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経営研レポート

Society5.0における金融のニューノーマル①(データ評価経済編)

2020.12.18
金融経済事業本部 グローバル金融ビジネスユニット
マネージャー 馬場 勇介
シニアコンサルタント 大嶋 昭彦
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1.Society5.0における金融のニューノーマル①(データ評価経済編)

 2020年6月3日に「国家戦略特別区域法の一部を改正する法律」が成立した。本法の成立により、今後先進的で官民・産業横断的なデータ連携を行う、いわゆるスーパーシティにおける(当該地域の)規制緩和を行う手段が確立した。

 スーパーシティ構想は端的に言えば、Society5.0における「人間中心の社会」をデジタル化の進展(都市単位のデータ連携)を用いて先駆的に実現することにあるとされている(図1)。

図1 Society5.0の実現された社会

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 スーパーシティ構想の対象となり、厳密にいう国家戦略特別区に当たる地域は数多くあるわけではないが、それらの地域で実装された内容は各地域に横展開されることから、結果的に他の地域もこうした情報を基に、本施策を視野に入れた政策、街づくり、地域経済を計画する必要が生じると考えられる。Society5.0に描かれている世界観は徐々に身近に感じられるものとなってきており、各産業におけるビジネスは、本稿に後段で示す「サイバーフィジカル」な社会を念頭に、自社の事業をどのように対応させるかという世界観を持つ戦略策定を迫られると考えられる。

 本連載では、Society5.0における事業環境やスーパーシティ構想が金融機関の経営や金融機能のあり方にどのような影響を与えるかを考察していきたい。第一回目の本稿では、執筆時点(2020年10月末)での各動向をもとに、第1編としてSociety5.0が日本社会にもたらすと考える「データ評価経済」について提示する。

2.Society5.0の世界観

Society5.0における「人間中心」の社会の到来に向けては、大きく3つの流れが考えられる。

  1. 「サイバーフィジカルシステム1」等などの実現に向けたデジタル化と(その実現に必要な)規制改革を行い、
  2. 人間中心の社会が“経済発展”と“社会的課題の解決”を両立するために必要となる、包摂性や強靭性2・多様性といった概念を強化しつつ、
  3. 地域の「自律・分散」に向けた各種施策3を取り入れていく

 はじめに1.「サイバーフィジカルシステムの実現(図1参照)」とは、今までのデジタル化だけではなく、AIやエッジコンピューティング4等などでビッグデータ・ディープデータを高度に処理し、様々な経済活動や社会活動がよりジャストオンタイムに近づいていくこと等などを表している。

 これの実現のために、今まで人間主体で行ってきた経済活動を背景とした法令・規制、現在行っていることを“(単なる)デジタルに置き換える”だけでは、上述したような新たな世界観の恩恵すべてを享受することは難しいと考える。なぜなら人間主体の対応では、タスクの処理速度と処理分量に限界があるからである。加えて、社会の一部のみがデジタル化を果たしても、企業や個人のITやデータのリテラシー不足が一因となり、(データドリブンな活動5のために連携・流通する)データを使いこなせない場合や、IoT化が可能な領域をアナログのまま残す等などのデジタル化が不十分な領域を残す限り、データを把握する機会が断片化されてしまう6、というような事態が発生しうる。

 詳細は後段で記載するが、日々大量かつ多様な情報がデータとして生み出されている昨今、多様な企業体によって構成させるグループ企業群はともかく、単体企業でデータを用いた価値創出と提供を行う難易度はますます高まってきていると考えられる。このことからサードパーティを含めて外部とのオープンな連携を通じて、いかにして大量かつ多様なデータを収集し、(価値創出と価値提供のために)データ活用するのかという視点を持つことが重要といえるだろう。

1 サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステム。

2 経済や環境等などの冗長性(いかにして負荷を軽減し困難に耐えるか)や復元性(平時の状態にいかに素早く回復するのか)等などをさす。

3 新型コロナウイルス感染症や、地震を中心とした天災対策等などをさす。

4 多くのデバイスがインターネットに接続されるIoTに向けて提唱された概念で、利用者や端末と物理的に近い場所に処理装置(エッジプラットフォーム)を分散配置して、ネットワークの端点でデータ処理を行うことで上位システムの負荷を軽減する技術の総称をさす。

5 ビジネス上の意識決定等を、経験や勘ではなく大量かつ多様なデータの分析結果を基に行う業務プロセスをさす。

6 サプライチェーンを例に挙げると、関連する企業及び工程で構成されるチェーン(商流)内でデジタル化が不十分だと、取得できる情報(データ)が断片化し、リアルタイムで必要な情報が揃わずデータ利活用の真価を発揮できないケースが考えられる。

 この流れは前章に掲げた具体的なスーパーシティ構想においてどのように取り入れられているか確認すると、足元では(新型コロナウイルス感染症の対策等などを含む)デジタル化の更なる推進とその推進に必要となる規制改革とが緊要であるとして、地域を限定した積極的な規制緩和を行うことができる態勢構築として議論が進められたものと見受けられる。また、ご存じのとおり2020年9月16日に発足した菅新政権においてもデジタル庁を創設するなど、引き続きデジタル政策は実装を優先した政策が進行するものと考えられる。

 次に2.「人間中心の社会が“経済発展”と“社会的課題の解決”を両立するために必要となる、包摂性や強靭性 ・多様性といった概念を強化する」ということについて説明したい。

 例えば環境に関する課題があった場合、この課題解決のために、“いかにエネルギー効率の良い形で社会活動を行うか” 、と“いかに環境負荷軽減に努めているサービスを消費者に取り入れてもらうか”という視点のアプローチを、(事業アイディアと共にデジタルの力を活用しながら)行うと仮定してみよう。

  • いかにエネルギー効率の良い形で社会活動を行うか:
    このアプローチの実現には、エネルギー効率の良い新たな機器や技術を取り入れるだけでなく、都市の交通渋滞を減らすことや、もっと身近なことで言えば再配達の宅配便を減らすなどの方策も挙げられる。これらは今あるデータと今後新たに生成するデータを流通させて社会活動全体を網羅的に捉えていくことで、現在の技術であっても実現可能なものとなる可能性がある。
  • いかに環境負荷軽減に努めているサービスを消費者に取り入れてもらうか:
    このアプローチの実現には、まず消費者が“どのサービスが環境負荷軽減にどれほど努めているか”という情報を知る必要があり、次に消費者が“環境負荷軽減に努めているサービスを使いたくなる”インセンティブの設計が必要となる。今次までの技術においてはインセンティブを付与するようなギミックは「シームレス・タイムリー」というUXを犠牲にしかねない状況であったが、データを連携し「何らかの費用削減やポイント等などの報酬の付与」といった処理を自動化することで、シームレス・タイムリーなサービス提供が損なわれず業務遂行が可能であり、消費者にとっても自然な形で環境負荷の低いサービスを利用できる。

ここまでのような取組取り組みの効果がより高まると、次のような効用が社会にもたらされると考える

  • 環境が保全されることで、一時的な環境毀損に耐えうるような「冗長性」がもたらされる。
  • 失われつつある環境が残存することによって、種の「多様性」や環境を利用した事業の推進等、「多様性のある地球環境を保全すること」が可能となる。
  • 社会全体のエネルギーコストが安くなることや(環境配慮を踏まえた)適正な競争が確保されることで低価格での輸送も発生し、環境保全コストの向上だけをもたらさず社会サービスの過当な高騰を防ぎ、社会の財へのアクセスを確保する(消費できる程度の価格帯のサービスを残存させる)といった「包摂性」に寄与することにもつながる。

 続けて、3.「地域の自律・分散に向けた各種施策を取り入れていく」ことについて説明したい。近代産業社会の歴史は生産性の向上が目下の目標であり、余剰資産の生産を通じて消費者の生活や文化を豊かにしてきた。

 特に生産能力の向上と省力化は、ヒト・モノ・カネといった資源を集中させて全体最適を目指す中央集中(集権)的な構造を採ってきた。これらの活動は完全ではないものの、社会経済の進展の原動力になってきたといっても過言ではない。

 しかし、これらの構造は資源の集中、すなわち競争力や権力の集中を生み、特に経済領域においては高度に生産能力を持つ一部の企業主体を構築してきた。これらに対し近代国家は、公正競争を促進するための法規制を適用し(一部の企業主体に生産・供給能力が集中することによる)市場の独占や寡占を防止してきた。

 この中央集権(集中)構造はデジタルとの相性が極めて高い。主にデジタルサービスの媒介物であるデータは限界費用が極めて小さく、通信網という公共インフラに乗ってしまえばスケーラビリティが高いこともあり、当然各社の企業努力あってのものではあるものの、市場の独占や寡占を招きやすい。

諸外国では、いわゆるBigtechの形成するメガプラットフォーム(およびそのプラットフォームが形成するエコシステム)を各国の公正競争規制の対象下に置いていることからも、これは疑いようのない事実といえるだろう。

 日本においても、2019年12月17日公正取引委員会による企業結合ガイドライン等などの改定(データの価値評価も含めた企業結合審査のルール整備)、2020年5月にデジタルプラットフォーム取引透明化法が成立していることから、同様の状況といえる。

 さらに、これらに加えAI等などの技術活用が進み、大量かつ多様なデータを用いた個別最適化(いわゆるパーソナライズ)が進んできている。例えば、今までの個人情報等などの情報保護概念で“当該個人の各種データを紐づけ最適化”しようとした場合、基本的にデータの発生起点となる主体からその他の主体に個人情報を渡すことが難しい一方、単体企業が1社で複数のサービスを提供する場合は(同一企業内であることから)個人情報を活用しやすい7

 後者については、ある主体が(消費者による)自社サービスの利用を通じて取得したデータを、自社の関連する他サービスに応用するために分析し、消費者に対してサービスレコメンドする場合等などが相当する。

 

 こういった中央集権(集中)構造でのデータの取り扱いを民間企業または政府等の公的権力に行わせるのか、といった議論に対する1つの答えとなるものが自立分散的な構造のあり方である。

 2020年6月16日に政府デジタル市場競争会議から公表された「デジタル市場競争に係る中期展望レポート~ Society 5.0におけるデジタル市場のあり方~」には、各技術を通して、また足元ではデータ連携基盤を通して、複数の主体間でデータ流通・連携することにより、産業内・産業間を跨いだデータ連携を目指す戦略が示されている(図2)。早々に稼働をしたデータ連携基盤としては農業分野のデータ連携基盤として「WAGRI」が存在しており、農業関連のメーカーや官公庁、農業従事者が相互にデータ連携を行っている。

図2 分野間・分野毎のデータ連携基盤⋆の関係性

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※内閣府『「総合科学技術・イノベーション会議データ連携基盤サブWG(平成30年4月4日」及び農業データ連携基盤協議会(WAGRI協会)HPから内容抜粋の上、当社にて再構成したもの

7 仮に同一企業内でのデータ利活用であっても、情報の利用目的や範囲については十分に留意する必要がある。

 「自律分散」化構造では、複数の主体間でデータ連携・流通することにより、社会の各主体それぞれのデータ活用をスケーリングさせていくことが可能となる。スーパーシティ構想は、これらのデータ連携・流通によって新たな価値を都市(コミュニティ)単位でもたらすことを予定しており、この新たな価値の1つが、まさに上述②で示した“「人間中心の社会」に向けた概念強化”にあたる。(これらの市民生活への影響の可能性については、次回第2回のレポートにてご紹介したい。)

 この「自律分散」化構造に加えて、対新型コロナウイルス感染症としての対策に当たって「開疎」化という言葉が存在する。これは安宅和人氏(ヤフー株式会社CSO:最高戦略責任者・慶應義塾大学環境情報学部教授:湘南藤沢)が提唱しているもので、政府のIT新戦略(世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画)にも「対面・高密度から『開かれた疎』へ」と記載されている。

 これは例えば、一か所に集中するような、中央集中的なオフィス形態での働き方に対しても構造変化が望まれるということである。物理的に(一定程度)自律分散し、各主体、特に本事項で言えば“個人同士の物理的な生活・労働の在り方”を考えていく必要があり、社会形態が変遷していくきっかけとなっていくものだと考えられる。

 また、これらの考えは東名阪三大経済圏への各種リソースの集中化を変遷させる重要な要素であり、これまで集中化による生産性向上を図ってきた日本経済が新たな生産性向上への転換が必要な局面を迎えているものである。この機会を積極的にとらえていくことがどのような産業セクターにとっても重要な観点だといえよう。

3.リワードが可能となるデータ評価経済への転換

 ここまでSociety5.0への社会転換について確認してきたが、これらの活動は実際の企業行動にどのような変化を与えるのだろうか。我々はこの変化を“貨幣価値経済”から“データ評価経済”への転換と考えている。(図3)

図3 Society5.0に向けた経済概念の変化

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 まずは前提となる貨幣価値経済について確認したい。前章で説明した通り、近代の工業社会は生産性の向上を中心に発展をしてきたが、これらは規格化・標準化の上、分業化といった形で各種リソースを振り分けて、後にそれぞれのパーツを製造・統合させてきたものである。では、それらの生産と対価は“どのような価値基準”によって交換がなされるか。

もちろん性能の比較などは存在するものの、実際の取引時に当該物品の細かなスペックやサービスのデータはつまびらかでないため、“価格”が需要と供給を勘案する価値基準・物差しとなる。

 そして、この価値基準の下、対価として決済を可能にしているものが貨幣であり、この貨幣の価値基準によって物品等の価値交換が成立し、貨幣価値経済を構成しているといえる。様々なモノが流通していく上で多様な情報による判断は比較的劣後しやすく、その情報を評価していることに多大な時間を費やしてしまうため、ある程度の誤差については価格が優先するといっていいだろう。貨幣は、評価はもちろんのこと、それらの価値を貯蔵し、一時的に融通し、流通させることに非常に向いており、評価の物差しとしての地位を確かなものにしていると考える。

 こうした貨幣の特徴を最も活用してきた産業が「金融」であろう。貨幣資本に重点をおいた集中化と、貨幣価値評価への換算に長け、時には先々のリスクや健康の問題などを保険という形でリスク移転を行い、事業者の財務状況などを信用能力と捉え貨幣価値に換算してきたことが金融機関の力の源泉であるといえる。

 貨幣価値経済は、貨幣価格という価値基準に統合する目的から、他の価値基準を捨象して合理化を行うことで発展してきたものである。したがって、様々な価値概念、多様性や冗長性といった価値基準での算定を逸失しやすく、特に経済面で包摂性を損ないやすいと考えられる。それらは市場経済の反作用として、別途CSR活動やボランティア活動、福祉活動で補完されてきたと考えられる。

 近年、SDGsが社会に浸透し、社会課題解決に向けた世界の連帯が叫ばれているが、我々はこれまでのように様々な価値観を価格から評価し、行動につなげることができるだろうか。また、我々が立っている市場経済において貨幣価値が全くに毀損しているわけではない中、それらの様々な価値観を評価した経済行動を法人・個人が率先して行うのだろうか。(図4)

図4 評価経済への変遷の兆候を捉える3つの視点

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 前章のとおり、様々な技術の進展により、各種情報はデータとして流通・連携されることになり、その流れは“より高い精度”で“より大量のもの”になると考えられる。これらを人間が都度評価することは(物理的に)到底追い付かず、同様に技術によって(一定の基準に基づき自動で)データの評価を行い、それを足掛かりに経済活動を行うようになると考えられる。もちろん、“そのサービスが環境に良いか”、や“どのようなコミュニティへの貢献を行っているのか”という情報も流通するようになり、こうした指標を活用して企業への融資や、事業提携の申し込み、就業の申込みといった行動も起こっていくだろう。

 一方、事業提携の申し込みを行ったり、その企業のサービスを消費・使用したりする、サービスを生産・提供する以外の“その他の主体”に対するインセンティブはどうなるであろうか。

 当然ともいえるが、このレベルまでデータの生成と流通が進むと評価者・被評者双方の行動がデータ化されるようになってくる。つまり、(C2Cオークションサイトやフリーマーケットサイトのように)データを基点として互いを評価できるということだ。これが、転じて企業間で評価しあうきっかけにもなり、ひいては、それ以外にもSDGsの目標や当該コミュニティを活性化させたい自治体やコミュニティなどが、よりそれらの課題解決に向け貢献度の高い企業(ないし個人)を評価することにも繋がる。

 具体的には、諸課題の解決をより積極的に推進するため、データによる(実態)評価を行った上で、貢献度の高い企業・個人の税制を優遇する、デジタルトークンを付与するといった「報奨(リワード)」等などが挙げられる。

 そしてこれらのリワードはデジタル、特にスマートコントラクトを活用することで、より細かく条件(使い方)を設定することもできる。原資を直接給付するより何かと組み合わせて推進した方が経済効果は生まれやすいことは自明ではあるが、その取り組みの実現にはレギュレーションの落とし込みや事務作業等などに大きく手間を取られ、結果コスト高となっていたことが多かった。こういった取り組みをビジネスルールとして定義し、データやその条件にまでスマートコントラクトにプログラムすることで効率化・自動化され、リアルタイムで稼働させることによって低コストかつ効率的に当該リワードが行えるようになるのである。8

 上述したようなリワードの例は、「A:情報の取得理由と利用範囲の提示」から始まり、「B:情報の開示に係る意思表示・許諾の取得」、その意思表示・許諾に基づく「C:自己のデータの開示と紐づけ」を経て、「D:データの評価」という工程に辿り着く。更に工程を進めると「E:データの貯蓄・貯蔵(管理)」、そして「F:(データを中心に設計された)デジタルトークンによる給付」となり、この関係者のステータスを、尺度を用いて評価するといった流れは金融機関の既存の銀行業務と同一であり、デジタル化を行う際にたどる手順とも非常に似通ったものであると考える。

 このことは今までの金融機関が扱ってきた“貨幣評価能力”と異なる価値基準でのデータ評価中心の事業構造を含んでいるともみることが可能であり、金融機関以外の事業者がこれらのノウハウ・ケイパビリティ・オポチュニティを持つ可能性も大いにあるということである。

 では金融機関はどのような対策をとるべきで、どのような事業戦略を練るべきであろうか。次回以降で地域金融機関を中心にそれらのヒントとなる事例や考察を確認していきたい。

8 昨今改めて注目されているスマートコントラクトでは、このように予め定義された契約の検証や執行に加え、交渉等などを自動的に行えるコンピュータプログラムである。

4.最後に

 今般、考察をお示しするにあたり、前提となるロジックをご理解いただいていくとの趣旨において、本稿のような仔細な内容を書かなければ「共感が得られない、納得がいかない」部分も多々あるかと思い、事象の説明が長文になってしまっていることについてはお詫びしたい。

 しかしながら、今後各地域の課題に応じた事業戦略・社会実装を考える上では、基礎となる具体事例に加え、応用力を高めるため、(具体事例の裏側にある)概念や定理の変遷を捉えることが重要だと認識している。

 これはまさに、中央集権化の時代とは異なり、多様な文化・価値観の下でその地域の1つひとつが何を目指し、何を重要視するのかを決めて、唯一無二の地域経済を作り上げていく時代の到来を見据えているからである。単に他の成功事例をなぞるだけで一定の成果をあげる時代は終焉を告げ、各地域がどのような社会・経済を創出するのか、その実現に向けた地域の課題を再定義し、解決に臨む必要があると考える。

 また、筆者が金融機関等の方などとお話しした際、より発展的な考察をいただくことがあり、すでに現場では、こうした変化の兆候が見られ始めていると感じている。ぜひ次稿以降もご覧いただければ幸いである。

以上

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