リチウムイオンバッテリーにかかる欧州規則への対応及びバッテリー回収情報管理システムの高度化に向けた実証事業支援

client 経済産業省補助金の執行団体、自動車関係の業界団体、地方自治体等

本件は、我が国の産業政策の重要な項目である「欧州電池規則」への対応に関連した複数のプロジェクト群である。大きな柱として、経済産業省補助金の執行団体の事務局支援業務および自動車関係の業界団体の蓄電池回収情報管理システムの構築支援を行った。現在進行形のPJであるものの、我が国の産業政策の重要な部分である、欧州電池規則への対応について関与することが出来た。

蓄電池をユースケースとしたデータ連携基盤構築やリサイクルシステム、技術の確立に向けた、国を挙げての対応

全世界的に自動車のEV化が加速している中、EUは、EVの隆盛とそれに伴うリチウムイオン電池の流通拡大を見据えて、域内の産業保護・育成や、希少鉱物資源の循環等を狙って、「欧州電池規則」を制定・発行した。

当該規則は、欧州で販売される電池について、デュー・デリジェンス(DD)やリサイクル率、カーボンフットプリント(CFP)等に関して、一定の義務を課すものである。

事業者が当該規則へ対応出来ない場合、EU圏内に車等の電池を含む製品を供給出来なくなるおそれがある。これを受けて、我が国でも経済産業省や自動車業界を中心に欧州電池規則への対応が活発化していた。この中で、かねてからチャネルがあった自動車関係の業界団体等から引き合いがあり本プロジェクト郡が始まった。

クライアントや、各種ステークホルダーとの折衝を乗り越えて、事業を形に

本プロジェクト郡におけるアプローチの例を以下にご紹介する。

経済産業省の補助金の執行団体の事務局支援においては、補助金の公募要領策定の段階から関わった。ここでは、CFPの計算、DDの確立について、我が国で対応するため欧州の規制動向を睨みつつ、我が国での対応を検討し、仕様を固めた。

その後も主に蓄電池をユースケースとしたデータ連携基盤の構築、及び蓄電池のリユース・リサイクル技術の開発、を行う補助事業者(=補助金を受ける事業者)の進捗確認や報告書へのコメント等の支援を行った。当該補助金の内、データ連携基盤構築に関しては、自動車業界を中心として多種・多様なステークホルダーを含み、かつタイトなスケジュールの中で、事業者が構築を完了出来るよう、進捗管理や状況の整理等を逐次行った。また、CFP計算の試行事業についても、そもそも前例のない当該事業を0から行うこと自体が大変意義深い、という状況を事業者によく理解してもらうことに腐心した。

他方、リユース・リサイクルの技術開発においては、例えば、回収した電池から有用な金属を回収する技術、電池の残量を素早く測定して、リユースするか否か・リユース先の最適な用途を判定する技術、等、リサイクルを開発事業者によって得意とする技術が異なるところ、欧州の規制動向や、我が国の政策等と照らして、開発する技術の活用の方向性等を事業者と議論した。

加えて、電池回収情報管理システムの構築支援においては、既存の自動車リサイクルに関わるフローや、廃棄物処理法等と整合が取れる形で、システムの全体像を設計することに苦心した。

蓄電池に係る資源循環及びデータ連携という領域で、早くから優位なポジションを確立することに成功

我が国の産業政策の重要な部分である、欧州電池規則への対応や蓄電池データ連携基盤の構築について関与することが出来た。また、本件一連のプロジェクト郡で得た知見を、蓄電池関係の様々な関連業務に活用することが出来た。

例えば、こうした国の動きに呼応する自治体や民間企業も現れる。弊社では、蓄電池関係の知見を活かして域内の自動車・電池関連企業等を巻き込んだ、自治体独自の蓄電池戦略策定支援を行っている。国の政策と整合性を保ちつつ、自治体レベルでも蓄電池の資源循環を目指している。

また、資源循環や経済安全保障の観点から、今後、様々な分野や製品で、蓄電池を先行ユースケースとして、データ連携基盤構築の流れが加速する見込み。