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Insight
経営研レポート

フードテックを起点とした地域未来戦略と産業クラスター形成

2026.06.30
地域トランスフォーメーションユニット 
シニアマネージャー 新見 友紀子
シニアコンサルタント 橋本 知明
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はじめに

世界的な人口増加や気候変動に伴う食料安全保障上の懸念、環境負荷の低減、消費者ニーズの多様化などを背景に、食分野に先端技術を取り入れたフードテック(農業、水産業などの1次産業から食品の流通、加工等の効率化・高度化を進めるための革新的な技術)への期待が高まっている。

フードテックは、高市政権が推進する「日本成長戦略」における17の戦略分野の一つとなっている。さらに、地域未来戦略の中で、国は17分野に連動した地域ブロックごとの産業クラスター計画を策定する方針を示しており、各都道府県においても、地域産業クラスター計画や地場産業成長プランの策定が進められている。フードテックは、食料安全保障や生産性向上に資する技術領域であり、地域産業の成長を支える政策テーマとしても注目されている。

本稿では、地域未来戦略における計画検討の動きを整理したうえで、地域においてフードテックを産業成長につなげるためのエコシステム形成および事業創出上の論点を考察する。

成長戦略上の重点分野としてのフードテック

フードテックが成長分野として注目される背景

日本における食農産業では、人手不足と労働生産性の低さが課題となっている。食品製造業の97.4%が中小零細企業であり、食品製造業の有効求人倍率は、全産業平均の2倍以上の値で推移しており、労働生産性は全産業平均971万円/人に対して711万円/人と低い水準にある注1。 農業においても、基幹的農業従事者が年々減少しており、今後20年で約4分の1まで急減することが見込まれている注2

また、気候変動による生産不安定化や、世界の紛争によりエネルギーや肥料などの価格高騰による農業生産コストの増大なども生じている。海外依存度が高く、食料自給率の低い日本では、食料をどのように確保していくかという問題意識がある。こうした観点から、日本の食農分野に技術革新をもたらすフードテックの推進が重要であるとの議論が進められているのだ。

フードテックには、既存の農業・漁業による食料供給力を補完する側面に加え、新たな産業を創出する側面がある。植物工場や陸上養殖は、設備、センサー、AI、品種開発、飼料、水処理、物流、販売チャネルなど、周辺産業を巻き込む領域である。食品機械や新規食品も、食品製造業、素材産業、バイオ、データ、ヘルスケア、外食・小売など多様な産業と関わる。農林漁業だけでは13兆円で国内の全経済活動の1.2%に過ぎないが、食品製造業、流通業、外食産業なども含めた食料関連産業の国内生産額は125兆円であり、国内の全経済活動の10.8%になる。さらに、就業者数でみると農林漁業と食品産業の合計が924万人と、全産業の13.5%を占め、バイオ、データ、ヘルスケアなどの関連分野も含めればさらに大きくなるため、地域における重要な産業として認識されている。

主要4領域「植物工場」「陸上養殖」「食品機械」「新規食品」

各戦略分野では、官民投資を優先的に支援することが必要と考えられる主要な製品・技術等が戦略的に選定され、官民投資ロードマップが策定されている。農林水産省のフードテックワーキンググループでは、植物工場、陸上養殖、食品機械、新規食品の4領域を検討対象とした注3

植物工場や陸上養殖は、高度な環境制御により気候変動や海洋環境に左右されずに安定的な食料供給を実現する。日本の植物工場は 令和8年2月時点で441施設注4(太陽光利用型202 + 完全人工光型190 + 併用49)、陸上養殖は令和8年1月時点で808件注5の届出があり、年々増加傾向にある。いずれも商業生産できる品目が限定であることや、量産化・収益化までの課題はあるが、将来的には地域のブランド農水産物と組み合わせた展開や、食品メーカーや外食企業の参入等による更なる拡大も期待されている。

食品機械は、省人化・自動化・品質管理の高度化を支えるほか、革新的な鮮度保持技術は地場産品等の国内外への展開にもつながる。なお、新規食品とは、国内外のたんぱく需要に対応する非動物由来たんぱく食品や機能性・栄養食品を中心に、アレルギー対応、ハラル対応、未利用資源活用などを含む広い領域である。

このように、地域が持つ資源を組み合わせることで、地域産業の新たな成長機会を生み出す可能性がある。これらの取り組みは注目され投資が集まっているものもあるが、売上を立てて黒字化できている事例は少ない状況である。2010年代には農産業の6次産業化として地域の農産物や水産物を活かした加工やサービス業への投資が行われたが、撤退事例も多く厳しい見方も多い。このような状況を踏まえ、今後のフードテック投資についてはしっかりとした地域特性分析、需要分析、競合分析、技術分析などを行ったうえで検討を進める必要がある。

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地域未来戦略

国は、地方に大規模な投資を呼び込み、地域ごとに産業クラスターの形成を戦略的に進める「地域未来戦略」を推進するとしている。計画類型としては、国などが策定する戦略産業クラスター計画、都道府県などが策定する地域産業成長プラン等があるが、地域産業成長プランには、地域産業クラスター計画と地場産業成長プランが含まれる注6

地域未来戦略では、地域未来交付金や特区制度による規制・制度改革、インフラ整備、中堅・中小企業支援などの既存措置を活用しつつ、必要な見直しや拡充を行う方向性が示されている。加えて、新たな財政措置の検討も進めることとされており、各計画は、地域の産業構想を具体的な支援措置につなげる枠組みとして捉えられる注7

戦略産業クラスター計画は、世界最大の半導体受託製造企業TSMCの熊本工場や や北海道のラピダスを支える半導体の製造、研究、教育、人材育成を統合した複合拠点(クラスター)のように、17の戦略分野に関する検討を起点として、企業と大規模投資を中心に形成されるものとされている。地域産業成長プランは、17分野の官民投資ロードマップに関わる分野に限らず、幅広い産業を支援することが想定されている。

フードテックは、前述の主要4領域のように、設備投資や技術開発を伴い、域外市場や海外市場を見据えた産業集積を形成する場合は、都道府県などが主導する地域産業クラスター計画との親和性が高い。食品加工、農産品、地域ブランド、観光などの既存地域資源を高度化する取り組みでは、市町村が主導する地場産業成長プランとも関係する。食農関連産業は地域ごとの差別化がしやすい分野でもあることから、多くの自治体において、地域産品、食文化、観光資源などを起点に、計画の重要テーマになることが予想される。

各自治体における計画策定の動き

各自治体の地域産業成長プランは、2026年8月頃に第一弾が公表される予定となっている。計画公表に先立ち、地域産業成長プランにフードテックや食関連産業を具体的に盛り込む方向で検討を進めている地域も見られる。

新潟県は、米菓をはじめ多くの食関連の企業などが集積していることから、その強みを活かしたフードテックで計画をまとめる考えだ。5月にはフードテック分野の地域産業クラスター計画策定に向け、民間事業者・団体等から事業計画を募集している注8。募集対象には、植物工場、未利用資源活用、新規食品、機能性商品等が含まれており、他地域に先駆けて、国が示すフードテック領域と地域の食関連産業を結びつけた動きがうかがえる。

高知県では、県の強みを活かせる成長分野としてフードテックを掲げ、県内全域で「一次産業×技術×外商」による食のイノベーション創出を図る方向性が示されている注9。特にIoPプロジェクト、高知マリンイノベーション、しまんと海藻エコイノベーション共創拠点など、フードテックに関連する既存コミュニティの取り組みも示されており、一次産業の生産性向上と、食品加工や観光など関連産業の創出・振興を一体的に捉えられている。

熊本県では、「半導体」「観光」を含む三本柱の一つとして「『食のみやこ熊本県』の創造とライフサイエンス産業分野」が示されている注10。6次産業化や販路開拓、食を核とした観光誘客の促進などにより、食関連産業の高付加価値化と消費拡大を目指す方向性が掲げられている。さらに、「半導体×食=スマート農業、フードテック」というように、半導体、食、ライフサイエンス、観光などの分野を掛け合わせた新産業創出を目指している。地産外商を推進する商社機能の充実やマーケティングの実施、ライフサイエンス系スタートアップの強みを活かしたUXプロジェクトの推進も掲げられており、食関連産業を起点に、分野横断で産業成長を図る動きとして捉えられる。

そのほかにも、クラスター形成計画に至っていないものの、地場産業成長プランの中で食関連産業を重要なテーマとして整理する自治体も見られる。食関連産業の方針を確認できる自治体の例を以下に示す。なお、計画段階の情報を含むため、実際に公表される計画内容と異なる可能性があり、引き続き動向を注視していきたい。なお、地域ブロックの戦略産業クラスター計画においてフードテックが示されている地域についても整理した。

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クラスター形成の核となる要素

新潟県がフードテックを軸とした地域産業クラスター計画を検討する背景には、地域内で進められてきた官民連携の取り組みがある。新潟市では、2020年度からフードテック・アグリテックを軸に、企業への個別支援、オンラインイベント、新事業・協業創出支援、関係機関との連携等が進められてきた。その後、オイシックス・ラ・大地とNSGグループが推進し、産学官金による「新潟フードテックタウン」が2024年12月にスタートし、起業家育成と起業活動の環境整備などの取り組みを進めて、新潟県を食関連企業にとって魅力ある地域にすることを目指している。

新潟の動きは、フードテック・アグリテックを軸に地域で進められてきた構想や連携が、国の地方創生・地域未来戦略の動きと重なり、地域産業成長のテーマとして具体化しつつある事例といえる。他にもフードテックやアグリテックをテーマとするコミュニティや支援拠点は各地域にも見られる。

当社ではバイオコミュニティの支援にも関わってきているが、例えば山形県鶴岡市では山形大学農学部と慶應義塾大学先端生命科学研究所などが連携し、鶴岡ガストロノミックイノベーション計画を推進しており、様々なスタートアップの創出やバイオ産業、食品産業の創出に取り組み、観光にもつなげている取り組みは事例として注目している。

全国各地にある大学には農学部や水産学部で1次産業や食やバイオに関わる様々な研究が行われており、大学発スタートアップも生まれ始めている。しかし、現代の食農産業の課題を大きく変え、地域産業クラスターの核となるような取り組みはまだ多くない。大学などの研究機関が食品製造業のみならず地域の製造業、AI、ロボット、自動運転などとの分野を超えた連携を行うことや、飲食業や観光産業など交流事業にも発展させることが地域におけるフードテックを成長産業につなげる地域産業クラスター形成の重要な要素である。しかし、それを推進するためには、自治体やそれを推進するための中間支援組織などが必要であり、資金や人員、スキルなどについては民間のバックアップも重要である。

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海外事例~オランダ・ フードバレー

食農分野のクラスターを語る上で、オランダのFood Valleyは最もよく参照される先行事例の一つである。Food Valleyは、Wageningen University & Research(WUR)を中核に、研究機関、企業、スタートアップ、投資家、行政、中間支援機関が集積し、農業・食品分野の研究開発、実証、事業化、スケールアップを支えるクラスターを形成してきた。

Wageningen Campusには168の中小企業・スタートアップ、27の大企業、28のNGO、7の研究機関が所在している。さらに1995年以降、48社のスピンオフ企業と98社超のスタートアップを創出している注11

中間支援機関であるFoodvalley NL(フードバレー財団)は、Protein、Healthier Food、Upcycling、Regenerative Agricultureなどのテーマを中心に、企業、研究機関、行政、スタートアップなどの連携を促しており、283のパートナーを有し食農分野に関わる多様な主体を含む国際的なネットワークが形成されている注12

加えて、Foodvalley NLは、Foodleapというオンラインプラットフォームを展開している。これは、企業、研究機関、スタートアップなどが、自らの課題や関心に合う連携先、研究設備、イノベーション施設などにアクセスしやすくする仕組みである注13

起業支援の面では、StartLifeがアグリフードテック分野のスタートアップに対し、事業開発、メンタリング、投資家との関係形成、国際的なエコシステムへの参加を支援している注14。StartLifeは、400を超えるスタートアップを支援しており、研究成果や事業アイデアを市場に近づける支援機能として、Food Valleyにおける事業創出を支えている。

こうした成功事例の蓄積が、さらなる企業誘致、投資、人材流入を呼び込み、次のイノベーションを生み出す好循環につながっている点は、フードテック・食関連クラスター形成を考える上で重要な視点である。

そこで、次章では、地域におけるフードテック・食関連クラスターを考える上で参考となる、産業クラスター形成に関する理論や成功要因を整理したい。

クラスター形成に関する理論と成功要因

地域のフードテック・食関連クラスターに必要な条件を整理する上で、マイケル・ポーターのダイヤモンドモデルを活用できる。同モデルは、特定の国や地域の産業が競争力を持つ要因を、「要素条件」「需要条件」「関連・支援産業」「企業の戦略・構造・競争関係」の4つの観点から捉える枠組みである。これらの要素が相互に作用することで、企業の高度化やイノベーションが促され、産業全体の競争力が高まるとされている。

この枠組みをフードテック・食関連産業に当てはめると、要素条件は、地域資源、人材、技術、インフラ、実証環境などの基盤を指す。需要条件は、健康、環境、安全・安心などに対する消費者ニーズや、食品企業・流通・外食等の事業者ニーズにあたる。関連・支援産業は、食品機械、素材、包装、物流、観光、研究機関、金融機関など、事業化を支える周辺産業・機関を指す。企業の戦略・構造・競争関係は、地域企業の新事業意欲、企業間の競争と協業、スタートアップとの連携、知財・契約・資金調達などの事業環境を指す注15

この4つの要素が地域内またはネットワーク上で結びつくことで、地域企業は高度な需要に応えるために新技術を取り込み、関連産業や研究機関との連携を通じて新商品・新サービスを生み出しやすくなる。フードテック・食関連クラスターにおいては、地域資源を起点に、需要、関連産業、競争・協業環境を組み合わせ、継続的にイノベーションが生まれる状態をつくることが重要となる。


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また、やや古い調査ではあるが、2003年の文部科学省の調査研究注16では、欧米先進事例をもとに、クラスター形成と成長促進に関わる16の成功要素が抽出されている。これらは、地域の集積条件、危機意識と選択と集中、核企業やビジョナリーの存在、世界レベルの研究開発力、産学官連携、ベンチャーの活力、連携を促すコーディネーション機能、金融・経営・技術面のサポートインフラ、グローバル展開や知名度向上などに整理できる。

さらに同調査研究では、これらの成功要素を、萌芽期、立ち上がり・模索期、成長・安定期といった地域クラスターの成長段階とも関連づけている。萌芽期には、地域資産の見極め、危機意識、選択と集中、核企業やビジョナリーの存在が重要となる。立ち上がり・模索期には、研究開発力、産学官連携、ベンチャーの活力、中間支援機能、サポートインフラが求められる。成長・安定期には、他分野との融合、知名度の向上、グローバル展開、資金市場へのアクセスなどを通じて、外部から企業、人材、資金を呼び込む力が高まっていく。

これらの考え方を踏まえると、地域のフードテック・食関連クラスターでは、技術テーマを掲げることに加えて、地域資源、需要、関連産業、協業環境、研究開発、人材、資金、販路、外部ネットワークを一体的に設計することが重要となる。農業では法人化が進みつつあるがそれでも売上規模が5億円以上の経営体が約1,500程度である。食品製造業は事業所従業員数が300人以上の大企業は約600社であり全体の2.6%に過ぎない。1兆円規模のグローバル企業は10社程度であり、国内で知名度の高い企業であっても数百億円規模の中堅企業が多く、自社のラインの自動化や品質管理のAI活用などにおいても十分な取り組みができない状況や、冷凍・加熱などに伴う劣悪な作業環境も残されていることもある。一方、新事業創出や海外展開への取組にも意欲的な事業者は多い。地域の中で大きな雇用者を抱える中堅企業の成長の後押しをすることは、地域経済の活性化において大きな影響を与えるであろう。地域におけるフードテックのクラスター形成を考える上では、スタートアップのみの支援策ではなく、地域企業、スタートアップ、研究機関、行政、金融機関をつなぎ、課題と技術、実証と事業化、販路開拓や海外展開、そして開発や導入のための資金を結びつけることが重要である。そして、これまでの事例から見える通り、中間支援機能が、クラスターの立ち上がりと成長を左右すると言えるだろう。

15 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jrse/29/1/29_30/_pdf

注16 文部科学省「地域イノベーションの成功要因及び促進政策に関する調査研究- 欧米の先進クラスター事例と日本の地域クラスター比較を通して- (中間報告)」(2003年)

https://www.nistep.go.jp/nistep/thema/innovat.html

クラスターにおける協業や事業化に向けた課題仮説と支援策

クラスター形成における成功要因を見ると、研究開発力や産学官連携に加え、関係者をつなぐ中間支援機能が重要になる。これらを踏まえ、フードテック・食関連クラスターにおける協業や事業化に向けた課題仮説と、支援の方向性を整理する。

例えば地域企業側では、フードテックという言葉になじみがなく、活用の具体像がつかめないため、その必要性を見出せない、あるいは自社の事業課題に合う技術や協業相手を見つけられないという課題が考えられる。スタートアップや研究機関側でも、地域企業の現場実態や商流を十分に把握しきれず、技術シーズが事業化に進みにくい場合が想定される。そのため、最初に地域として目指すビジョンを示したうえで、認知・理解形成から成功事例の発信までを一連の流れとして捉え、段階ごとに支援を組み立てること、そしてそれを実行に移すためのサポート機能が重要となる。

初期段階では地域の食農産業の現状と課題に関する調査と、大学の研究、人材、他産業等の把握により、地域のポテンシャル・リスク分析、ポジショニング分析を行い、地域の食農産業の可能性について市場規模、雇用人数など、ビジョンを描き出すことが必要である。資源や資金、人材の制限がある中で、地域としての可能性を最大化するためには、どのような取り組みが必要となるのかを検討し、その取り組みに必要な人材、技術、資金などの見通しをつけていく作業が必要であろう。

そして、次は地域内外の関係者の理解促進と関心形成を進める必要がある。関係者がコミットするためには、それぞれの居場所となるような関係性と、自分のミッションとなるような明確な役割を持つことが重要だ。役割は外部から与えられるものではないが、課題を明確化し、目指す方向性を提示することにより、役割を見出した関係者が必然的に集まってくる流れを作り出すことが重要である。

協業段階では相手探しや実証設計を支援する。出会いを促進するためのイベント的なマッチングの場と、課題解決や実証設計に向けた伴走型のサポートが必要とされる。当初のビジョンが明確化されており、各社の役割が見えていると、個別のサポートは軽減される可能性もある。

事業化段階では資金調達や販路開拓を支援し、成果が見え始めた段階では地域内外への発信を通じて次の参画を促す。こうした支援を通じて、個別の協業を事業創出につなげるとともに、成功事例が次の企業参加や投資、人材流入を呼び込む循環をつくることが期待される。

地域ごとに産業基盤、プレーヤー、企業ニーズ、販路、支援体制は異なるため、計画策定から協業テーマの具体化、実証設計、資金調達、販路開拓、成功事例の発信までを一体的に進めることが求められる。

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おわりに

本稿では、成長戦略におけるフードテックの扱い、地域未来戦略との関係、自治体における計画検討の動き、国内外の先行事例、クラスター形成に関する理論や成功要因を整理した。

フードテックは、食料供給力の強化や生産性向上に資する技術領域であり、地域産業の成長を促す政策テーマとしても注目されている。地域においてフードテックを産業成長につなげるためには、地域資源や企業課題を起点に、重点テーマを具体化し、関係者間の協業を実際の事業創出へ進める仕組みが必要となる。特に、地域企業、スタートアップ、研究機関、行政、金融機関などをつなぎ、課題整理、マッチング、実証、資金調達、販路開拓、成果発信までを段階的に支援する中間支援機能が重要となる。

今後、各自治体から計画が出される中で、フードテックや食関連産業が地域の成長戦略にどのように反映されるかが注目されていくだろう。農業分野や食関連産業、フードテックは投資対効果が表れるまでに時間がかかるケースも多いため、民間投資が進みにくいとも言われているが、特に地域における産業の重要性を考えると、都道府県や市町村などと地域の金融機関、大学、食品関連事業者や他産業、スタートアップなどが連携し食品産業に関する技術やビジネスモデルを向上させ成長産業化させていくことは大変重要である。また、植物工場や陸上養殖のような技術の導入、バイオ産業との関係性なども含めた一体的なクラスター形成など様々な取り組みが期待される。また、これまでの成功事例、失敗事例も踏まえながら、戦略的に検討を進めていくことが重要である。地域ごとの強みを踏まえた取り組みが具体化し、成功事例が蓄積されることで、企業、人材、資金を呼び込む循環が生まれ、食関連産業を軸とした地域のイノベーション創出が広がっていくことに期待したい。

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