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Insight
経営研レポート

最新トレンド事例報告:eスポーツ施設「RED° TOKYO TOWER」現地視察

2022.06.17
ビジネストランスフォーメーションユニット
クロスクリエイショングループ
マネージャー 松川 勇樹
シニアコンサルタント 礒田 直弥
コンサルタント 山内 順平
コンサルタント 荏原 圭
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1.はじめに

eスポーツ市場の現状

世界のeスポーツ市場は成長を続けており、2023年には市場規模が約15億5600万ドル(1ドル=126円で計算すると約1,961億円)に達すると言われている。2020年から始まった新型コロナウイルスの流行で従来のスポーツやイベントなどの中止が相次いだことによる「巣ごもり需要」なども相り、その成長は堅調である(図1)。一方、我が国では「VALORANT」「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS (PUBG)」「League of Legends」といった新タイトルの登場や、人気タイトルのオンライン大会開催などにより、市場が拡大しているものの、2020年の国内eスポーツ市場の規模は66.8億円に留まっており、今後更なる成長が期待されるところである。*¹

図1 eスポーツ市場の市場規模の推移

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(出所:Global e-Sports Market ReportをもとにNTTデータ経営研究所が作成)

eスポーツ施設の現状

世界的に市場が拡大しているeスポーツを支えている要素の一つが「施設ビジネス」である。一般的にeスポーツ施設はeスポーツアリーナ、ゲーミングハウス、eスポーツカフェの3つに分類され、それぞれ利用目的や設備が異なる。日本国内では、数十人~150人程度の収容が可能な中規模アリーナが多くみられるが、世界では、米国ラスベガス州の「ESports Arena Las Vegas」に代表されるように、eスポーツアリーナ、ゲーミングハウス、eスポーツカフェなどの機能を全てカバーする大規模施設が存在しており、競技人口・市場規模の拡大の一翼を担っている。

視察の背景

当社のビジネストランスフォーメーションユニットは、ビジネスの変革をもたらす戦略コンサルティングをコア領域としており、デジタルとエンタテイメントの融合領域のビジネスコンサルティングも手掛けている。日本のデジタルエンターテイメント市場の動向に注視する中で、2022年4月にオープンした最新のeスポーツ施設「RED° TOKYO TOWER」にかねてより注目していた。

この度、当該施設の館長を務める長野弘毅氏と広報担当の野澤佳世氏にRED° TOKYO TOWERの魅力や今後の展望について伺った。本レポートの前半では施設の魅力や担当者の想いについて取り上げ、後半では施設の視察を踏まえた考察を述べる。

2.「RED° TOKYO TOWER」の概要

RED° TOKYO TOWERはエントランスとなる3階の「INSPIRATION ZONE」から始まり、4階の「ATTRACTION ZONE」、そして5階の「ULTIMATE ZONE」で構成されている(施設HP: https://tokyotower.red-brand.jp/)。

3階のINSPIRATION ZONEはeスポーツの世界に触れるスタート地点と形容されており、レトロゲーム、VRコンテンツ、グッズなど、比較的ライトなコンテンツが取り揃えられている。独特な設備のレイアウトやライティングを見た瞬間、従来の東京タワーの概念とは全く異なる空間に入り込んだことを実感できる。

図2 3階のINSPIRATION ZONE

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4階のATTRACTION ZONEに登ると、そこには超人スポーツと呼ばれるフィジカルeスポーツの世界が広がっている。HADO、サイバーボッチャ、PUBG MOBILEとのコラボコンテンツなど、最先端のeスポーツが取り揃えられており、頭脳と身体をフルに活用した体験が可能となっている。

図3 4階のATTRACTION ZONE

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そして、最上階の5階 ULTIMATE ZONEに登ると、目の前にはバーチャル/リアルのモータースポーツの2つの空間を楽しむことができるRED゜ E-MOTORのエリアが広がっている。そしてRED゜ E-MOTORエリアを抜けた先には本施設の目玉ともいえる日本初のハイブリッド型アリーナ「RED゜ TOKYO TOWER SKY STADIUM」が圧倒的な存在感を放っている。SKY STADIUMには最先端のXR技術が導入されており、仮想空間と現実空間が連動した新体験を五感で味わうことが出来る。ULTIMATE ZONEには「RED゜ STAND」と呼ばれるカフェ&バーエリアも併設されているため、休憩だけでなく、イベント利用にも活用できる。

図4 5階のULTIMATE ZONE

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3.施設関係者へのインタビュー

インタビュー概要

日時:2022年5月11日(水)

実施方法:対面

話し手:東京eスポーツゲート株式会社:RED° TOKYO TOWER館長 長野弘毅氏、広報 野澤佳世氏

聞き手:松川、礒田、山内、荏原

図5 インタビュー風景(現地施設にて)

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なぜ、「RED° TOKYO TOWER」が東京タワー内にオープンすることになったのでしょうか?

長野氏

リアル×デジタルの新体験を生み出す事業を展開する弊社として、日本のランドマークな観光地である東京タワーにリアルのプラットフォームを持つことは社会や個人への訴求効果が非常に高いと考えたためです。

デジタル×リアルの新体験を生み出す事業のテーマに「eスポーツ」を掲げた理由を教えてください。

長野氏

eスポーツはゲーム要素が盛り込まれた“スポーツ”である、と世の中に浸透させたいからです。日本はゲーム大国である一方、eスポーツ領域では後進国です。その理由として、日本ではeスポーツは“ゲーム”というイメージを持たれているためだと考えています。成長性が非常に高いeスポーツ領域において日本が持つ高いポテンシャルを活かすため、画面の前でコントローラーやキーボードを叩くだけがeスポーツではないことを広めたいと思っています。
本施設では、体を動かし楽しめるコンテンツを豊富に用意し、幅広い世代にお楽しみいただけます。また、日本のランドマークな観光地である東京タワーに施設を設けることで、eスポーツに抵抗感を持つ方の興味も引き付けられると考えています。

「RED° TOKYO TOWER」にはどのような方が来館されていますか?

長野氏

メインターゲットはデジタルに馴染みがある10代後半から30代前半の男女ですが、実際は東京タワーの観光で立ち寄る家族連れのお客様等、幅広い世代が来館されています。休日は1日1,000人以上の来訪があり、コンテンツによっては数時間待ちとなります。

野澤氏

XR映像システムを兼ね備えたRED° TOKYO TOWER SKY STADIUMやカフェ&バーラウンジであるRED° STANDは、企業のプレゼンテーションやアーティストの映像収録、オフラインのライブの場としてもご活用いただけます。

長野氏

新型コロナウイルスの影響で屋内エンターテインメント事業への風向きがよくない時期が長く続きましたが、社会情勢が変化して少しずつ回復に向かっている印象を受けています。

「RED° TOKYO TOWER」や東京eスポーツゲートの今後の展望を教えてください。

長野氏

まず、本施設をデジタルの世界への間口を広げる拠点とし、多くの方へデジタルエンターテインメントやeスポーツの楽しさを伝えていきたいです。
そして、弊社東京eスポーツゲートは、「RED° TOKYO TOWER」を軸としたRED°ブランドを活用して、リアルとデジタルの双方でプラットフォームを構築し、RED°経済圏を拡大していきたいと考えています。
リアルプラットフォーム事業では、第2弾として手掛ける新たな個室サウナ施設、『RED゜E-SAUNA UENO(レッド イーサウナ ウエノ)』が2022年4月にオープンしました。今後は、地方各地へと範囲を拡大し、日本全国の主要拠点においてeスポーツ/エンタメの要素を盛り込んだ施設を企画・プロデュースしていきます。自治体等からコンサルティングニーズがあれば対応も可能です。
オンラインプラットフォーム事業では、JP GAMESグループと業務提携し、同社のメタバース構築フレームワーク「PEGASUS WORLD KIT」を活用したRED°独自のメタバースを共創しており、トークンやNFTを絡めたWEB3.0を連携させながらRED°ならではの新体験の創出を目指しています。

最後にeスポーツ市場への思いを教えてください。

長野氏

成長性が非常に高いeスポーツ市場において、日本は高いプレゼンスを確立できるポテンシャルを備えていると思います。「RED° TOKYO TOWER」はeスポーツの間口を広げて、多くの方が楽しめる施設となっておりますので、是非一度足を運んでいただけると嬉しいです。

図6 RED° TOKYO TOWER館長 長野 弘毅 氏

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4.考察

従来の「eスポーツ」の枠組みに囚われない魅力

2章、3章の内容の通り、「eスポーツの間口を広げる」という目的のもと、従来のeスポーツの枠組みに囚われない仕掛けを施しているのが本施設の最大の魅力ではないだろうか。入口である3階のINSPIRATION ZONEのレトロゲームなどから始まり、4階のATTRACTION ZONE、5階のULTIMATE ZONEと、上に登るほど、最先端の技術をふんだんに活用したコンテンツに触れることが可能となっている。eスポーツに馴染みが薄い顧客層であっても、施設を1階ずつ登っていくことでよりeスポーツへの興味を刺激される構造となっている。eスポーツに馴染みが薄かった顧客が見たこともない、聞いたこともない刺激的なコンテンツに触れていくことで、最後は「eスポーツファン」として施設を出られる稀有な仕組みとなっている。施設を外から見ると、見慣れた東京タワーの一施設だが、一度足を踏み入れるとそこは従来の東京タワーのイメージとは180°異なる独自の世界観が広がっている。かつて、「アナログ」放送アンテナとしての機能を有していた日本の象徴的な施設で、日常のスポーツに「デジタル」が溶け込んでいく様子をぜひ読者の皆様もご自身で体験いただきたい。

本施設への期待

新型コロナウイルスの影響で屋内エンターテインメント事業への風向きが悪く、大規模な設備投資のリスクも背負いながら、本施設はデジタル・eスポーツの世界への間口を広げる拠点としてオープンした。また直近では、「RED° E-SAUNA UENO」がオープンするなど、従来のeスポーツの枠組みに囚われない事業を積極的に展開している。成長途中である日本のeスポーツ市場において、本施設が成長の起爆剤となり、またフロントランナーの一翼として業界をけん引することを期待している。当社でも、「新しいこと」に取り組む方々に対して、生み出す・掛け合わす・立ち上げる、の3つの視点から世の中にない新しいビジネスやサービス創出を引き続き支援していきたいたい。

最後に、本施設のオープン直後であるにもかかわらず、施設見学およびインタビューのお時間をいただいた長野弘毅氏と野澤佳世氏を始めとするRED° TOKYO TOWERのスタッフの皆様には、改めてお礼を申し上げる。

(出典)

*¹:「2020年日本eスポーツ市場規模は66.8億円」(株式会社KADOKAWA)

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