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Insight
インタビュー

【お客様事例】経済産業省が推進する「予防・健康づくり」の社会実装

—多様なステークホルダーをつなぎ、科学的根拠をビジネスに接続する当社の伴走
2026.07.08
写真左から
経済産業省 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課 課長補佐 明石 順子氏
経済産業省 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課 課長補佐 佐藤 大輔氏
NTTデータ経営研究所 ライフ・バリュー・クリエイションユニット ディレクター 大野 孝司
※所属部署・役職は、2026年6月の取材時点
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NTTデータ経営研究所は、1991年の設立以来、サステナビリティやヘルスケア、地方創生といったさまざまな領域の社会課題の解決や、企業変革の支援に向けたコンサルティングを行っています。戦略の立案からプロジェクトの実行支援、新規事業の開発から実証までを一気通貫でお客様に伴走し、未来への道筋を照らすことで、お客様とともに新たな価値の創造に取り組んでいます。【お客様事例】では、そのようなお客様と当社の共創プロジェクト・ストーリーをご紹介しています。今回は、経済産業省の令和7年度 「予防・健康づくりの社会実装加速化事業」です。

少子高齢化の進展に伴い、労働力不足や社会保険料の増大は、日本社会における喫緊の課題となっています。こうした中、経済産業省では「予防・健康づくり」を軸に、ヘルスケア産業の創出と社会実装を加速する取り組みを進めています。本稿では、同省商務・サービスグループ ヘルスケア産業課 課長補佐の明石 順子氏、同 課長補佐の佐藤 大輔氏、NTTデータ経営研究所ライフ・バリュー・クリエイションユニット ディレクター 大野 孝司への取材を通じて、「予防・健康づくりの社会実装加速化事業」の狙いと課題、得られた成果、そして今後の展望をご紹介します。

社会課題の解決に向けたヘルスケア政策の全体像

本事業の政策的背景について、同省商務・サービスグループ ヘルスケア産業課 課長補佐の明石氏は次のように述べています。

「経済産業省としては、少子高齢化を背景に、現役世代の労働力不足への対応や社会保険料の増大抑制が求められる中、ヘルスケア政策に取り組んでいます。加えて、健康課題に起因する経済損失の低減も大きなテーマとなっています」

健康をめぐる社会課題

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出典:経済産業省 健康・医療新産業協議会 第7回 資料3「第3期健康・医療戦略の進捗状況と今後の方向性について」


明石氏の所属するヘルスケア産業課では予防・健康づくりの観点から、健康経営の推進、データ利活用、質の高いヘルスケアサービス創出、高齢者へのアプローチ、ベンチャー支援、国際展開の6つの柱で事業を実施しています。明石氏はデータ利活用と質の高いヘルスケアサービス創出のための研究開発支援を担当するチーム全体を統括しています。

ヘルスケア政策の目指す姿と施策

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出典: 経済産業省 高齢者ウェルビーイングサービス公募イベント 同省説明資料


主に研究開発支援を担当する同課 課長補佐の佐藤氏は「予防・健康づくりの社会実装加速化事業」の特徴を次のように説明します。

「科学的な根拠のあるヘルスケアサービスを世の中に出していくために、Step 1として科学的根拠を構築する研究開発を、Step 2として出てきた根拠をきちんと整理して、それをサービスとして開発する事業者、それを利用するような雇用主や自治体の皆さまが利用しやすいようにまとめたりする工程を、最後にStep 3としてエビデンスをサービス開発につなげる実用化の工程を、各事業で進めています。今回のNTTデータ経営研究所に担っていただいている予防・健康づくりの社会実装加速化事業は、それらの事業を横断して取りまとめてもらう位置づけです。アカデミアや学会の方々を、社会実装サイドの人々とつなぎつつ、ビジネスモデルを作っていく役割が求められるので、経営コンサルティングを専門としているNTT データ経営研究所の支援を期待するところでした」

ヘルスケア分野におけるエビデンス構築に係る課題

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出典:経済産業省 健康・医療新産業協議会 第7回 資料3「第3期健康・医療戦略の進捗状況と今後の方向性について」

自由市場ゆえの課題——「根拠なきサービス」をどう克服するか

一方で、佐藤氏は、予防領域おけるに構造的な課題について以下のように説明しています。

「さまざまな法制度や規制が明確に定められ、開発からマネタイズまでがすべて管理下で成り立っている医薬品や医療機器と異なり、予防分野は制度や規制による統制が弱く、広い意味での自由市場となっています。そのため、科学的根拠に乏しいサービスも多く存在するのが実情です。さらに、日本の医療制度も影響しています。国民皆保険制度とフリーアクセスの下、病気になってから医療機関にかかるという行動をとりやすい傾向にあるため、予防への意識が醸成されにくい傾向があります。この状況を踏まえ、同課としては、科学的根拠(以下、エビデンス)のあるヘルスケアサービスを大きくしつつ、需要と供給の両面からヘルスケアビジネスを支援する必要があると認識しています」

目指すべき全体像(案)

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出典:同上

分断されていたプロセスを「一気通貫」でつなぐ

従来の課題は、エビデンス構築と社会実装が分断されていた点にありました。

佐藤氏は「エビデンスを作るプロセスと、それを社会に届けるプロセスが別々の事業として進められていたため、両者の連携が不十分でした。アカデミアの先生方に経産省事業の目的である最終的な社会実装、市場拡大という狙いを理解していただくのが難しい部分もありました」と振り返ります。 

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明石氏も、「やはりアカデミアの先生がこういう事業に応募されても、研究開発で終わってしまい、サービスの社会実装まで行きつかない、市場に出せたとてもスケールしないというものがほとんどで、なかなか成功事例を出せないことに課題感がありました」と続けます。


研究開発がそのまま社会実装につながらず、成功事例が創出されにくい構造的な課題を背景に、令和7年度より、エビデンス構築から社会実装までを一体で推進する「予防・健康づくりの社会実装加速化事業」が立ち上げられました。実用化を見据えてどのようなことを研究段階から計画しておくべきか、どのようなエビデンスがあれば支払者や直接の利用者にそのヘルスケアサービスを選択していただけるかといった観点から、ビジネスサイドの主体が事業に参画することが非常に重要だという考えが根底にありました。

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「実践的な知見」と「専門性の高い当事者視点」で選ばれたパートナー

本事業への提案にあたり注力した点について、NTTデータ経営研究所 ライフ・バリュー・クリエイションユニット ディレクター 大野は次のように語りました。

「私自身がヘルスケア産業政策のご支援に10年以上関わってきた中で、延べ100件以上の事業を見てきた経験と当社の多様な専門人材を活かし、経産省の皆さまの狙いを理解したうえで、できることをしっかりとお示ししたいと思いました。また、先行して受託していた経済産業省事業『令和6年度ヘルスケア産業基盤高度化推進事業(需給環境整備等事業)』を通じ、心の健康分野でエビデンスに基づくサービス開発や社会実装の難しさを先に経験していたので、その知見も活かせると考えました。特に、当事者の声や支払い者の声をちゃんとつかんで、筋の良い事業プランを作ることが重要だと考え、実践を繰り返しながら考えていくアプローチを提案しました」

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本事業主体の国立研究開発法人日本医療研究開発機構(以下、AMED)が設置した外部審査委員会によりNTTデータ経営研究所が採択された際の同省の所感として、明石氏は「さまざまな専門職の経験があるメンバーを豊富に配置したチーム編成と、ヘルスケア領域における実践的な知見」を挙げています。特に重要だった「利用者や支払者が受け入れるサービスとは何か」という当事者の視点を担保するうえで、提案段階から明確にチーム編成を示していた点にご期待いただけたとのことです。


これに対し佐藤氏も、「医療専門職や研究経験を持つ人材が複数参画していることが、複雑な研究成果の理解や事業推進において大きな価値を持つ」と評価しています。


採択されたときの受け止めを、大野は、「ヘルスケア産業の中でもとても重要な事業だと分かっていたので、ぜひ関わりたいと思っていました。採択されたことは、とてもありがたく嬉しい思いと、重要な政策なので責任が重大だなという思いの両方を感じました」と振り返ります。

具体的な成果:現場から高い評価を得る実践的な伴走支援

実際に事業が始動してからの評価は高く、伴走支援を受ける事業者からは、「自社のサービスに合わせた柔軟な助言が得られる」「さまざまな専門家から熱心に支援いただける」といった声が寄せられました。明石氏は、この評価の背景として、「利用者や支払者のニーズを踏まえた適切なエビデンス設計」と「当事者意識を持った支援」を挙げています。単なる助言にとどまらず、事業者と同じ目線で課題を捉え、ともに考えるNTTデータ経営研究所の姿勢が、事業者からの信頼につながっています。


明石氏曰く、経産省・AMEDの立場では、情報過多になり過ぎず、適切に論点が整理された成果物が安定してアウトプットされることにも安心感を持っているとの評です。多様なメンバーを配置している長期プロジェクトにおいても、アウトプットの品質を一定に保つ秘訣として、大野としては、「経産省の方の立場になりきって社内の資料レビューを行っている」ことを挙げました。


一方で、プロジェクト推進は容易ではありません。

大野は「研究者、事業者、政策担当者など、多様な立場の関係者がいる中で、それぞれが納得できる形で進める必要があります」と語ります。

そのために重視しているのが、継続的な対話と目線合わせです。個々の強みを生かした早期の担当割・人材配置、ステークホルダーそれぞれの立場の深い理解、社内外の認識統一、密な打ち合わせを通じて、複雑な議論や事業運営の中でも、盤石な体制で多様な関係者との丁寧な合意形成を図っています。

支援の価値:高度な制度設計力とステークホルダー統合力で、政策から社会実装までを一貫支援

明石氏は、加速化事業と同時に受託している高齢者ウェルビーイング事業における大野の貢献について、「公募設計において、要件の厳格さと柔軟性のバランスを高度に設計することで、政策意図に合致する案件を適切に選別しつつ、将来性のある事業も取りこぼさない構造を、実務経験に基づいて整理いただきました。その結果、公募要領の策定を極めてスムーズに進めることができました。また、提示される示唆には強い納得感があり、意思決定の質を高める支援をいただいています」と評しました。


佐藤氏も、「アカデミア、事業者、利用者など立場の異なる関係者の間で、異なる価値観やエビデンスの捉え方を整理し、共通言語を構築いただきました。その結果、議論にとどまらず、組織化やサービス実装にまでつなげることができました。こうした統合的な推進は行政単独では難しく、NTTデータ経営研究所は不可欠なパートナーであると評価しています」と続けました。

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今後の展望:ヘルスケア市場の創出に向けた基盤整備と社会実装を見据えた共創の加速

3カ年にわたり推進される本事業の、今後に向けた重要なテーマは、「エビデンスをいかに活用可能な形にするか」です。明石氏は、開発者の視点に立ち、「どのようなエビデンスがあれば事業として成立するのか」という逆算型の設計が必要であると指摘しています。また、伴走支援で得た知見を制度設計に反映し、より実践的な基盤整備へとつなげていくことへの期待も示されました。


さらに、今後の展望と当社への期待について、明石氏と佐藤氏は次のように述べました。

明石氏:「ヘルスケア産業課は、公的保険制度の隣にあるヘルスケアサービス市場を拡大し、持続可能なビジネスとして社会実装していくことを目指しています。各種報酬制度支援策等を上手く組み合わせながら、成立するビジネスモデルを事業者とともに構築することが重要です。NTTデータ経営研究所には、当事者の立場で伴走し、事業創出から社会実装まで、この難題をともに考えるパートナーとしての役割を期待しています」


佐藤氏:「経産省として産業を大きくしていく産業政策の一環として、ヘルスケア産業を成長分野として捉え、課題に先行して基盤整備を進めていくことが重要です。医療・ヘルスケアは専門性が高く、規制もある中で非常に複雑な領域ですが、ぜひNTTデータ経営研究所には、専門性を発揮しながら当事者として課題解決に向けて一緒に考えていただければと思っております」


これを受け、大野は次のように語りました。

「お二人のおっしゃる通り、とても難しいことに取り組んでいると思います。未来を創っていく話なので、こうすればよいというシンプルな正解もありません。海外のマネではなく、我が国で政策目標を達成できることをやる必要があり、それゆえの難しさがあります。このような状況下で大切にしたいのが、当社のビジョンである“Lighting the way to a brighter society”という言葉で、日本語では『よりよい社会への道筋を照らす』という意味です。難題の暗闇の中で、先を照らして皆さまと一緒に進んで行くような、そういう役割を果たしていきたいと思います」


予防・健康づくりという発展途上の市場において、科学的根拠のビジネスへの実装を実現することは容易ではありませんが、制度・現場・事業化を接続する機能は市場形成に不可欠です。制度と現場、多様なステークホルダーをつなぐパートナーとしての役割は、今後ますます重要になると考えられます。本事業は、事業最終年度に向けて、科学的根拠を備えたヘルスケアサービスの社会実装モデルを確立する取り組みとして、さらに発展していくでしょう。

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