「デジタル規制」と「イノベーション」の二項対立は誤り
コロンビア大学ロースクール教授 アヌ・ブラッドフォード氏と当社代表取締役社長の山口重樹が、データ駆動型ビジネスが「勝者総取り」の構造を生み出すメカニズムを整理しつつ、規制が果たすべき役割が「権利保護」と「市場支配の抑制」の二つにあることから議論を展開しています。
ブラッドフォード教授は、監視資本主義の下で巨大プラットフォームが個人データを収益化し、プライバシー侵害と競争制限が絡み合っている実態を解説し、GDPRを軸とするEUモデルと、州法・業種別法が入り組んだ米国モデルの違いを比較します。続いて「規制はイノベーションの敵」という通説を批判し、EUにテックジャイアントが生まれにくい本当の要因として、統合されていない市場、リスクマネー不足、厳しい破産制度、移民受け入れ力の差を挙げます。
さらに、生成AIによる誤情報拡散や著作権問題など未解決の論点、米国の移民制限が自国の競争力を損ない得るリスク、日本を含む各国にとっての高度人材獲得のチャンスにも言及します。最後に日本企業への示唆として、技術・規制・地政学を一体で理解しつつ、変化に柔軟に戦略を更新できるリーダーシップの重要性を強調して締めくくられます。
【 スピーカー 】
アヌ・ブラッドフォード(コロンビア大学ロースクール教授)
山口 重樹(NTTデータ経営研究所 代表取締役社長)
【 目 次 】
- なぜ規制が必要なのか?
- EUと米国のデジタル規制の分析
- 「接続された無形経済」の重要成功要因
- なぜEUでビッグ・テックが現れないのか?


