人間情報データベースのELSI対応に関する有識者検討会の開催
1.はじめに
2022年4月施行の改正個人情報保護法では、個人情報取扱事業者に対し、より具体的な対応が示された。また、個人情報取扱事業者は倫理観やモラルをもってデータ利活用ビジネスを展開し、レピュテーションリスクにも備えていく必要があるが、これらすべてに対し、事業者の解釈に委ねられた部分は少なくない。
このような現状において、人間情報データベースを所管している株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所(以下、当社)は、今般、一般財団法人日本情報経済社会推進協会(以下、JIPDEC)主催の下、計2回に亘る有識者検討会を実施したのでその内容をお知らせする。
2.有識者検討会概要
① 有識者検討会開催の背景・目的
当社は、人間情報データベースに関するELSI1対応を強化し、安全性・信頼性の向上、および客観性・透明性の向上を図るべく、2020年度以降、本検討会を通じて得られた知見や助言を活かし、データ取得から提供に至るまでの一連の運用を改善し続けている。(2020年度、2021年度の詳細はこちらから)
本検討会では、2021年度に有識者からいただいたご意見に対する当社対応内容に関して議論した後、今後の新規ビジネスに関する懸念事項に関して議論した。
1 ELSI:ELSIとは、倫理的(Ethical)・法的(Legal)・社会的(Social)課題(Issues)の略称で、1990年にアメリカで始まった「ヒトゲノム計画」の中で登場した概念である。
② 有識者検討会委員一覧
◎ | 森 亮二 | 弁護士法人英知法律事務所 弁護士 |
菊池 浩明 | 明治大学総合数理学部先端メディアサイエンス学科 専任教授 | |
高橋 克巳 | 日本電信電話株式会社サービスイノベーション総合研究所社会情報研究所 チーフ・セキュリティ・サイエンティスト | |
古谷 由紀子 | サステナビリティ消費者会議 代表 |
③ 各回の開催概要
有識者検討会 第1回会合 2023年1月25日(水) | |
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有識者検討会 第2回会合 2023年2月6日(月) | |
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3.今後について
冒頭でも触れた通り、事業者の解釈に委ねられた部分に「同意取得」の在り方が挙げられる。昨今、日常的に同意を求められる機会が多くなっており、本人が内容をよく理解していない状態で同意してしまう問題や、内容を理解するために熟読し本人が疲弊する「同意疲れ」と言われる問題が起きている。このような問題に対し事業者は、同意を得る本人が正確に理解し、かつ同意することの負担を可能な限り軽減できるよう、事業者の解釈で創意工夫することに尽力している。
そのため、当社では、より適正に、より安全にデータを利活用する運用を人間情報データベースに活かすべく、2022年度は計2回に亘る検討会を実施した。当社では、情報提供主体およびクライアントへの「透明性」と「アカウンタビリティ」はもちろん、分かりやすさへの配慮も重要なファクターとして位置付け、人間情報データベースの運用を改善し続ける方針である。
また、これまでの有識者検討会では、個人情報を取り扱う担当者が有識者およびJIPDECと相対し、個人情報に関する取り組みを強化してきたが、2022年度から人間情報データベースに係わるステークホルダーを含めた有識者検討会へと拡大した。今後も引き続き、当社の個人情報に関する取り組みの発信力の強化や、個人情報に関する円滑な企業間連携を推進していきたい。