に向けた政府の支援などを実施し、デジタルガバナンスの知見・実績を有している。日本全体でDX-Readyな企業への変革を目指すにあたり、各企業の支援に従事していきたいと考えている。

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