5G新規事業創出に向けた“押さえどころ”

情報戦略事業本部
ビジネストランスフォーメーションユニット
マネージャー 永地 健紀

はじめに

新聞やTVで5G/ローカル5Gがバズワードとなって久しい。一方で、実態と乖離した5Gのベネフィットが言及されている印象を受ける。客観的に見て5G/ローカル5Gならではの投資回収可能なビジネスは容易に構想することは出来ないと捉えている。例えば長年無線通信事業を営んできたクライアントのリーダー層でさえ、経営層から「なぜわが社は5Gをビジネスに落とし込めていないのか?」と問われている状況にあることをお伺いしている。

本レポートでは、5G/ローカル5Gのビジネス企画をご担当されているリーダー層向けに、5G/ローカル5Gの最新動向を交えつつ、5G新規事業構想の勘所をお伝えする。

特に、経営コンサルタントとして「リアリティに拘った5G新規事業構想」に携わっている所感として、5G/ローカル5Gのビジネス企画は「5G起点(供給側の論理)で検討を進めると、当事者としてのこうあって欲しいという想いがバイアスとなり、威勢の良い夢物語となりがち」である。そのため「各産業・企業のニーズ(市場側の論理)をまず緻密な分析で詳らかにし、そこにひとつひとつのテクノロジーを組み合わせて、どの様にユニークに差別化を達成するか?」を構想することが重要だと捉えている。

まずは特筆すべき業界動向からご説明したい。

異業種の5Gビジネスへの本格参入

2019年12月、Amazonが「AWS wavelength」ならびに「Verizon(米)との協業」を発表し通信業界を驚かせた。

AWS wavelength は、モバイルネットワークオペレーター(MNO)向けの5Gサービスであり、2020年2月時点でVerizon、KDDI(日)、 Vodafone (英)、 SK Telecom(韓)と協業が進んでいる。

AWS wavelengthの具体的なサービスは、MNOが保有するデータセンター(DC)内に、AWSのハードを追加することで、ユーザーのエッジ近傍で「AR/VR」や「スポーツイベントの多視点視聴」などを、超低遅延(10msec以下) で実現可能とするサービスである。

本領域は、通信事業者になじみの深い言葉ではMEC(Multi-access Edge Computing)と呼ばれる領域である。MEC領域の標準化は、欧州のETSI起点で2012年から着手されているが、実情はOpenStackなどの数多くのコミュニティでETSIの標準から乖離した独自の規格化が進められている。そのような動きは、MNOが100社以上存在し他のMNOとの相互運用性が喫緊の課題である欧州のMNOでは特に見過ごせない問題である。そのため、Telefonica(スペイン)のMEC領域のプロフェッショナルであるCristina Santana Casillas氏は、19年9月にロンドンで開催されたEdge関連の会合の場で(1)相互運用性のあるMECプラットフォームをどのベンダーも開発していないこと (2)仮想化基盤ありきで拡張性のないシステムが多いこと を複数のMECベンダーを名指しして問題提起した。本領域はETSIが2016年にリブランディングし、「Mobile」Edge Computingから「Multi-access」Edge Computingに変更したにも関わらず、ほとんどのベンダーがMobileに閉じた相互運用性の低い開発をしている状況にある。

そのため、MNO側の想いとしては、従来ネットワーク(NW)領域のパートナーであるEricsson(スウェーデン)やNokia(フィンランド)などのグローバルベンダーと関係性を保ちつつ、従来のNW領域の発想とは異なるIT領域のパートナーを新しく呼び込みたい意向がある。ゆえに、5G時代のMEC領域のコミュニティには、大小問わずIT系のプレイヤーが多く参入している。

なぜ、CSPとの協業が進んでいるのか?

MNOが協業を進めるIT系プレイヤーの中でも、冒頭に述べたAWS wavelengthの様に、Amazon、Google、Microsoft、Facebookなどのクラウドサービスプロバイダー(CSP)とMNOが協業する動きが顕著になっている

なぜCSPとの協業が進んでいるか?という観点では、MNOの事業の力点が「使命(=①②信頼性高いNW)」から「夢(=③④スマートライフサービス)にシフトしたことが要因として大きい(図表 1)。

図表 1. 5G時代のMNOの戦略
図1. レガシーシステム脱却に向けたマイグレーションにて実現すべき状態

筆者が昨年ディスカッションした欧米のMNOの推進担当者も「今まではEricssonやNokiaと協業してきたが、これからはエンタープライズ向けビジネスに注力するため、Google、MicrosoftなどのCSPとの協業を検討している(=図表1. ④)」と語っていた。

その中で特筆すべき動きは、NWの上に乗るITサービスの領域に限らず、NW自体にもプラットフォーマーが入り込んできたことである。

例えば、Facebookは、Telefonicaと協業し、南米ペルーにてオープン仕様の基地局の開発を行っている。

これは、楽天も参加するTIP(Telecom Infra Project)の営みの一つである。TIPは、Facebookや欧州系キャリアが中心となり、モバイルネットワーク全体(RAN/CORE/TRANSPORT)を対象に、仕様のオープン化・コンテナ化、それを仮想化して制御する(NFV&SDN)標準策定ならびに実証実験を推進する団体である。

なぜ、IT系のプレイヤーがNW領域に染み出しているのか?

IT系プレイヤーがNW領域に染み出して来た背景として、MNOは長年特定のNW機器ベンダーにロックインされてきた。

例えば、AT&TやVerizonはNokiaとEricssonのみ採用してきた。そのため、NW機器に競争原理が働かず、機器の更新サイクルや、NW自体の拡張性・柔軟性が市場の変化に追従できない問題が存在している。

ある米担当者の声として「新しく納入された製品の蓋を開けてみると10年前のソフトが違うシールを貼られて納入されているかと思った(=違いがわからなかった)」という逸話もある。ただし、モバイルNWに用いられる機器は、求められる堅牢性・信頼性が非常に高い水準であることを申し添える。

そのため、MNO側の論理として、モバイルNW機器の仕様をオープン化・共通化することで、サプライヤー間に競争原理を働かせたい意図がある。その中で、FacebookやGoogleなどのCSPは、DC事業者としてサーバーのラックの仕様の共通化・オープン化を進め、競争環境を醸成することに成功していた。そのアナロジーをモバイル業界に入れ込む営みがTIPである。楽天モバイルの最高技術責任者(CTO)のTareq Amin氏も2019年11月にアムステルダムで開催されたTIPサミットにて「楽天モバイルのNWは約7年前に訪問したFacebookのDCに感銘を受け構想されたものである」と発言している。

図表 2.  5Gのオープン化・標準化関連アライアンス
図2.5Gのオープン化・標準化関連アライアンス

このような仕様のオープン化の営みは、従来はキャリア単独で推進していたため、ベンダーの方が主導権を握っており全く進まなかった問題がある。例えば、あるMNOは1社独自でCPRI(Common Public Radio Interface)の仕様の規格化&マルチベンダー化を促す動きを頑張っていたが、全く進まなかった。そのため、5G時代は「米、中、日、欧のMNO」が手を組み、O-RAN AllianceやTIPのようなグローバル横断の団体でオープン化を推進する動向である(図表 2)。

一方で、力関係としては、従来のグローバルベンダーの方が依然として強い状況である。そのため、MNO側は、オープン化した仕様の実証・既成事実化を推進したい思惑がある。それを補完する役割を持つのがCisco(米)などのIT系プレイヤーが中心となって形成されたOpen V-RAN Ecosystemである。

大きな業界構造として、TIPやO-RAN Allianceで「MNO主導でオープン仕様を策定」し、新規参入を目指すCiscoやALTIOSTAR(米)、Tech Mahindra(印) などが、Open V-RAN Ecosystemで、「新規ベンダー主導で既成事実を形成する」構造になっている。この領域では「NVIDIA×Red Hat」など大手ITプレイヤーのNW領域への参入や、Parallel WIRELESS(米)やPHAZR(米)など創業10年未満のスタートアップがOpen V-RANの5G基地局開発に取り組むなど、大小問わず活発な異業種参入が続いている状況である。

MNOが抱える本質的な問題

しかし、上述したようにFacebookなどのIT系新規参入事業者を起点に標準化・オープン化が進むか?という観点では乗り越えるべきハードルは非常に高い。最も重要なポイントは、(逆説的だが)「現状最もOPEX/CAPEXを抑えられるのはベンダーロックインの状態である」ということである。その本質的な真因は「MNOごとに多大なレガシーが個別最適の状態で現存している」ためである。

しかし、上述したようにFacebookなどのIT系新規参入事業者を起点に標準化・オープン化が進むか?という観点では乗り越えるべきハードルは非常に高い。最も重要なポイントは、(逆説的だが)「現状最もOPEX/CAPEXを抑えられるのはベンダーロックインの状態である」ということである。その本質的な真因は「MNOごとに多大なレガシーが個別最適の状態で現存している」ためである。

例えば、楽天のようなグリーンフィールド(まっさらな状態)に構築できる新規参入事業者とは異なり、一般的なMNOは、2G/3G/4Gの膨大なレガシーを保有している。レガシーにおける、信頼性を担保するためのアーキテクチャ、機器、オペレーションも、消費者の人口密度やMNO側のダークファイバー等のインフラを鑑みた個別最適な状態になっている。

そのなかで、5G時代は、例えばRANについてはLTEで1つであったものが5Gでは3つ(RU/DU/CU)に分割され、I/Fを用いて繋ぐ必要がある。各装置(RU/DU/CU)のI/Fは従来のグローバルベンダーの腕の見せ所であり、直近はオープン化されない方向性である。そこにオープン仕様のA社とB社の機器を接続する場合、「みながやれるレベルに合わせることになり」MNO自身の首を絞めることになりかねない課題が存在する。

5Gを整備することで、消費者からどれだけ追加収益を得られるか?

一方で、5G網を整備することで消費者からどれだけ追加収益を得られるか?という観点では、筆者がディスカッションを行った日欧のMNOの幹部は、+0~3 $/月・人程度とみている。特に印象的だったのは、あるイタリアのMNO幹部とのディスカッションの席にて、薫り高いカプチーノを提供いただいた際に「イタリア人は、5Gに払うカネよりも、カプチーノに払う200円の方が大事だ」と半分冗談で明言されたことである。

要するに、現状のMNOの収益で大勢を占める消費者向けモバイルサービスで5Gを構築しても対価が得られないため、欧州のMNO側の論理としては、5Gのサービスも既存のLTE網でできるだけ巻き取る方向性である。

そのため、世界のMNO(特に米国と比較して人口当たりMNO数が約30倍もある欧州のMNO)は、仮想化技術・SDN技術の推進などで既存インフラの経営の質を高めつつ、消費者向けNWへの投資を抑制し、サービス投資(=契約者当たりLTVを向上するためのスマートライフサービス等)へ資源配分をシフトしている状況である(図表 1)。

例えば、TIM(伊)は図表 1 の④の領域(エンタープライズ向けCSP事業)に力点を移行しつつある。2019年に、Google Cloudとの協業や、自ら800名のクラウドエンジニアを採用しエンタープライズ向けのCSP事業を志向する旨、公式リリースを行った。

直近、世界の消費者のARPU(契約者数あたり平均単価)がほぼ横ばい~下降傾向にあることを鑑みると、5Gへの変革で最も重要なキードライバーは「キャリアが抱えるレガシーを5Gへリプレースするに足る、投資回収可能なエンタープライズ向けユースケースの創出」(言い換えると、サステナブルなビジネススキームの構築)であると筆者は捉えている。

ご参考までに、エンタープライズ向けユースケースの有望領域を図表 3にまとめる。

図表 3.  産業用ユースケースの有望領域
図3. 産業用ユースケースの有望領域

特に出口が近い領域は、スタジアムアリーナなどのxRに絡んだエンタメ領域や建設現場である。

しかしながら、どの領域も大小問わず多くのプレイヤーが検討に参画している。

特に、5G時代はGAFAなどの異業種がモバイル事業へ参入する時代であり、ビジネスが激しく変化している状況である。そのため、新規参入を目指す事業者には絶好のタイミングとなっている。

一方で、ここ2~3年で最もホットなエッジ領域においても、(a)仮想化関連の標準がETSIで規定されきれてないこと (b)各キャリア個別最適なNWであること (c)最終的なエンドユーザーのお財布の大きさを鑑みた価格体系でサービスを提供する必要があること が起因となり、MNO単体で推進することは困難な状況にある。

本質的な課題は、エッジ領域のユースケースがロングテールのビジネスであるにも関わらず、その構築・運用に手間暇(=オペレーションコスト)がかかることである。 例えば、ある欧州のMNOは、90のユースケースに対応できるNWリソースコントローラーとアプリケーションを、1つのMECプラットフォームに乗せエンドユーザーに提供することを検討しているが、(a)が起因となり、ユースケースごとにチューニング・個別開発が必要な状況である。また(b)の観点からエッジの地域特性に応じた個別開発が必要である。一方で、(c)の観点から、得られる収益は比較的限られている。

上記を総合すると、MNOが行わなくてはならないビジネスのイメージはコンビニのセイコーマートのホットシェフに近い。つまり分散配置されたストア近傍のエンドユーザーに対して、世間一般の売れ筋商品(=ツナマヨおにぎり)ではなく、そのストア近傍の「特定のニーズ」向けのアツアツのデリカ(=ウニ・昆布・バターおにぎり)を、供給側のバリューチェーン(北海道全体の農家、自社のスタッフ)を駆使し、「市場側のニーズに沿って短期間に品ぞろえ豊富に組み替える」イメージである。

そのため5G時代は、オペレーションコストをなるべく抑えるための「自動化」などの技術がより一層重要な意味を持つと捉えている。

5G時代に求められるDX

要するに、MNO側に求められていることは、NWの計画・オペレーション自体のDXである。必要なケイパビリティは、エンドユーザーのインダストリー・規模・時期に応じて日々変化するニーズを的確に捉え、そのニーズに対するサービスをCSPと同様のスピード感でアジャイル的に、かつ安価に提供できる能力である。

業務がどうなるか?という観点では、従来10年スパンで、標準起点でウォーターフォール型にオペレーションを行ってきた時代とは異なり、「標準が決まっていない(特にMEC領域)かつユースケースが見えていない(=NWの上に乗るサービスがわからない)中で、保有する莫大な4Gレガシーのアセットを効率的に運用しつつ、5G NWへ変革する絵姿を構想し、そことのギャップを埋めるステップを明確化し、徐々にケイパビリティを獲得する必要がある」

そのため、MNO単体ではどうしても慣性の法則が働きやすく、従来のNW側の発想になり易い。そのため、SIerなどIT系のプレイヤーがMNOに伴走し、宮大工的にエッジのインテグレーションや、NWシステム全体の構想、日々のカイゼンをサポートする必要がある。

具体的な動向としては、エッジ×5G領域では、2013年操業のスタートアップであるMutable(米)など(1)MNOやCable TV事業者の保有するインフラを俯瞰し事業構造を把握しつつ(2)ONAPやOpen Stackなどの技術系のコミュニティに参加し最新のテクノロジーを把握し (3)MNOの3rd Partyのアドバイザーとしてサポートする、第三者の視点でMNOをサポートするプレイヤーが生まれている。

日本では、ドコモが2018年創業のMobiledgeX(DT系)と協業しており、5G時代は、特にエッジ近傍を中心に「自前から協業に事業の力点がシフト」されつつある状況にある。

総論として、従来特定のプレイヤーで寡占されていたモバイルビジネスに対して、5Gをきっかけとしたオープン化・コンテナ化の潮流により、異業種かつ小規模~大規模のプレイヤーにビジネス機会が開かれている状況にある。

通信事業者が陥りがちな“ワナ”と”押さえどころ“

前述した通り、5G移行期である2020年は、5G新規参入を目指す事業者には、絶好のタイミングとなっている。

一方で、「何をすべきか」という観点ではお困りになられている方も多いのではないか?

例えば、19年12月に免許受付を開始したローカル5Gについて、具体的なビジネス機会を検討するものの、28GHz帯が全く飛ばないことに愕然とし、「5G通信モジュール間を有線で繋ぐ必要があるのではないか?」「有線を無線化したかったのに、有線だらけのNWになってしまう・・・」など本末転倒な悩みをお伺いすることも多い。

また長年通信関連事業を営んできたクライアントのリーダー層でさえ、経営層から「なぜわが社は5Gをビジネスに落とし込めていないのか?(これだけ世の中で話題になっているためユースケースも沢山あるはず)」と問われている状況にあることをお伺いしている。経営コンサルタントとして、複数の5G関連PJをご支援させていただいた経験から、ローカル5Gならではの提供価値や、新規事業構想のポイントをお伝えしたい。

ローカル5Gならではの提供価値

図表 4は、各国のローカル5Gの周波数帯をまとめたものである。日本は、既存の周波数帯との干渉を避けることを重視し、周波数が割り当てられている状況である。特に、直近日本で認可される予定のローカル5Gの周波数帯は、防災無線等との干渉の懸念から、20年1月22日のローカル5G検討委員会時点では「屋内限定」の方向性である。

図表 4 世界各国のローカル5Gの周波数帯域と特徴
図表 4 世界各国のローカル5Gの周波数帯域と特徴

また、28.2GHz帯は、ある大手グローバルベンダーは晴れた日は700m程度屋外で電波が飛ぶという説明をしているが、この周波数帯は水によって吸収されやすく、湿度の高い日や雨の日を鑑みると、室内でも50~200m程度が実力値ととらえている(逆に、物体内部に入りこまず、反射されやすい性質を有しているので、壁などに反射され、利得を得られるケースもある。そのためカバレッジを広げる用途の反射壁ソリューションを求める声もある)一方で、ローカル5Gのユースケースとしては、建設現場や農場など屋外でのユースケースの比率が大きいため、そのようなユースケースを志向するエンドユーザーから見ると「試してみたいが様子見をしよう」という結論に陥ることが多いのではないか?

ここで、コロンブスの卵のように発想を転換すると、ローカル5Gは、カバレッジが狭く、指向性が非常に高い(イメージはレーザーポインター)ため、既存のNWと干渉を防げるNWを構築できる利点がある。特に、工場の情シスの方は、(問題がないことは頭ではわかっていても)既存のNWに新しいNWをアドオンすることを嫌がる傾向にある。そういったケースで、セキュリティ性高く、スポット的に、信頼性高いNWを構築できるメリットがあるならば、Wi-Fiの10倍の対価を払ってもよいという声をいただくこともある。

ローカル5Gとそれ以外の主なライセンス・アンライセンスバンドの特性を図表 5にまとめる。

図表 5 ライセンス・アンライセンスバンドの特性
図表 5 ライセンス・アンライセンスバンドの特性

5G新規ビジネス検討で重要なポイント

経験側から、5G新規ビジネス検討で最も重要なことは、ユーザー側のニーズを深く洞察すること(=市場側の視点を丁寧に解きほぐすこと)である。

図表 6は、筆者が直接ヒアリングを行った、建設事業者や製造業のニーズ(生声)をマスキングして取りまとめたものである。また、そこから筆者が考えるローカル5Gならではの提供価値をまとめたのが図表 7である。

図表 6  5Gへのニーズ(声)
図表 6  5Gへのニーズ(声)

図表 7  ローカル5Gならではの提供価値
図表 7  ローカル5Gならではの提供価値

図表7において、一般的に5Gの提供価値として語られる(1)高速大容量通信(2)多接続(3)超低遅延 と、ユーザー側の視点からみた提供価値が異なっていることが興味深い。

所感として、ユーザー側のニーズに対して、屋内であればWi-Fi6、屋外であればsXGPやBWAで対応可能なケースが多い。これらのニーズに対して、各企業ならではの強みに根差したビジネスモデルを考えることが非常に重要である。

そこで僭越ながら、抑えるべきポイントを取りまとめたものが図表 8である。

図表8 5G新規事業の陥りがちな落とし穴と押さえどころ
図表8  5G新規事業の陥りがちな落とし穴と押さえどころ

特に経験則から、5G起点で検討を進めると袋小路に陥る可能性が高い。

まず初めに着手すべきことは「ユーザーニーズに刺さる事業のタネを10程度構想し、直接エンドユーザーにぶつけ、仮説を深化させること」である。それがないと、当事者として「こうなってほしい」という想いがバイアスとなり、企画倒れになりがちである。

また、良くあるワナとして「やってみないと分からないからとりあえずやってみよう!」という営みも危険である。ビジネス仮説無しにPoCを行った場合、それが良い結果なのか?悪い結果なのか?判断できず仮説が進化せず、PDCAが回らないためである。そのため、「選任の担当者、KPI、意思決定プロセス、直近1年のコンテンジェンシープランを事前に備えておき、柔軟に軌道修正を繰り返し、仮説を進化し続けることが重要」と捉えている。

つまり、「5G新規事業を目論むプレイヤー自身についても、アジャイル的にPJを推進できるカタチに自らを変革することが求められている」と言えるのではないか。

さいごに

総論として、5G時代においては、第三者として公平な視点でMNOをサポートするプレイヤーが求められている。特にエッジ領域では個別対応が必要であり、宮大工的な強みを有するプレイヤー(SIer、NW機器ベンダー)には大きな事業機会が存在する。一方で、MNOの論理としてベンダーロックインを避けたい事業がある。そのため、事業参入を見据えるプレイヤー側にも自社の製品を如何に売るか?という発想から抜け出し、「第三者として公平な視点で見た時に、自社ならではの強みを活かしどのようなソリューションを提供し得るか?を自戒することが求められている」と筆者は捉えている。

MNO側にもNWの計画・オペレーション自体のDXが求められているが、それ以上に、5G/ローカル5Gに携わる企業側にも、日々変化するニーズを的確に捉え、そのニーズに対するサービスをスピーディかつ安価に提供できる能力が求められている。その場合に「ユーザーが抱える問題は何か?」「何をすべきか?」「どのように進めていけばよいか?」など各種論点を検討する上で「外部パートナーをうまく活用し取組を推進する」選択肢もあることを最後に申し添える。

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