logo
Insight
情報未来

新たな時代の社会変革

~グリーントランスフォーメーション(GX)~
No.68 (2021年11月号)
NTTデータ経営研究所 取締役 成田 正人
Profile
author
author
NARITA MASATO
成田 正人
NTTデータ経営研究所
取締役

近年、EUなどの民間NGOを中心に、地球温暖化などの環境問題に関して、国や企業を巻き込んだ様々なイニシアティブが形成されている。また、一昨年突然襲来したCovid-19による世界経済への大打撃からの復活、ポストコロナ時代の成長を促す原動力として「グリーン化」と「デジタル化」が推し進められている。これは、いわゆる2020年初めから急上昇中のSDGs関連ワードである「グリーンリカバリー」であり、EUが掲げたポストコロナの一大経済復興戦略である。我が国日本も昨秋の菅政権発足に伴い「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すと宣言している。「グリーン化」と「デジタル化」を一丁目一番地の政策として掲げ、地球温暖化対策によって産業構造や経済社会の変革をもたらし、大きな成長を目指すことになった。世界的な潮流に比較してやや出遅れ感は否めないが、国のトップが誰であろうとも、その政策はしっかりと引き継がれ、実行されるものと信じたい。

さて、このような状況の中、企業としても自分事として取り組みを進めなければならない。かつては、環境問題への対応は企業の利益とは直結しない、むしろ負担になるという風潮があったが、前述の変化に投資家や消費者の意識も大きく変わってきていると思う。ESG投資に代表されるように財務面での企業評価に加え、気候変動対策などといった中長期的な活動も企業価値に大きな影響を与えるといった投資家の行動変化もその一つである。また、時代とともに人々の考えは変化し、消費者、特に若者は社会貢献や環境問題に対する意識が高くなってきている。消費者は「消費」という投票権をもって企業を選別し、若者は「職業の選択」という行動をもって企業を選別するようになってきていると言えよう。もはや短期的な利益優先の考え方だけでは、世の中から取り残されてしまうといった危機感をもって、取り組まなければならないのである。

では、何をもってグリーン化を推進するか。その一つがデジタル技術の活用による膨大なデータ処理とその可視化であり、企業の活動の変革にあることは言うまでもない。いわゆるグリーントランスフォーメーションの実現である。例えば、動的データ活用として、地球の持続可能性とも整合がとれたエネルギー資源配分を実現するには、従来の「リスク」と「リターン」の判断を超えた、膨大なデータ処理が新たに求められることになる。また、静的なデータ活用として、個々の企業の行動は脱炭素化と整合がとれているのか、グリーン投資の資金が真に意図された使途に割り当てられるのか、また、投資が実際に脱炭素化に効果を挙げているのかなどをデータから分析し、評価する必要性が増してくるのである。企業が自社のCO2排出量を正確に把握し、それによりCO2削減目標の設定や具体的な取り組みを始めるためにも、CO2を数値化・可視化することへのニーズは高い。そして、これらによって企業の情報開示を進めることが、企業への適正な評価にも寄与することになる。

グリーントランスフォーメーションの実現に向け、「Social(官) and Business(民) Design Cycle」コンセプトを軸に、豊富なテクノロジーの知見を活かしたコンサルティングを得意とする当社の今後の取り組みに、是非ご注目いただきたい。

TOPInsight情報未来No.68新たな時代の社会変革