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コラム・オピニオン

新年を迎えて

2020.01.06
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皆様、明けましておめでとうございます。令和初の新年、いかがお過ごしでしょうか。

わが家では、お正月の鏡餅に蜜柑(みかん)をのせますが、正式には、橙(だいだい)という柑橘系の実をのせるそうです。橙は落実せずに年を越すので、「代々栄えて縁起が良い」からと言われています。乗せる橙(や蜜柑)に小さな葉が一枚ついていると、実のオレンジ色と葉の緑色がコントラストを形成して、白い餅の上で存在感を示します。

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色彩理論によれば、色循環表上の反対側にある色を補色といいます(例えば赤と緑)。絵画やデザインの世界では、補色や同系色などを組み合わせることによって、単色の表現よりも美しく見せる手法が用いられます。特に補色の使用は、対象となる色を引き立たせる効果を持つのです。

こうした補色の効果は、自然界でも多く見ることができます。私は、自然界で補色の効果を最も強く感じることができるのは、秋の京都の紅葉だと思います。まずは想像してみてください。

「舞ひ落つる紅葉受け止め艶めかす 苔むす庭の土の強さよ」。

この歌は、私が10年ほど前に初めて京都・永観堂(禅林寺)の紅葉を見たとき、あまりの美しさに感動し、(即興ではなく後からじっくりと考えて)詠んだものです。赤やオレンジに染まった楓の葉を見上げるだけでも非常に綺麗ですが、楓の葉が、先に落葉したイチョウの黄色い葉とともに、緑の苔に覆われた庭の上に落ちているシーンと合わせ見ると、紅葉の美しさが何倍にも引き立ちます。説明はこれくらいにして、写真をご覧ください。

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(永観堂の庭園 2019年11月 筆者撮影)

永観堂の紅葉が格別に美しいのは、綿密な設計により多数の楓の要所にイチョウが配されているうえ、庭を杉苔が覆い、それを日常のメンテナンスで良好な状態に維持しているからだと思います。よく見ると、永観堂の庭の杉苔の間には、多くのスプリンクラーが設置されていました。

庭の土に緑の苔があれば何でもよいというものではありません。生えている苔が、道路やブロック塀で一般的に見かける銀苔だったり、ジトジトのゼニ苔だったりすると、さほど紅葉が引き立たないから不思議です。杉苔じゃないといけません。杉苔の鮮やかな緑の色彩に加え、直立し、かつ尖って立体的な形状が重要なのだと思います。その色と形状で杉苔自体に濃淡と奥行ができるうえ、落葉を地面から少し浮かせながら下から支え、見え方や光の反射を多角的にしているからです。ネット通販で杉苔を取り寄せ、紅葉を載せて、「杉苔効果」を再現してみました(写真)。

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(杉苔×紅葉 2019年12月 筆者撮影)

さて、当社はコンサルティング企業です。コンサルティングにおける主役はもちろんクライアントの皆様です。当社は、最新の理論やテクノロジーと実践経験を踏まえつつ、緊密なコミュニケーションを通じて皆様のニーズや実態を把握したうえで、ご要望に対応します。判明した課題に対しては、必要に応じて杉苔のように「尖った」提案も交えながら、地に足をつけてしっかりとゴールまで伴走し、皆様の一層のご発展のお役に立ちたいと考えております。

本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

Profile
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Miyanoya Atsushi
宮野谷 篤
取締役会長
株式会社NTTデータ経営研究所
岩手県出身。1982年東北大学法学部卒業。同年日本銀行入行。金融市場局金融調節課長、金融機構局金融高度化センター長、金融機構局長、名古屋支店長などを経て2014年5月理事(大阪支店長)。2017年3月理事(金融機構局、発券局、情報サービス局担当)。2018年6月から現職。
専門分野は、金融機関・金融システム、決済・キャッシュレス化、金融政策・金融市場調節。
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