株式会社NTTデータ経営研究所
京都市
株式会社NTTデータ経営研究所(所在地:東京都千代田区、代表取締役社長:柳 圭一郎)と京都市(市長:門川 大作)は、公民連携・課題解決推進事業「KYOTO CITY OPEN LABO」において、四条通沿道のタクシーの駐停車マナー向上を目的として「ナッジ※」を活用した実証実験(以下、本実証実験)を行い、下記の成果を挙げることができましたので、お知らせします。
- 交差点付近での違法な「客待ち停車」の削減
ナッジの知見を活用した看板を四条河原町交差点南東角に設置。その結果、看板設置前に比べ、設置後では、一日あたりの違法停車時間の合計が約9割減少。 - タクシー乗り場における本来の規定台数を超過した車両の削減
ナッジの知見を活用した看板を四条通沿道タクシー乗り場2箇所(西行:高島屋前,東行:大丸前)に設置。その結果、フラッグ設置前に比べ設置後では、規定台数を超過して停車する台数が,一日当たり西行で約7割,東行で約3割減少。
【背景】
市内有数の繁華街である四条通では、一部のタクシーによる交差点や横断歩道付近での客待ちや四条通本線(駐停車禁止)上での客待ち停車などの道路交通法違反が多く発生しており、そのような行為が、近隣バス停におけるバス発着の妨害や渋滞を発生させるなどの要因となっています。
本実証実験では、人間の心理的な特性等を踏まえた工夫によって人々のより良い行動を促す「ナッジ」を活用することで、タクシー駐停車マナーの改善を目指しました。
【実証実験の概要】
(1) 実施時期
実施前測定期間:令和4年2月8日(火)~10日(木) 午後2時~午後4時
実施後測定期間:令和4年2月15日(火)~17日(木) 午後2時~午後4時
(2) 実施内容及び効果検証結果
ア 交差点付近での違法な客待ち車両の削減
ナッジの知見を活用した看板を四条河原町交差点南東角に設置し、当該地点におけるタクシーの違法停車時間を測定しました。
目標行動 | タクシー乗務員:違法停車の中止、移動 利用者:違法停車中のタクシー利用の回避、タクシー乗り場への移動 | ||
---|---|---|---|
測定指標 | 看板設置箇所におけるタクシーの停車時間 | ||
効果検証方法 | 前後比較 |
<実施状況>
<効果検証結果>
看板設置前に比べ、設置後では、一日あたりの違法停車時間の合計が約9割減少していたことが明らかになりました。
イ タクシー乗り場における本来の規定台数を超過した車両の削減
ナッジの知見を活用した看板を四条通沿道タクシー乗り場2箇所(西行:高島屋前、東行:大丸前)に設置し、当該地点における規定台数を超えた車両の台数を測定しました。
目標行動 | タクシー乗り場停車時における適切な車間距離の確保 | ||
---|---|---|---|
測定指標 | 規定台数を超過して停車する台数 | ||
効果検証方法 | 前後比較 |
<実施状況>
<効果検証結果>
看板設置前に比べ、設置後では、規定台数を超過して停車する台数が、一日当たり西行で約7割、東行で約3割減少していたことが明らかになりました。
【関係者の声】
所管の警察署からは、四条河原町交差点及び各タクシー乗り場での違法タクシーに係る苦情の頻度が、設置前後で大幅に減少したとの報告がありました。
【今後について】
(1) 株式会社NTTデータ経営研究所
「行動」を起点としてより住民の幸福につながる政策、サービスの検討を支援する「行動デザインサービス(注1)」を提供しており、今後も、本実証実験で得た知見も踏まえながら、全国の自治体、中央省庁、企業における行動インサイト(ナッジ等)の活用を支援してまいります。
(2) 京都市
引き続き、京都市タクシー駐停車マナー向上マネジメント会議を通じ、タクシー業界団体及び関係行政機関と連携したマナー啓発に努めてまいります。
【参考】公民連携・課題解決推進事業「KYOTO CITY OPEN LABO」について
本市が抱える様々な行政課題その他の社会課題に対し、民間企業等から課題の解決に資する技術やノウハウ、アイデアなどを募集したうえで、課題提示部署と民間企業等が一緒になって、実証実験や具体的実践等により課題解決に取り組む仕組みです。
WEBサイト「KYOTO CITY OPEN LABO」
※ナッジ(nudge)とは
行動科学の知見を活用して、人々のより良い行動を後押しする政策手法です。「nudge=肘でそっと押す」という原義の通り、選択肢の制限(禁止や罰金)をせずに、人間の意思決定特性(認知バイアスなど)を踏まえた「ちょっとした工夫」で、人々の行動に変化を起こす点に特徴があります。2017年にノーベル経済学賞をとった行動経済学者リチャード・セイラーが、キャス・サンスティーンとの共著『Nudge』(2008年)において提唱し、今では世界各国の行政機関で活用が進んでいます。