羊の腸内メタンを削減する海藻に着目!農業分野のメタンガス排出量削減プロジェクト

client オーストラリア 某州政府の農水省

農業分野での排出量が多いメタンガス削減を目指す、国際連携プロジェクトの組成を目的に、オーストラリア国 某州内企業と日本企業のマッチングを実施しました。具体的には、カギケノリという羊の腸内メタンガス削減効果を有する海藻を養殖するオーストラリア企業と国内大手アパレル企業とのマッチングを実現しました。本国際連携プロジェクトにより、「Low methane wool」の製造実証に向けた準備を進めています。

農業分野におけるメタンガス排出量削減に向けた国際連携プロジェクトの組成

今回のプロジェクトは、農業分野における脱炭素化を目指す国際連携プロジェクトの組成が目的であり、州内企業が有する農業関連の脱炭素技術と日本企業のマッチングを実施するものです。昨今地球温暖化の原因となる温室効果ガス(GHG)のうち、二酸化炭素(CO2)に次いで多いメタン(CH4)の濃度が上昇しており、メタンは特に農業分野の排出量で大きな割合を占めることから世界的に削減が求められています。

羊の腸内メタンガス削減効果を有する海藻による「Low methane wool」製造プロジェクトを組成

今回のプロジェクトでは、まずオーストラリア 某州内で策定された農業における脱炭素化ロードマップを基にプロジェクト領域(家畜・穀物・バイオマス燃料等)を定めることから実施しました。領域を定めた後に、オーストラリア企業が持っている技術と日本企業の脱炭素化ニーズを照合し、プロジェクト仮説を作成しました。そのプロジェクト仮説を基に日本企業へのアプローチを実施した結果、プロジェクト組成に成功しました。そして、現在実証に向けた準備を進めています。

本件で特に大変だったポイントは、オーストラリア 某州内企業と日本企業とのマッチングを成立させることでした。該当テーマに関する課題を抱えている日本企業・団体をリストアップし、州内企業の技術紹介を実施していましたが、興味を持っていただくものの、プロジェクト化しない場合が多々ありました。最終的には、当社のチャネルの中で、マッチする企業が見つかったため、プロジェクトが成立しました。

結果として成立したプロジェクトは、国内のアパレル企業とのプロジェクトです。

国内のアパレル企業では自社のScope3排出量(サプライチェーンでの排出量)の削減を検討していましたが、排出量の中で大きな原因となっていたのが製品に使用されるウールでした。羊などの反芻動物は腸内からメタンガスを発生させているため、飼育することによるGHG排出量がコットンといった他原料よりも多く、大きな負担となっています。その課題を解決する方法として、オーストラリアで研究が進められていたカギケノリという海藻に着目しました。カギケノリを飼料として羊に食べさせることでメタンガスの排出量を80%削減出来るという研究結果があり、ウールの排出原単位の削減に大きく寄与することが期待されます。そこで、メタンガスを削減したウールを「Low methane wool」とし、製造実証プロジェクトを進めることになりました。

新たな環境配慮素材「Low methane wool」の製造により、エシカルファッションへの大きなインパクトを与える

プロジェクトは緒に就いたばかりで、今後カギケノリを羊に給餌する具体的なパイロットプロジェクトの実施を予定しています。本プロジェクトの研究により、将来的には低メタンな衣料品が市場に流通することになるため、エシカルファッションとして注目されると共に、将来的には当たり前にLow methane woolが流通されることを期待しています。今回はオーストラリア企業と日本企業の国際連携によるプロジェクトであるため、Low methane woolが製造された際には、日本国内だけでなく、国際的に大きなインパクトが望めます。