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新型コロナウイルスに対する認識と行動変容について

No.64 (2020年7月号)
NTTデータカスタマサービス株式会社 常勤監査役(元 NTTデータ経営研究所 代表取締役社長) 川島 祐治
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KAWASHIMA YUJI
川島 祐治
NTTデータカスタマサービス株式会社
常勤監査役 (元 NTTデータ経営研究所 代表取締役社長)

新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)が世界中に感染拡大し、半年が経過しました。この問題について社内向けに何回かメッセージを発信しましたが、振り返って読み返すと、コロナ禍に対する私の認識と行動が感染の拡がりや深刻化に伴い変化していることがよく分かります。

12月に中国武漢市で原因不明の肺炎患者が最初に報告された時、私はこのニュースの存在に気づいていませんでした。また、1月に同市が感染拡大を防ぐための都市封鎖を宣言した時、私はこの情報を“対岸の火事”としてTV画面で眺めていました。「中国で新型コロナによる肺炎が流行して大変なようだ。日本に拡がらないと良いが、何とかなるのでは」という感じで新型コロナへの関心は低く、普段と変わらぬ行動をとっていました。

2月に入り、中国で感染が劇的に拡大し、国を挙げて対策に取り組んでいるといったニュースが流れ、関心が高まりました。しかし、社内向けコラムには「今年は春節連休を利用した中国からの訪日観光客が激減しており、国内のインバウンド市場への影響が心配だ」といった(呑気な?)コメントを掲載、まだ新型コロナの恐ろしさを認識していません。但し、横浜に停泊中のクルーズ船内での感染に関する報道から「いよいよ国内上陸か、“対岸”からの飛び火だけは防いでほしい」という思いを持ちました。

3月になって政府が全国の小中高校に休校を要請する事態となり、国内の雰囲気が一気に切り替わったように思います。私は「ここ1~2週間が感染拡大阻止のため大事な期間である。マスク、うがい、手洗いなど個人レベルでできることを各々実践しよう」とコメントしました。当然3月の出張、イベントはキャンセルとなり、行動変容が明確になりました。特に、志村けんさんが亡くなられたのは衝撃で、私の行動変容に大きな影響を与えました。しかし4月過ぎには収束するのではという漠然とした期待を持っていたのも事実です。

4月、新年度に入っても世界中で新型コロナ感染拡大の勢いは止まりません。「世界はパンデミックの真っ只中。東京2020オリ・パラも延期が決定、経済は急降下の気配、緊急事態宣言の瀬戸際、長期戦を覚悟せよ」といった切迫した文言がコラムに溢れています。新型コロナの本当の恐ろしさ、手強い相手であることを強く認識するようになりました。4月7日の緊急事態宣言発令後は会社も事業活動を縮退、全面テレワーク体制での、“巣ごもり生活”が本格化しました。この時期は新規感染者数が急増して長期戦になることが明確になり、不安な気持ちが強まっています。

5月のゴールデンウィークは収束に向けた勝負の期間。「Stay Home」の徹底が再三報道される中、GW明けの収束を願い自宅にステイ。一方、「コロナ問題のビフォア・アフターについて考えよう。世界はコロナ以前の社会に戻れない。これからはウィズコロナを前提に新たな社会を構築していくべき」といった先を見据えたメッセージも発信しています。緊急事態宣言は延長されましたが、収束の兆しが見えてきたことで前向きに5月末まで頑張ろうという思いが強まりました。

今回は個人の認識、行動変容を促すことの難しさを身をもって体験しましたが、緊急事態宣言解除後の我々の行動はどう変容しているでしょうか。“喉元を過ぎれば”でコロナ禍を忘れてしまうか、“羹(あつもの)に懲りて”のように(暑くても)マスクを着け続けるか、我々に課せられた課題です。

歴史に残る大事件に遭遇し、その反省を踏まえて「Build it back better(再建するなら前よりもよりよいものを)」と前向きに新しい社会の構築に向け動き出すことを期待したいと思います。

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