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『情報未来』

当社の研究、コンサルティング、事例から厳選された、お客様の問題解決に役立つ情報誌です。

No.51(2016年7月号)

マネジメントの復権 │ 第 04 回

スタッフの管理指向を脱しよう

四條 亨
四條 亨
NTTデータ経営研究所 情報戦略コンサルティングユニット デジタルイノベーションコンサルティンググループ アソシエイトパートナー

しじょう とおる
生産財、サービス財を中心とする戦略的マーケティングが専門領域。企業ビジョンや戦略策定、CS経営、営業マネジメント、ナレッジマネジメント、組織とIT等のテーマは、消費財メーカや金融機関等にも広く経験を持つ。主な共著は、『顧客ロイヤルティ戦略』(同文舘出版)。

「管理」の仕方が変わる?

 海外のある大手企業では、いわゆる中間管理職による人事評価・考課が人的稼働の大きな部分を占めており、その無駄を取りやめて要員を削減すると昨年報じられた。個々の担当者について具体的に数値目標を設定し、それに対する達成/未達の程度をもとに評価を行うという。これによって直接的にアウトカムの設定と評価が可能になり、人事評価関連のコストが省けると考えているようである。
 これまで評価には人が介在し、コミュニケーションを通じて成果目標に関する調整を行ったり、結果についても設定しやすい定量目標だけではなく、メンバの努力や成長といった定性的な評価を含めたりしてきた。そのような取組みに比べれば、このやり方はてきめんに「効率化」された企業運営を行うことを可能にするであろう。そしてこのような評価の仕方は、少なからぬ業務が「規準化」され定量化が進められることによって、アウトカムの評価をしやすくなったことを前提として可能になってきたと考えられる。
 このようにしてまで企業組織の運営の効率性を得ることが妥当かどうかは、組織(体内)に何を求めるかによって大きく変わってくるはずである。

スタッフ業務の変化

 周知のように以前から、組織運営における効率化は進められてきており、その一つとして挙げられるのはサービス(サポート)スタッフのアウトソース化の流れである。
 ひと頃は企業及びそのグループにおいて間接業務(サービススタッフの担務業務)をシェアード化することが行われていた。今日のBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)への進展もその延長上にある。その背景には、例えばERPの導入が進んだことや業務の企業固有性が減少して標準化が進められたことによる影響が少なくない。またその当時導入されていったERPは、多くの場合企業固有性が少ない財務会計や人事・給与といったモジュールが中心になっていたことは言うまでもない。
 これらのスタッフ業務を中心に、今日に至るまである程度の標準化と集約化、アウトソーシングが進められつつある。その一方で、企業経営そのものに関わるゼネラルスタッフの業務は、本来は汎化されにくいものとして、多くの企業でそのまま存置され続けている。

スタッフ業務とは何か

 私たちはラインとスタッフと言ったりするものの、スタッフ業務が何であるかをみようとすると、業種業態や組織編制によって整理の仕方が異なってくる。その中にあって、例えば以下のように整理区分を考えることができる。

◆スタッフの位置づけと期待※1
  1. ①ゼネラルスタッフ:

     企業の経営者などのマネジメント層の意思決定を直接的に支援する機能/サービスを提供するスタッフ
    例:経営企画や戦略財務など

  2. ②サービススタッフ:

     特定業務のプロとしての要件が求められる人事、法務、経理財務などの専門スタッフ、及びその部門の中でルーティン作業を担務するサービススタッフも併存

  3. ③サポートスタッフ:

     ラインの業務支援等のサポートを担務するスタッフ(ライン付きのスタッフなど)

◆スタッフの要員特性
  1. ①専業的なスタッフ※2
    専門機能や能力に基づき専業的に担務するスタッフ

     例えばトップマネジメントの意思決定支援については専門性が求められるため、それに応えられる能力や技能を持つスタッフが担務することで効果性が上がるメリットがある。一方で専門性と自立性から、かつてGEがエリートスタッフの帝国と化したような危険性も持っている。

  2. ②時限的なスタッフ※3
    企業内のローテーションの一貫で特定のスタッフを担務する

     それまでの教育や能力といった背景がある場合、①の専業的なスタッフと同様に活動することができる。専業としてスタッフ組織に閉じないため、そこでの経験をライン業務に持ち帰ることによって、マネジメントの意思決定の方向性の共有や異なる立場の理解、社内のリソースへのアクセスなどが可能になる。それによって組織的な活動が進化していく一助になる。しかし果たせる専門能力が充分でない場合や頻繁に人が入れ替わる場合は、施策やその背景に関する継続性が欠如することによる問題を生じることもある。

  3. ③ルーティン的なスタッフ※4
    様々な管理のためのルーティンワークを遂行するためのスタッフ

     実務的な習熟などから現場とのやり取りを遂行・差配しているスタッフも少なくない。企業の業務固有性が残れば意味があるものの、多くの場合コストリダクションの対象になりがちである。かつて余剰人員対応のために管理間接部門に配置されたスタッフも相当する。

スタッフ活動の陥穽

 本稿の主テーマからすると、マネジメント層の観点から特に留意が求められるのは、直接的な接点が多く役割上からも関わりが多いゼネラルスタッフと専門(サービス)スタッフになるため、以下はこれらを中心に触れていく。スタッフの活動で見受けられる問題のうち、これまで経験的によく見受けられた3点について論じてみよう。

◆第一としては、現場感を持たず、いわば机上演習だけでラインに成否を押し付けること

 スタッフが現場・現実感を踏まえず、経営計画や諸戦略を調整・主導してしまう。その実現の成否に関しては結果責任を負わず、整備した数値管理目標などに基づいてことの成否をラインに押し付けてしまうことは、問題がある。以前の論考でも触れたように、「戦略課題」を埋没させたままストレッチ目標(多くは売上数値の無理な積み増し)を行うならば、一見すると積上げは全社の目標達成に結実するように見える。しかし課題を内包したまま、ラインの結果責任を問うことは「遂行と結果の責任管理」を小分けしているに過ぎない。それは合成の誤謬を生じたり、中長期的なリソースを損ない短期の目標達成への傾注という問題を生じたりすることになる。
 マネジメントをアシストする役割からすれば、ライン現場における課題や限界を含んで、全社組織的あるいは時系列を考慮したバランスを持った経営をしていくようにしていくことが望ましいことはいうまでもない※5

◆第二として、前例踏襲か前例否定の二極化を生み、更にその内実を形式化させていくこと

 なんらかの施策を実施して、それが充分な成果を生じた場合、その施策が継続されていく。その際に施策自身や取組み方などを見直さず、前例として変えないことも少なくない。そのように取り組めば短期的には効率性を高めていく。あるいは担当や所掌役員が変わったことをもって、前例を否定することを目的とするような変化を実施する。これらはいずれも、環境の変化や実施に伴って生じる問題について立ち止まって考えることはない、という状況を生みがちである。このような点からは、取組みを少しづつチューンアップ、レベルアップさせていくことがうまいスタッフ組織とそうでない組織の差が大きく生じている。
 チューンアップをうまくできないスタッフ組織、特にそれがローテーション型の場合、部門長以下担当までが逐次入れ替わるため、取組みの思想や求められる行動がうまく引き継がれていかない。そのため施策取組みは「形式化」を辿っていくことになる※6

◆第三には、スタッフがマネジメント層の指示通りに唯々諾々として活動することに留まってしまうこと

 マネジメント層の意思決定などを支援するという役割からすれば、その指示を受けてあるいは考えを忖度して、スタッフは検討を行うことになる。一方で実際には、マネジメント層も人であるから、様々な思惑や価値意識をもって言動を行っている。時としてマネジメント層の言動に対して、スタッフとしても何等かの諫言が必要と見られるときもあるはずである。スタッフは当該企業という組織に殉じて、その経営に資するという役割機能を果たすことが理想的な姿ではないかと考えるが、実際的にはスタッフは「主君」に仕えるかのように扱われたり、振る舞ったりしていることが少なくないようである※7

マネジメントの復権のためにスタッフに望まれることは何か

 これまでスタッフ機能とそこが行う管理から生じる問題について、触れてきた。そこでスタッフ機能がマネジメントの復権のために資する活動を行うようになるためには、どのようなことを望んでいくのかと言うことを以下に論じていきたい。

◆計数管理に偏しない

 財務のような結果データにせよ、経営企画のような先々の目標データにせよ、スタッフは計数を設定したり管理したりすることに傾注しがちである。特に大企業ほど、社全体を見渡して状況を理解し先々を計画するに際して、計数が取り扱う中心になってくる。IRを始めとして、以前にもまして計数の把握と管理は重要性を増している。しかし計数管理に傾注することは、計数の責任を(実現の手段を持っていることから)ラインに押し付け、その責を追及することになりがちである。
 実は筆者もマネジメントコンサルタントとして駆け出しの頃は、スタッフは様々なデータを収集分析して、経営の意思決定を支援しているイメージに捉われていた。しかし様々な企業と取組みをさせていただく中で学んだことは、データや計数の管理の大事さもさることながら、生起しつつある環境変化や経営課題をどのように読み解いて逸早くそれらに適確に対応することを考えることであった※8

◆スタッフ(特にゼネラルスタッフ)には、現場に赴き課題実態を把握させる

 現場で生じている現象は、掘り下げていくと経営課題に結実するようなことが少なくない。コーポレートの課題たりうるものについては、それらを高いアンテナ感度で拾い上げて、マネジメント層の気づきや認識を補完していくことが望まれる。計画策定などで筆者も経験させられてきたことであるが、現場課題はラインから上げられるべきものであり、スタッフ部門としてはそれらの軽重を判断するだけと考えている場合も少なくない。しかし現場での課題認識がどのように経営マターに結実するものであるかということは本来はマネジメントの観点であり、その現場課題の解決をラインに押し付けるものであってはならないはずである。
 コンサルタントしての筆者の師匠は、「現場に行かずに自席で分析や調整・報告だけをしているスタッフはスタッフとして機能していない」と喝破していたが、これはまさに現場の実態課題を起点として分析や検討を行うことが、スタッフとしての大前提になることを示している。マネジメント層には、生じてくる環境の変化に対応し経営手段を用意する観点から、スタッフが経営の課題について見出していくように、スタッフに対して現場で生起している課題実態を掘りに行くように、奨励してもらう必要があるかもしれない。

◆諫言を受け入れるマネジメントの度量と諫言を伝えられるスタッフを育成する

 前述のようにスタッフの役割の一つは、マネジメント層に対する諫言をすることにあると考えている。その点から「茶坊主」は否定されるものであるし、他方無関心のようにコミュニケーションが進まない場合も、実はデメリットが大きい。マネジネント層が諫言を受容する度量と同時に、諫言を伝えてくるような(上意下達でない)スタッフを育成して配置することが望まれる。

◆情報格差による個別の利益を排除する

 スタッフはマネジメント層を支援する役割から、様々な情報に接し社内の固有データなどを知ることになる。人によってはこのような情報を自身の力の源泉にしてしまっている場合がある。筆者がかつて、ある大手企業でB2Bの営業マネジメント変革に入った時のことである※9
 スタッフ部門の部長であるクライアントの責任者は、ある日を境にプロジェクトの推進者から非協力的で動かない方向に変化してしまった。トップマネジメント層の理解を背景に進められたものであったため表立っては邪魔はしてこないものの、仕組みを作り上げる際に「当社の固有事情から、これはできない」「営業等の現場が変えられる部分は、営業出身である自分が判断する」と言って、変革の内実を実質的に換骨奪胎するように動き始めたのであった。彼がトップマネジメント層へのゲートキーパとなっていたこともあって、筆者は力及ばず50点程度までしか変革を実現できず、忸怩たる思いをしたことがあった。
 プロジェクト中から悩み考えてみた結果は、変革が達成されると、その責任者の社内的な力(および立場)の源泉である案件情報(新規のネタや進捗など)がトップマネジメントにも見える化されてしまうことに気付いたため、それを防ぎたかったのではないか、というものであった。トップに対してスタッフとして、ノルマ数値が足りない時に新規案件候補を示し、進捗問題の有無を先駆けて耳に入れるなどの動き方をして信頼を勝ち得ていた模様であり、その源泉は情報格差にあったのである。
 この例はいささか極端ではあるかもしれないが、スタッフが本来の役割機能である企業組織としての利を追い求めてマネジメント支援を行えるように、スタッフの言動や背景についても目配りをしていくことも、マネジメント層に求められることではないかと考えている。
 そのような「価値観」を共有するスタッフ組織を創成することは、管理指向を脱したマネジメントに結実するであろう。

  • ※1仮に①~③のような区分をしてみたが、実際には事業ラインとコーポレートの両方にゼネラルスタッフが存在することもあり、またラインで多様なサポートがなされる(例えば経理業務など)と共にコーポレートでも同じような業務のうち計数のルーティンを中心に扱う担当がいたりする。したがって組織の編制の仕方や規模などに応じて、様々な形で位置づけられるといえる。
  • ※2日本企業では経営企画部門にはあまり多くない印象があり、財務や人事などの専門機能において専業的な形が多いように見受けられる。
  • ※3いわゆるゼネラリスト育成の観点から、日本企業ではゼネラルスタッフや専門スタッフについても時限的スタッフが多い。本人のCDP(キャリアディヴェロップメント)にしかなっていないような場合もあり、組織の役割機能として不十分さに出くわすこともある。
  • ※4今日では企業のコスト管理や施策が厳密になることに伴って、このような余剰人員配置としての位置づけは減っているはずである。十数年前の経験になるが、ゼネラルスタッフ的な稼働ができる企画スタッフが若手中堅2名に対して、情報を流通させるだけの中高齢のルーティン的なスタッフが十数名配置されている組織に出くわして驚いたことがある。実際のビジネス上の稼働で知恵も時間も若手中堅に過負荷がかかっていたことは言うまでもない。
  • ※5私たちマネジメントコンサルタントのビジネスでは、課題対応期間に能力を尽くすことが求められる。例えば新事業が結果的に成功したとしても、それはクライアントの努力をもって多とするものであり、案出やプランニングを支援したことをもってその結果の果実を得るものではないと考えられている。しかしスタッフは同じ会社組織に長くいることからも、結果責任と果実をシェアすべきものであるはずである。それが外部のコンサルタントと協働することが多いせいか、コンサルタントのように結果責任を一切負わないのであれば無責任との誹りを免れないであろう。
  • ※6例えば昔から筆者の経験でも、顧客満足度がスコア値を取ることになってしまったり、それを前期等の時系列や社内部門間で比較することを目的にしてしまう場面に会うことがある。本来は顧客に向き合って自己の課題解決をしていくことによって、顧客との関係性を向上させるべき取組みのはずである。このような事象は、担務するスタッフやそれらの情報から打ち手を講ずるべきマネジメント層が持つ認識によって、生じてしまう形式化ということができる。
  • ※7かつて不祥事を起こした企業で、そのようになる前に異議を提起したり、事後にボランタリーで適切にその解決を図ろうと粉身砕骨したりするスタッフや社員を傍らで支援をしたことがある。その際に痛感したことは、本来マネジメント層は未然に問題を防ぎ、身を挺して不祥事解決を実施すべきである。そのような動きができていない時に、彼らに諫言することが如何に大事かということであった。昨今話題になった企業の「チャレンジ」というイリーガルな取組みについても、それを諌めようとしたスタッフや他の社員もいたに違いないと筆者は考えている。
  • ※8特に大きな企業ではゼネラルスタッフが縦割りで業務細分化されてしまう結果、数値を整理収集し管理するグループ、マネジメント層からのリクエストに基づいてマーケットや競合を分析検討するグループなどと機能分断がされている場合がある。そのような場合は、計数管理だけを目的とする組織が併存するため、スタッフ部門が組織機能を遂行することが計数管理を加速させてしまう面があることにも留意が必要となる。
  • ※9以前触れたことがあるように、そのマネジメントの仕組みは営業担当のみでなく顧客や製品サービスを統括する機能にもノルマを負わせて組織的な営業を促進するものであり、また個々の案件と進捗を見える化して、顧客の購買意思決定の支援を行うと言うものであった。