こどもや若者の声が届く社会を作るために~こどもの意見反映の調査研究とこどもに関するデータ連携の実証事業
client こども家庭庁・デジタル庁
こどもを取り巻く環境は貧困、虐待、いじめ、不登校など厳しさを増しています。すべてのこどもや若者が幸福な生活を送ることができる社会の実現に向けた国の重要プロジェクトを2つ支援しました。一つはこどもや若者の声を聴いて政策を作るための調査研究、もう一つは支援が必要なこどもや家庭のSOSをデータ連携により早期にキャッチする実証事業で仕組みの構築と効果検証を行いました。
こどもの声にどう耳を傾けるか、声なき声をどう発見するか
すべてのこどもや若者が幸福な生活を送ることができる「こどもまんなか社会」の実現に向けて政策が大きく変わろうとしています。これまでこどもや若者は保護や支援の対象であっても、当事者として政策や社会づくりに参画することはほとんど重視されていませんでした。こども基本法が成立し、こどもは権利の主体であることや最善の利益を図ることがその理念に掲げられ、こども政策を総合的に進めるこども家庭庁が設立されました。そして、こどもや若者、子育て当事者の視点を重視し、意見を聴いてともに社会づくりを進めるとされました。また、貧困や虐待、不登校、いじめなどの困難な状況にあり、声をあげることが難しいこどもの潜在的なSOSを早期に発見する仕組みの構築が求められていました。
2000人のこども・若者の意見を聴く、本人同意に基づくマイナンバーカードを活用したデータ連携を実現
この調査研究では、社会づくりにおいてこどもの意見を取り入れるため、自治体や海外の取り組みを調査し、有識者の意見も聴取。その後、2,361人のこども・若者の声を聴く試み(モデル事業)を行いました。これは国内初の規模で、対面、オンライン、アンケート、オープンチャットなど複数の手法を組み合わせて実施しました。社会づくりにおいてこどもや若者が参画し、意見を述べやすくする方法という抽象的なテーマについて意見を聴く難しさを感じましたが、国内外の先駆者の経験から学び、試行錯誤しながらこどもたちと共に取り組めばいいとある意味割り切って取り組むことができました。
実証事業では、本人同意に基づきマイナンバーカードを使ってこどもに関する行政データと学校情報を連携して支援ニーズを把握するための仕組みを構築し、効果や課題を検証しました。スマートシティー化を進める石川県加賀市をフィールドにNTTグループ5社、EDUCOM、東京大学と協力して実施。全国インフラであるマイナンバーカード等を使った仕組みがうまく行けば、データ連携の課題であるデータの標準化に対応でき、全国の自治体で再現性が高まります。実証事業の目的のためには多くの同意が必要ですが、データ連携に対する理解が困難であることや、センシティブな情報提供への不安や疑念が予想されました。この課題に対し、中学校を訪れてデータの意味やデータ連携で実現できること、今回の実証事業が加賀市の未来につながるチャレンジであることを生徒に直接説明し、保護者にその様子を参観してもらった上で説明会を行いました。結果として、家庭数の7割が高い同意を得て、データ連携により潜在的な支援ニーズがある可能性がある生徒を抽出することに成功しました。
社内外のつながり、ネットワークが広がり、こどもまんなか社会を着実に進めていく一員に
意見反映の調査研究はこども・若者の社会参画や意見反映に取り組む意義や進め方を国の事業としてはじめて取りまとめたことで、長年にわたり取り組んできた自治体や団体、専門家の方々の取組や知見が社会に発信され、行政機関はもとよりメディアや企業から多くの関心が寄せられ、当社もこの分野のプレーヤーとして認知されるきっかけとなりました。また、データ連携の実証事業は保護者ではなくこどもに直接、データ連携のゴールや意義を丁寧に説明し理解を得るプロセスを経ることで、これまでデータ連携やマイナンバーカード活用で難しいとされてきた本人同意は達成できるという成果を出すことができ、デジタル活用の道を広げられたのではないかと自負しています。これらの成果により次年度も関連プロジェクトを受注し、こどもまんなか社会を進めていく一員として尽力しています。