テクノロジーが進化し、社会や企業が変革しようとしている中で現在のコンサルティングファームに求められるものとは?
山口遠藤さんには以前からNTTデータの事業について多くのアドバイスを頂いておりました。そこで本日は、コンサルティングファームのあるべき姿についてお話をいただこうと思います。
NTTデータ経営研究所は社会環境分野や政策提言において、業界内でもそれなりの存在感を持てていると自負しています。しかし、テクノロジーの進展が社会や経済・経営に大きく影響を与えている中、テクノロジーのインパクトを一層理解した上で、政策提言や経営戦略のコンサルティングを強化していく必要があると考えています。
また、NTTデータグループにおけるコンサルティング専門会社というメリットを最大限生かして、テクノロジーの知見とグローバルでのデジタル変革に関するベストプラクティスなどもNTTデータ経営研究所が集約し、情報発信していけるような存在になりたいと思っています。
まずは、デジタル変革により社会や企業が変わろうとしている中、現在のコンサルティング業界についてどのように感じておられるのか。また、従来とはどのように異なる変化が起きているのかについて、お話いただけますでしょうか。
遠藤山口さんがおっしゃる通り、テクノロジーの進展で社会や経営の在り方が根本から変わりつつあるにもかかわらず、それに上手く適応できてないのが日本という国、そして多くの日本企業の特徴であると思います。
私が約30年前にコンサルタントになった時も、実は「テクノロジー」、今で言うITが重要視されていました。ITの重要性は30年前から変わっていないと思いますが、現在ではさらに進化し、AI、ビッグデータ、メタバースなど、社会や会社の在り方を根幹から揺るがすようなテクノロジーが続々と出きています。しかし、社会や会社の在り方は相変わらず旧態依然としています。もちろん、企業もいろいろと模索してはいますが、この流れの中、経営をどのように変えて行ったら良いのかという答えがないまま大きな波に流されて進んでいるような気がします。
私がコンサルタントへ転職した頃は「コンサルティング業界に入って大丈夫か?」と皆が心配してくれていた程、黎明期の業界でしたが、今では社会的な認知も得られ、コンサルタントの重要性は高まっています。コンサルタントの役割がどんどん大きくなっていく中、「変革のパートナー」になるべきコンサルタントが今まさに必要だと感じています。
しかし、経営者視点で会社の変革を語れるコンサルタントがどれほどいるかというと、そんなにはいないのが現状ではないでしょうか。現在ではコンサルティング業務が細分化され、それぞれの専門性はあるけれども経営全体に大きな視点で語れるコンサルタントは育っていないような気がしています。多くのコンサルティングファームが、クライアント先への人材派遣、つまり高級人貸し業になってしまっている。
コンサルタントは優秀でよく働きますから、クライアントは一旦使うと手放さなくなるケースが多いと思います。しかし、長期間一つのクライアントに常駐し、リサーチや資料作りばかりやっていると、やがてキャリアに不安を持つ若手コンサルタントもいると聞きます。クライアントに頼りにされることは良いことですが、「このような仕事でコンサルタントとしての実力がついているのか?」と不安を感じている若手コンサルタントが私のところによく相談に来ます。
山口確かに、コンサルタントの役割や仕事の中身が細分化され、昔はコンサルティングと言わなかったような仕事も、コンサルティングと言ってやっているケースもあると思います。
そうは言いながら、やはり社会から求められている真のコンサルタントというのは、「経営目線」で語れる人材であるという話もありました。では、今、コンサルタントには何が本当に求められていると考えればよいでしょうか?
遠藤やはり、今はテクノロジーだけでなく戦略や組織、業務も分かる…様々な要素を複合的に語れるようなコンサルタントが必要なのだろうなと思います。
正直、これだけ社会環境の変化が激しく、しかも新しいテクノロジーがどんどん生まれてくる中では経営の在り方というのはそんな簡単には描けないと思います。そのため、経営のグランドデザインを一緒に考えてくれる、新しい経営のあり方を一緒に考え、描いてくれるような人が求められていると思います。
もちろん、グランドデザインをいかにブレイクダウンして実行していくかというところにもサポートは必要ですが、そもそも最上流のところから議論ができるようなコンサルタントが必要なのだと思います。今は残念ながら、その役割を一部の外資系コンサルティングファームが担っていますが、本当にそれで良いのだろうかという問題意識を私もずっと持っています。
やはり日本企業の価値観を理解し、日本企業に合った提言ができるような国産のコンサルティングファームが必要だと思います。
