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AI倫理のあり方を世界的哲学者、ルチアーノ・フロリディ教授と語る【第2部】

2025.07.18
(語り手)イェール大学デジタル倫理センター教授 ルチアーノ・フロリディ
(聞き手)NTTデータ経営研究所 代表取締役社長 山口 重樹
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持続可能なAI社会への道 -社会的善実現のためのAIとは-

イェール大学デジタル倫理センター教授のルチアーノ・フロリディ氏と当社代表取締役社長の山口重樹との対談は、AIの進化・倫理・社会的役割について、多角的に議論されています。

フロリディ教授はAIの進化と現在の特徴について、近年AIが一種の「エージェント」として機能するようになったと説明し、どの問題にAIがアプローチできるのか、そしてどのように環境を整えるべきかについて、考える必要性を強調しました。

またAIは、機械が生成した合成データを活用する方向へ進むことにより、AIの適用範囲が拡大するため、倫理的枠組みとして、生命倫理から派生した「恩恵・無危害・自律・正義」の四原則に加え、「説明責任」が加えられ、その重要性が増大していると言われています。AIの誤用リスクとして、犯罪的悪用、過剰な利用、本来の用途からの逸脱、三分類でフロリディ教授は捉えており、適切な規制と国際的な連携の欠如が課題と指摘しています。

次の論点として、教授は倫理における二面性、すなわち「ハード・エシックス」「ソフト・エシックス」という考え方を示しています。ハード・エシックスとは、法律がどう定めようと絶対的に正しいことを行おうとする「厳格な倫理観」です。一方、ソフト・エシックスとは、コンプライアンスを超えた先にある、「競争優位を得る倫理観」を指します。ハード・エシックスのみならず、ソフト・エシックスによって競争相手より一歩先を行く要素を持つことの重要性が議論されました。

最後の論点は、社会的善のためのAIについてです。公平性や貧困、移民など数多くの深刻な社会課題や環境問題に対して、AIを活用することで社会をより良くすることへの期待されています。その際にカギとなるのが「設計」と「ガバナンス」であり、デジタル技術を用いてシミュレーションをすることで、ガバナンスが機能すると教授は指摘し議論を結んでいます。

AIの特徴やリスク、社会へのインパクトなど、示唆に富んだ内容となっていますので、是非動画をご覧ください。

*本動画の第1部として、「世界的哲学者、ルチアーノ・フロリディ教授が語るが語るAI社会」があります。

【 スピーカー 】

ルチアーノ・フロリディ(イェール大学 デジタル倫理センター教授)

山口 重樹(NTTデータ経営研究所 代表取締役社長)

【 目 次 】

  1. AIの倫理 -AIを理解する-
  2. ハード・エシックス、ソフト・エシックス
  3. 社会的善のためのAI
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Yamaguchi Shigeki
山口 重樹
株式会社NTTデータ経営研究所 代表取締役社長
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Luciano Floridi
ルチアーノ・フロリディ
イェール大学デジタル倫理センター 教授

情報倫理学と情報哲学の分野において世界的な権威。オックスフォード大学での長年の研究と教育を経て、現在はイェール大学デジタル倫理センター(DEC)の創設ディレクターおよび教授を務める。

研究分野は、情報の哲学、デジタル倫理、AIの倫理、テクノロジーの哲学。教授は「情報哲学(Philosophy of Information)」の創始者として知られ、デジタル社会における倫理やAI、技術の社会的影響に関する先駆的研究で国際的に高く評価されている。

著書や論文は300本以上に及び、政策立案や社会的議論にも積極的に貢献している。

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